相続した実家が、ある日「行政の手続」の対象になることがあります

ご相談のなかで、こういうお話をうかがうことがあります。

「市役所から封書が届きまして。実家のことで、と書いてあるのですが」――開けてみると、空き家の管理についての通知だった、というものです。

多くの方が驚かれます。「別に、壊れてはいないのですが」と。

「壊れていないから大丈夫」は、もう通用しません

2023年12月13日より前は、たしかに「倒壊のおそれがある」ほどの状態――特定空家等――にならなければ、本格的な措置は動きませんでした。
令和5年法律第50号による改正で、その手前に「管理不全空家等」という区分ができました。「そのまま放置すれば特定空家等になるおそれがある状態」であれば、指導・勧告の対象になります(空家法13条)。入口が、一段階前に移ったとお考えください。

相続した実家が空き家になる、典型的な流れ

私どもが見てまいったかぎり、多くのご家庭が、次のような道をたどられます。

  1. お母さまが施設に入られ、実家が空く――「いつか戻るかもしれない」ので、家財もそのままにしておく。
  2. お母さまが亡くなり、相続が起きる――兄弟のあいだで「どうする」という話は出るが、結論は出ない。
  3. とりあえず、誰も住まないまま数年が過ぎる――固定資産税は長男が立て替え、年に数回、風を通しに行く。
  4. 庭木が伸び、隣家から苦情が入る――「枝が越境している」「郵便受けがあふれている」。
  5. 市町村から通知が届く――ここで、はじめて事の重さに気づかれる。
[多くの場合、悪意も怠慢もありません]
私どもがお会いする方々は、決して面倒がって放置なさっているわけではありません。「思い出のある家を壊す決心がつかない」「兄弟で意見が割れている」「遺品の整理が終わっていない」――止まる理由は、たいてい、ごく人間的なものです。
ですから私どもは、「早く処分してください」とは申し上げません。ただ、「どういう制度が動いているかは、知っておいてください」とお伝えしています。知らないまま時間だけが過ぎると、選べる手が減ってしまうからです。

空家等対策の推進に関する特別措置法とは――平成26年法律第127号と、令和5年の改正

2つの法律番号を押さえます

空き家に関する基本の法律が、「空家等対策の推進に関する特別措置法」です。実務では「空家法」「空家特措法」などと呼ばれます。

区分法律番号施行
もとの法律平成26年法律第127号平成27年2月26日に施行され、特定空家等に対する措置に関する規定は平成27年5月26日から
改正法令和5年法律第50号令和5年(2023年)12月13日

令和5年改正で入った、3つの柱

  1. 「管理不全空家等」の新設(空家法13条)――特定空家等になる手前の段階で、市町村長が指導・勧告できるようになりました。
  2. 活用の後押し――空家等活用促進区域(空家法7条3項)を定め、区域内の空き家の活用を促す枠組みが設けられました。
  3. 担い手の拡充――市町村長が、空き家の管理・活用に取り組む法人を空家等管理活用支援法人として指定できることになりました(空家法23条1項)。
[「除却」だけの法律ではありません]
空家法というと、「危ない家を壊すための法律」という印象をお持ちの方が多いかもしれません。けれども令和5年改正は、活用を促す方向の手当ても含んでいます。
「壊すか、放っておくか」の二択ではない――そのことは、相続した実家の行き先を考えるうえで、知っておいていただきたい点です。

「空家等」とは何か――空家法2条1項と「常態」の判断

条文の定義

空家法2条1項は、「空家等」を、建築物またはこれに附属する工作物であって、居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの、およびその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む)と定義しています。国または地方公共団体が所有し、または管理するものは除かれます。

空家等(空家法2条1項)
居住その他の使用がなされていないことが
「常態」であるもの + その敷地
国・地方公共団体が所有し、または管理するものは除かれます

「常態」とは、どのくらいの期間か

ここで気になるのが、「どのくらい使っていなければ、空き家と判断されるのか」ということです。

国土交通省のガイドラインでは、「常態である」とは長期間にわたって使用されていない状態をいい、おおむね年間を通じて建築物等の使用実績がないことが、一つの判断基準とされています。

