高齢者等終身サポート事業とは――身元保証・生活支援・死後事務を引き受けるサービス

高齢者等終身サポート事業とは、政府の資料では、本人との契約に基づき、身元保証等サービスおよび死後事務サービスを事業として継続的に提供している事業者による事業、として整理されています。

提供される内容は、おおむね次の三つの柱に分かれます。

柱主な内容いつ必要になるか
身元保証等
サービス
入院・入所のときの身元保証・身元引受、緊急連絡先の引受け、医療・介護の関係者との連絡調整、退院・退所のときの対応もしものとき
日常生活
支援
買い物、通院の付き添い、行政手続の支援、金銭の管理の支援、医療・介護サービスの利用に関する連絡と調整日々の暮らしの中で
死後事務
サービス
葬儀・火葬・納骨の手配、家財の整理、住まいの明渡し、未払いの費用の精算、行政手続、ご親族・関係者へのご連絡お亡くなりになったあと

「一つの契約で全部」ではなく、「複数の契約の束」であることがほとんどです

パンフレットには「終身サポートプラン」などと一つの名前で書かれていても、実際には、身元保証の契約、財産管理の委任契約、任意後見契約、死後事務委任契約などが束ねられていることが少なくありません。

ですから、「どの部分が、どの契約で、いつから効力を持つのか」を確かめることが、とても大切になります。契約書を一式お受け取りになり、ご家族や専門家と一緒に読む時間を必ずお取りください。

どなたが利用なさるのか

ご相談にお越しになる方の多くは、次のようなご事情をお持ちです。

[ご相談でよくうかがうお気持ち]
「甥や姪に、頼めないことはありません。けれども、あの子たちにも生活があります。入院のたびに呼び出して、亡くなったあとの片づけまでさせるのは、どうしても気が進まないのです」
――このお気持ちから、このサービスをお考えになる方が、たいへん多くいらっしゃいます。「頼れる人がいない」からだけではなく、「頼みたくない」というお気持ちからのご選択も、同じくらい多いのです。
おひとりさまの相続全般については、当センターの記事「おひとりさま・子のいない人の相続とは」もあわせてご覧ください。

「身元保証人がいないこと」だけを理由に入院・入所を断ることはできません

このサービスをお考えになる前に、ぜひ知っていただきたいことがあります。

厚生労働省は、身元保証人等がいないことのみを理由とする入院の拒否を認めていません

厚生労働省は、2018年(平成30年)4月27日の通知により、身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて、考え方を示しています。

その根拠とされているのが、医師法19条1項です。同項は、診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならないと定めています(応招義務)。

この通知において厚生労働省は、「正当な事由」は、医師の不在や病気など、事実上診療が不可能な場合に限られるとし、入院による加療が必要であるにもかかわらず、身元保証人等がいないことのみを理由として入院を拒否することは、医師法19条1項に抵触する旨を示しています。

なお、応招義務そのものの解釈については、その後、2019年(令和元年)12月25日付の厚生労働省医政局長通知「応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について」により、現在の医療提供体制に即した整理が示されています。そこでは、診療の求めに応じるべきかどうかを、病状の深刻度、診療時間・勤務時間の内外、患者と医療機関・医師との信頼関係、医療機関の専門性や診療能力、他の医療機関による対応の可能性などを踏まえて判断する、という考え方が示されました。

もっとも、身元保証人等がいないことのみを理由とする入院の拒否が認められないという考え方そのものは、変わっておりません。個別の場面での取扱いについては、医療機関のご担当者や、お住まいの地域の相談窓口にご確認ください。

介護保険施設についても、厚生労働省は、身元保証人等がいないことのみを理由として入所を拒むことのないよう求めています。

また、厚生労働省は2019年(令和元年)5月31日に、「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」を公表しています。身寄りのない方の入院や、医療に関する意思決定の支援について、関係者がどう対応すべきかを整理したものです。

身元保証人がいるかどうか と
医療・介護サービスを提供できるかどうか
――この二つは、別の問題です
厚生労働省の通知・ガイドラインが示している基本的な考え方です

それでも、実際には求められることがあります

正直に申し上げます。制度の考え方と、現場で起きていることには、まだ隔たりがあります。

医療機関や施設が身元保証人を求める背景には、医療費・利用料の支払い、緊急時の連絡先、退院後の受け入れ先の確保、ご本人の意思確認が難しいときの相談相手、お亡くなりになったときのご遺体やご遺品の引取りといった、現実的な事情があります。