「年に1回帰っているから、空き家ではない」とは限りません

ガイドラインでは、判断にあたって、建築物等の用途、人の出入りの有無、電気・ガス・水道の使用状況やそれらが使用可能な状態か、登記記録、所有者等の住民票の内容、管理状況、所有者等が説明する利用実績などを、総合的・客観的に考慮することが望ましいとされています。
つまり、「年に一度でも立ち寄れば必ず空き家ではない」という機械的な線引きではありません。実際の判断は市町村が行いますので、気になる場合は、お住まいの市町村の担当課にお問い合わせください。

「特定空家等」への措置――助言・指導から行政代執行まで(空家法22条)

「特定空家等」の定義(空家法2条2項)

空家等のうち、次のいずれかに該当するものが、特定空家等とされています。

  1. そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  2. そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  3. 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  4. その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
[「空き家である」だけでは、特定空家等になりません]
誰も住んでいないというだけで、直ちに特定空家等になるわけではありません。上の①〜④のいずれかに該当する状態であることが必要です。
逆に申し上げれば、きちんと管理されている空き家は、特定空家等にはなりません。ここが、後ほどご説明する「管理」の意味につながります。

措置は、段階を追って進みます

特定空家等に対する措置の流れ(空家法22条) 助言・指導 22条1項 → 勧 告 22条2項 → 命 令 22条3項 → 行政代執行 22条9項 ここで住宅用地 特例が外れます 違反すると50万円 以下の過料(30条1項) 代執行に要した費用は、義務者から徴収されます 略式代執行(22条10項)・緊急代執行(22条11項)の規定もあります
いきなり取り壊されるわけではありませんが、段階は確実に進んでいきます

費用は、所有者に請求されます

行政代執行は「行政が無料で片づけてくれる制度」ではありません。市町村長が自ら必要な措置を行った場合、その費用は義務者から徴収されます。
解体費用は、建物の規模や立地によって大きく変わります。ご自身で業者を選んで進めるほうが、費用面でも、心情の面でも、納得のいく結果になりやすいと私どもは考えております。

2023年12月13日に新設された「管理不全空家等」――空家法13条

定義(空家法13条1項)

管理不全空家等とは、空家等が適切な管理が行われていないことにより、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認められる空家等をいうとされています。

管理不全空家等(空家法13条1項)
そのまま放置すれば
特定空家等になるおそれのある状態
令和5年法律第50号による新設。2023年12月13日から施行されています

措置は「指導」と「勧告」です

管理不全空家等については、市町村長が、管理指針に即した措置をとるよう指導することができ(空家法13条1項)、指導をしてもなお状態が改善しない場合には、勧告をすることができる(同条2項)とされています。

[特定空家等とは、措置の重さが違います]
管理不全空家等について、空家法13条には、特定空家等に対する22条3項のような「命令」や、22条9項の行政代執行に至る一連の規定は置かれていません。
もっとも、勧告を受けても状態が改善せず、特定空家等に該当する状態になれば、あらためて22条に基づく措置の対象になります。「命令がないから軽い」ということではなく、「特定空家等への入口」とお考えいただくのが正確です。

ここが、いちばん大切な変更点です

従来は、「特定空家等になるまでは、税制上の不利益はない」という理解でした。けれども今は、管理不全空家等として勧告を受けた場合にも、住宅用地特例の適用除外の対象となり得ます。
つまり、「倒壊しそうなほど傷んでいなくても、税負担が変わり得る」ということです。相続した実家をお持ちの方には、ぜひ知っておいていただきたい点です。

ご相談事例
※以下は、実際のご相談を参考に構成した架空の事例です。特定の個人・団体とは関係ありません。

「市から手紙が来て、はじめて事の大きさを知りました」――Kさまのご相談

Kさま(50代・女性)は、4年前にお母さまを亡くされ、ご実家を弟さまと2分の1ずつ相続なさった方です。ご実家は地方都市の住宅地にあり、Kさまご自身は、車で2時間ほどのところにお住まいでした。

ご相談の入口は、「市役所から、空き家についての通知が来ました」というものでした。庭木が道路にはみ出していること、雨どいが外れかかっていることが書かれていたそうです。

Kさまは、「そんなに傷んでいるつもりはなかったのですが」とおっしゃいました。実際、2か月に一度は通って、換気と草取りはなさっていたとのことでした。

私は、「まず、その通知が『指導』なのか『勧告』なのかを確かめましょう」と申し上げました。この二つでは、意味がまったく違うからです。

お手元の書面を確認していただくと、指導の段階でした。私は正直にほっとして、こうお伝えしました。「勧告に進むと、固定資産税の住宅用地特例が外れることがあります。いまのうちに手を打てば、そこには行きません」と。

Kさまは、しばらく黙っておられました。そして、「実は、弟と話ができていないんです」とおっしゃいました。売るか、残すか。ずっと結論が出ないまま、4年が過ぎていたのです。

――ここが、空き家問題のほんとうの難所です。制度の話ではなく、ご家族の話なのです。

そこで私は、「結論を出すのは、いったん先でも構いません」と申し上げました。「ただ、指導への対応だけは、いま切り離してお進めください」と。庭木の剪定と、雨どいの補修。この二つは、売るか残すかにかかわらず、必要なことだからです。

あわせて、空家等管理活用支援法人の制度や、市町村の空き家バンクなど、地域によって使える窓口があることをお伝えし、「まずお住まいの市町村の担当課にお問い合わせください」とご案内しました。

Kさまは、こうおっしゃって帰られました。「弟と決着をつけないと、何もできないと思い込んでいました」と。

――結論が出なくても、できることはあります。そして、手を入れ続けているあいだは、状態が悪くなりにくくなります。私どもが申し上げたいのは、その一点です。

勧告を受けると固定資産税はどうなるか――住宅用地特例の除外

住宅用地特例のしくみ

住宅の敷地には、固定資産税と都市計画税の課税標準を軽くする特例があります。これがあるおかげで、「建物を残しておいたほうが、税金が安い」という状況が生まれます。

区分固定資産税の課税標準都市計画税の課税標準
小規模住宅用地(住宅1戸あたり200㎡以下の部分)価格の6分の1価格の3分の1
一般住宅用地(小規模住宅用地以外の住宅用地)価格の3分の1価格の3分の2

勧告を受けると、この特例が外れます

地方税法349条の3の2第1項は、空家法13条2項の勧告を受けた管理不全空家等、および22条2項の勧告を受けた特定空家等の敷地の用に供されている土地を、同項が定める「住宅用地」から除くとしています。

ここは少し丁寧に見ておきます。一般住宅用地の3分の1を定めるのが同条1項、小規模住宅用地の6分の1を定めるのが同条2項です。もっとも、2項がいう「小規模住宅用地」も、1項が定義する「住宅用地」であることが前提です。したがって、勧告を受けて1項の「住宅用地」から外れると、6分の1・3分の1のいずれの特例も使えなくなります。

勧告 = 住宅用地特例の適用除外
管理不全空家等(13条2項)
特定空家等(22条2項)

いずれの勧告も、対象になり得ます
根拠は地方税法349条の3の2第1項(勧告を受けた敷地を「住宅用地」から除く規定)です

「固定資産税が6倍になる」は、正確ではありません

この話は、しばしば「勧告を受けると固定資産税が6倍」と説明されます。けれども、これは単純化された言い方です。
たしかに、小規模住宅用地の部分だけを取り出せば、課税標準が価格の6分の1から本来の水準に戻ることになります。けれども、実際の税額が必ず6倍になるわけではありません。理由は、次のとおりです。

  1. 固定資産税には負担調整措置があり、前年度の課税標準額との関係で、税額が段階的に上がる場合があります。
  2. 200㎡を超える部分は、もともと3分の1の特例ですので、そこを含めて「6倍」と数えることはできません。
  3. 評価額、地積、用途区分、免税点など、税額を左右する要素はほかにもあります。
  4. 都市計画税は、固定資産税とは別に計算されます。

正確には、「勧告により住宅用地特例が外れ、税負担が大きく増える」ということです。ご自身の土地でいくらになるかは、必ず市町村の資産税担当課、または税理士にご確認ください。詳しくは相続した不動産の固定資産税――納税義務者は「1月1日の所有者」、相続人代表者指定届と現所有者申告、住宅用地特例が外れる怖さを完全ガイドもご覧ください。