[私どもからのご提案]
「身元保証人がいないことだけを理由に断ることはできないはずです」と主張して押し通す――これは、あまりおすすめできません。そのあと長くお世話になる場所です。
むしろ有効なのは、先方が心配していらっしゃることを、一つずつ具体的に解消してさしあげることです。費用の支払いはどうするか、緊急の連絡先は誰か、意思確認が難しくなったときはどうするか、退院後はどこへ行くか。これらに答えを用意できていれば、保証人という形にこだわらずに受け入れてくださる医療機関・施設も、確実に増えてきています。
個別のご事情に応じた対応は、地域包括支援センター、市区町村の福祉の窓口、担当のケアマネジャーにもご相談ください。

2024年6月の「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」――国が示した運営の考え方

2024年(令和6年)6月、内閣官房を中心とする関係省庁により、「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」が策定されました。

これは「法律」ではなく、「ガイドライン」です

ここは、正確に理解しておいていただきたいところです。このガイドラインは、行政が示した指針であって、事業者を直接に規制する法律ではありません。

つまり、許認可制度があるわけでも、登録制度があるわけでもありません。ガイドラインに沿っていない事業者があったとしても、それだけで直ちに法律上の制裁が科されるという仕組みにはなっていません。

ですから、「国のガイドラインがあるから安心」ではなく、「ガイドラインを物差しにして、ご自分で事業者を確かめる」という向き合い方が必要になります。制度の状況は今後変わり得ますので、最新の内容は必ず内閣官房・消費者庁・厚生労働省のホームページでご確認ください。

ガイドラインが示している主な事項

政府の資料からは、おおむね次のような考え方が示されていると読み取れます。

  1. 契約の内容を、書面で明らかにすること 契約書・重要事項説明書等を書面で交付し、提供するサービスの内容、料金、預託金、解約と返金の条件を説明すること。口頭の説明だけで済ませないこと。
  2. サービスの対価と預託金を、はっきり分けること 毎月の利用料などの「サービスの対価」と、将来の葬儀費用などに備えて預かる「預託金」は、性質がまったく違います。この二つを混ぜないことが、基本になります。
  3. 預託金を、事業者自身の財産と区分して管理すること 利用者ごとの金額と使いみちを明らかにし、事業者の運転資金などと混同しないこと。
  4. 記録し、報告できるようにすること 預託金の出入りを記録し、ご本人または関係する方が確認できる状態にしておくこと。
  5. 契約が終わるときの返還・引継ぎを定めておくこと 契約が終了したとき、事業者が交代するとき、そして事業者が事業を続けられなくなったときに備えて、返還・保全・引継ぎの方法を定めておくこと。
[正確にお伝えしておきます]
ガイドラインは、預託金について「必ず信託を利用しなければならない」と法律上義務づけるものではありません。求められているのは、分別管理、使いみちの明確化、記録、報告、返還と引継ぎの確保です。
ですから、「信託口座でなければ危ない」と決めつけるのも、「信託と言っているから安心」と決めつけるのも、どちらも正確ではありません。どのような方法で、誰が、どう確認できる形で管理されているか――そこを具体的にお尋ねになることが大切です。

いちばん大事なのはお金――預託金の分別管理と使途の明確化

このサービスで、過去にいちばん大きな問題が起きたのは、お金の管理でした。

2016年の破綻と、2017年の建議

2016年(平成28年)、身元保証・日常生活支援・死後事務を全国で手がけていた公益財団法人日本ライフ協会が破綻しました。利用者の方々がお預けになっていた預託金が、本来の使いみち以外に流用されていたことが問題となった事案です。

これを受けて、2017年(平成29年)1月31日、消費者委員会が建議を行いました。建議は、内閣府特命担当大臣、厚生労働大臣および国土交通大臣に対して発出されたもので、主として次の点を指摘しています。

この建議から2024年のガイドライン策定まで、7年以上が経っています。その間も、事業者は増え続けてきました。だからこそ、利用なさるご本人の目で確かめることが、いまも重要なのです。

お金の三つの性質を、分けて考える

お金の性質何のためのお金か確かめていただきたいこと
入会金・契約時費用契約時に支払う費用。返ってこないことが多いお金です。途中で解約したときに、いくら返ってくるのか。返金の条件が契約書に書かれているか。
月額利用料見守りや日常の支援など、継続して受けるサービスの対価。どこまでが月額に含まれ、どこからが実費・別料金なのか。「回数制限」の有無。
預託金将来の葬儀・納骨・家財整理・未払費用の精算などに充てるために、あらかじめ預けるお金。どこに、どのように、誰の名義で管理されているか。残高をいつでも確認できるか。事業者が倒れたときにどうなるか。

お尋ねいただきたい、たった一つの質問

「もし御社が事業を続けられなくなったら、私が預けたお金はどうなりますか」

この質問に対して、具体的に、書面を示しながら説明してくださる事業者かどうか。ここが、いちばんの見分けどころだと、私どもは考えております。

「そんなことは起こりません」「うちは大丈夫です」――そうしたお答えしか返ってこない場合は、いったん持ち帰って、ご家族や専門家にご相談なさることを強くおすすめいたします。