[過料について]
特定空家等に対する空家法22条3項の命令に違反した場合は、50万円以下の過料の対象とされています(空家法30条1項)。また、立入調査に関する報告をせず、または虚偽の報告をした場合などには、20万円以下の過料が定められています(同条2項)。
過料は、いきなり科されるものではありません。助言・指導、勧告、命令という段階を経たうえでの話です。途中でお手を打っていただければ、そこには至りません。

相続した実家を「そのまま」にしないための選択肢

まずは「管理する」――それだけで、多くは防げます

くり返しになりますが、管理不全空家等も特定空家等も、「適切な管理が行われていないこと」が出発点です。

逆に言えば、手を入れ続けている空き家は、これらに該当しにくいということです。

  1. 庭木・雑草の手入れ――近隣からの苦情で、もっとも多いのがここです。
  2. 屋根・雨どい・外壁の点検――落下や飛散は、保安上の危険に直結します。
  3. 換気と通水――家は、閉め切ると急速に傷みます。
  4. 郵便物の処理――あふれた郵便受けは、「管理されていない」と判断される材料になります。
  5. 火災保険の確認――空き家は、契約の扱いが変わることがあります。保険会社にご確認ください。
[遠方でご自身では通えない場合]
空家等管理活用支援法人(空家法23条1項)は、市町村長が指定する法人で、所有者からの委託を受けた空き家の管理、相談対応、活用希望者への情報提供などを担うものとされています。
民間の空き家管理サービスもありますし、市町村の空き家バンクが窓口になっている地域もあります。使える制度は地域によって異なりますので、まずはお住まいの市町村の担当課にお問い合わせください。

手放す・活かす――主な選択肢

  1. 売却する――相続した空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除(租税特別措置法35条3項)という特例があります。昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、譲渡対価が1億円以下であることなど、要件は細かく定められています。また、相続人が3人以上の場合の控除額の上限など、令和6年以後の譲渡についての改正もあります。適用の可否は必ず税理士と国税庁の最新情報でご確認ください。詳しくは実家・空き家を相続したらどうする、住む・貸す・売る・手放すの判断と3,000万円控除をご覧ください。
  2. 貸す――賃貸に出す、地域の交流拠点として使ってもらう、といった選択肢です。空家等活用促進区域(空家法7条3項)の中では、活用を後押しする枠組みが設けられています。
  3. 解体して更地にする――ただし、建物を取り壊すと住宅用地特例が外れます。「勧告を避けるために壊したら、結局税金が上がった」ということが起こり得ますので、その後の使い道とあわせてご判断ください。
  4. 土地を国に引き取ってもらう――相続土地国庫帰属制度という手もあります。建物があると対象になりませんし、要件と負担金があります。詳しくは相続土地国庫帰属制度とは、いらない土地を国に引き取ってもらう手続き・費用・対象を完全ガイドをご覧ください。

そのまえに、名義を整えてください

売るにも、貸すにも、壊すにも、「誰のものか」がはっきりしていなければ動けません。相続登記は令和6年4月1日から義務化されており、施行日前に開始した相続も対象です。
また、兄弟で共有のまま持ち続けると、将来さらに相続が重なって、権利者が増えていきます。共有のリスクは不動産の共有相続のリスクと解消方法とは、塩漬けを防ぐ遺産分割と共有物分割を完全ガイドを、登記の義務化は相続登記の義務化、3年以内の申請義務・10万円以下の過料・相続人申告登記の完全ガイドをご覧ください。

[隣の空き家・空き地で困っているとき]
ご自身の空き家ではなく、隣の放置された家や土地で困っておられる場合には、民法の所有者不明土地管理制度・管理不全土地管理制度という別の枠組みもあります。所有者不明土地管理制度・管理不全土地管理制度とは――2023年4月施行、隣の空き地・放置された隣家に使える民法264条の2以下を完全ガイドをご覧ください。
なお、家財の片づけでお困りの場合は遺品整理の進め方――始める時期と手順、業者に必要な許可、相続放棄の前に触ってはいけない物を完全ガイドもあわせてどうぞ。
― 私たちから一言 ―

「結論が出ていなくても、できることがあります」

空き家のご相談で、私どもがいちばん多くお聞きするのは、「兄弟で話がつかないんです」という一言です。

売るか、残すか。思い出のある家ですから、簡単に決められるものではありません。私どもも、「早く決めてください」とは申し上げません。

そのうえで、三つ、お伝えしたいことがあります。

ひとつめは、結論と管理を切り離していただきたいということです。庭木を切ること、雨どいを直すこと、郵便受けを空けること――これらは、売っても残しても必要な作業です。結論が出るまで何もしない、という選び方だけは、避けてください。状態が悪くなると、選べる手が減ってしまいます。

ふたつめは、書面の「段階」を確かめていただきたいということです。市町村から通知が来たとき、それが助言・指導なのか、勧告なのか、命令なのか。ここで意味がまったく違います。封を切らずに置いておかれる方が、意外なほど多いのです。怖いお気持ちは分かりますが、読まないことでよくなることは、ひとつもありません。

みっつめは、名義を先に整えていただきたいということです。売るにも貸すにも壊すにも、権利がはっきりしていなければ動けません。そして時間が経つほど、相続が重なって関係者が増えていきます。いま兄弟2人で決められることが、10年後には10人の話になっているかもしれません。

――私どもは不動産業者でも税理士でもございませんので、いくらで売れるか、税金がいくらになるかを申し上げることはできません。ですが、「その通知は指導ですか、勧告ですか」とおたずねし、次の一手を一緒に考えることはできます。お一人で抱えこまず、どうぞお声がけください。

一般社団法人相続なんでも相談センター 代表理事 宮野 宏樹

相続した空き家と空家法でよくある7つの落とし穴

最後に、実務でとくに多い誤解を7つ、整理いたします。

  1. 「倒壊しそうになるまでは、何も言われない」と思い込む 令和5年法律第50号による改正で、2023年12月13日から「管理不全空家等」(空家法13条1項)が新設されました。そのまま放置すれば特定空家等になるおそれのある状態であれば、指導・勧告の対象になります。入口は、一段階前に移っています。
  2. 「勧告を受けても、税金は変わらない」と考える 地方税法349条の3の2第1項により、空家法13条2項(管理不全空家等)または22条2項(特定空家等)の勧告を受けた敷地は、同項の「住宅用地」から除かれます。その結果、6分の1(同条2項)も3分の1(同条1項)も適用されません。特定空家等だけの話ではなくなっています。
  3. 「勧告を受けると固定資産税がちょうど6倍になる」と説明する これは単純化された言い方です。小規模住宅用地の課税標準は価格の6分の1ですが、負担調整措置、200㎡超の部分の扱い、評価額や免税点などにより、実際の税額が必ず6倍になるわけではありません。ご自身の土地の税額は、市町村の資産税担当課または税理士にご確認ください。
  4. 「たまに帰っているから空き家ではない」と考える 空家法2条1項の「空家等」は、居住その他の使用がなされていないことが常態であるものです。国土交通省のガイドラインでは、おおむね年間を通じて使用実績がないことが一つの判断基準とされつつ、電気・ガス・水道の使用状況、人の出入り、管理状況などを総合的・客観的に考慮することが望ましいとされています。回数だけで機械的に決まるものではありません。
  5. 市町村からの通知を、開封せずに置いておく 助言・指導(空家法22条1項)、勧告(同条2項)、命令(同条3項)では、意味がまったく違います。とくに勧告は、住宅用地特例が外れる分岐点です。命令に違反すると50万円以下の過料の対象とされています(同法30条1項)。まず、どの段階の書面かをご確認ください。
  6. 「行政が壊してくれるなら、そのほうが楽だ」と考える 行政代執行(空家法22条9項)に要した費用は、義務者から徴収されます。無料で片づけてもらえる制度ではありません。ご自身で業者を選んで進めるほうが、費用の面でも納得の面でも、よい結果になりやすいと考えております。
  7. 結論が出ないまま、名義も手入れも止めてしまう 売るか残すかが決まらなくても、管理はできます。そして相続登記は令和6年4月1日から義務化され、施行日前に開始した相続も対象です。共有のまま時間が経つと、相続が重なって関係者が増え、動かせなくなります。「決められないから何もしない」が、いちばん選択肢を狭めます。

この記事のまとめ

  • 空き家に関する基本の法律は「空家等対策の推進に関する特別措置法」(平成26年法律第127号)です。令和5年法律第50号による改正が、2023年(令和5年)12月13日から施行されています。
  • 「空家等」(空家法2条1項)とは、建築物等であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの、およびその敷地をいいます。国・地方公共団体が所有し、または管理するものは除かれます。
  • 国土交通省のガイドラインでは、おおむね年間を通じて使用実績がないことが「常態」の一つの判断基準とされ、電気・ガス・水道の使用状況、人の出入り、管理状況などを総合的・客観的に考慮することが望ましいとされています。
  • 「特定空家等」(空家法2条2項)は、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態、著しく衛生上有害となるおそれのある状態、著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあるものです。
  • 特定空家等への措置は、助言・指導(22条1項)→勧告(22条2項)→命令(22条3項)→行政代執行(22条9項)と段階を追って進みます。措置を命ぜられるべき者を過失なく確知できないときの略式代執行(同条10項)や、緊急代執行(同条11項)の規定も置かれています。
  • 命令に違反した場合は50万円以下の過料(空家法30条1項)、立入調査に関する報告をせず、または虚偽の報告をした場合などは20万円以下の過料(同条2項)の対象とされています。
  • 令和5年改正で新設された「管理不全空家等」(空家法13条1項)は、適切な管理が行われていないことにより、そのまま放置すれば特定空家等になるおそれのある状態のものです。指導(13条1項)と勧告(13条2項)の対象になります。
  • 地方税法349条の3の2第1項により、空家法13条2項または22条2項の勧告を受けた敷地は、同項が定める「住宅用地」から除かれます。小規模住宅用地の6分の1を定める同条2項も「住宅用地」であることが前提ですので、6分の1・3分の1のいずれの特例も適用されなくなります。
  • 住宅用地特例は、固定資産税で小規模住宅用地(200㎡以下の部分)が課税標準の6分の1、一般住宅用地が3分の1、都市計画税でそれぞれ3分の1・3分の2です。
  • 「勧告で固定資産税がちょうど6倍」という説明は正確ではありません。負担調整措置、200㎡超の部分の扱い、評価額や免税点などにより、実際の税額は個別に計算されます。
  • 行政代執行に要した費用は、義務者から徴収されます。「無料で片づけてもらえる制度」ではありません。
  • 令和5年改正では、空家等活用促進区域(空家法7条3項)や空家等管理活用支援法人(空家法23条1項)など、活用と管理を後押しする枠組みも設けられました。
  • 建物を取り壊すと住宅用地特例が外れます。「勧告を避けるために解体したら、かえって税負担が増えた」ということが起こり得ますので、その後の使い道とあわせてご判断ください。
  • 売る・貸す・壊すのいずれにも、名義が整っていることが前提です。相続登記は令和6年4月1日から義務化されており、施行日前に開始した相続も対象です。税額や特例の適用は必ず市町村・税理士に、登記は司法書士にご確認ください。

参考文献(一次情報)

※本記事は一般的な解説を目的としたものであり、個別の事情により取り扱いが異なる場合がございます。本記事は法律上または税務上の助言を提供するものではなく、特定の建物が空家等・管理不全空家等・特定空家等に該当するかどうか、勧告や命令がなされるかどうか、固定資産税の税額がいくらになるかを保証するものでもありません。空き家に関する判断は、建物の状態、敷地の状況、周辺への影響、市町村の空家等対策計画や運用、地方税の賦課の実務など、個別の事実関係によって結論が変わり得る事項です。とくに、住宅用地特例の適用の有無と税額の計算、相続した空き家の譲渡所得の特例(租税特別措置法35条3項)の要件、解体の可否と時期の判断は、誤りやすい領域です。本文中の整理は、制度の骨格をご理解いただくために単純化したものであり、実際の結論を示すものではありません。記載した法令名・条項・施行日・数値は執筆時点で一次情報により確認したものですが、法令・通達・税制は改正される可能性があります。本記事の内容は2026年9月時点の情報に基づいていますが、実際にご検討される際は、必ずe-Gov法令検索、国土交通省、国税庁などの一次情報と、お住まいの市町村の担当課で最新の内容をご確認のうえ、税額や特例の適用については必ず税理士に、登記については必ず司法書士に、法的な紛争については必ず弁護士にご確認ください。本記事の情報を利用したことによる損害等について、当センターは責任を負いかねます。

「実家をどうするか、決められないまま何年も経ちました」――そのご相談からで結構です

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