成年後見・任意後見・死後事務委任契約との違いと組み合わせ方

ご相談でよく混乱が生じるのが、「後見人がいれば、身元保証サービスは要らないのではないか」というご質問です。

結論から申し上げますと、守備範囲が違います。そして、組み合わせて使うことが多い制度です。

制度・契約いつから働くか主にできること主にできない・想定されていないこと
財産管理委任契約
見守り契約
判断能力があるうちから(契約したときから)財産の管理、各種手続の代理、定期的な連絡と見守り判断能力が低下したあとの包括的な保護
任意後見契約判断能力が低下し、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときあらかじめ決めておいた範囲での財産管理・身上保護お亡くなりになったあとの事務(後見は死亡により終了するのが原則)
法定後見
(後見・保佐・補助)
判断能力が低下したあと、家庭裁判所の審判により財産管理・身上保護同上。身元保証人になることも、一般に想定されていません
死後事務委任契約お亡くなりになったあと葬儀・納骨の手配、行政手続、家財の整理、未払費用の精算ご存命中の支援、財産の承継(それは遺言の役割です)
身元保証
(終身サポート)
契約したときから、お亡くなりになったあとまで入院・入所時の身元保証、緊急連絡先、日常生活支援。上記の契約と組み合わせて提供されることが多い法律上の後見人としての権限(別に契約・審判が必要です)

後見人は、一般に「身元保証人」にはなりません

ここは、たいへん誤解の多いところです。成年後見人・任意後見人の職務は、財産管理と身上保護であり、ご本人の債務を保証することは、一般に職務として想定されていません。

ですから、「後見人を付けたから、入院のときの身元保証も大丈夫」とはならないのが通常です。

もっとも、だからといって入院できないわけではありません。後見人がいらっしゃれば、費用の支払いや医療機関との連絡調整については、体制が整っていると説明できます。個別の取扱いは、後見人・医療機関・施設にご確認ください。

それぞれの制度の詳しい内容は、当センターの記事もあわせてご覧ください。成年後見制度とは、財産管理委任契約・見守り契約とは、死後事務委任契約とは、尊厳死宣言公正証書とリビング・ウイル。

[忘れられがちですが、いちばん大切なこと]
身元保証サービスの契約をしても、財産の行き先は決まりません。死後事務委任契約は、あくまで「事務」を託すものです。財産を誰に渡すかは、遺言でなければ決められません。
おひとりさまの場合、遺言がなければ、相続人がいらっしゃらないときは最終的に国庫に帰属することになり得ます。お世話になった方やご友人、支援したい団体にお遺しになりたいのであれば、遺言が不可欠です。必ず公証役場または弁護士・司法書士にご相談ください。

費用はどのくらいか――入会金・月額・預託金の三層構造

費用は、事業者によって、またサービスの範囲によって、大きく異なります。ここで具体的な金額を申し上げることはいたしません。相場として一律に示せるものではなく、実際にお見積りを取っていただくほかないからです。

ただし、費用の「構造」は共通しています。次の三層に分けて、必ず確認なさってください。

第1層入会金・契約時費用
(原則、返ってこない)
第2層月額利用料
(続く限りかかる)
第3層預託金
(将来のために預ける)

見積書で必ず確かめていただきたい、三つのこと

一つめ。「月額に含まれるもの」と「実費・別料金になるもの」の線引き。通院の付き添いは月何回まで含まれるのか。夜間や休日の対応は別料金か。

二つめ。長生きなさった場合の総額。月額が続く以上、10年、20年と続けば総額は大きく変わります。「あと何年お元気でいらっしゃるか」で総額がまったく違ってくることを、必ずご確認ください。

三つめ。途中で解約したときに、いくら返ってくるのか。入会金は返らないことが多く、預託金は残っている分が返るのが通常ですが、解約手数料の定めがあることもあります。契約書のどこにその定めがあるかを、必ず指し示していただいてください。

事業者を選ぶときに確かめていただきたい10のこと

私どもがご相談を受けるときに、実際にお伝えしている確認事項です。できれば、そのまま印刷してお持ちになり、一つずつお尋ねください。

  1. 契約書と重要事項説明書を、契約前に一式もらえますか 持ち帰って読む時間をくださるか。その場での契約を求める事業者は、それだけで注意が必要です。
  2. どの契約が、いくつ束ねられていますか 身元保証、財産管理委任、任意後見、死後事務委任。それぞれ別の契約書になっているか。いつから効力を持つのか。
  3. 預託金は、どこに、どのように管理されていますか 事業者の財産と分けて管理されているか。名義はどうなっているか。
  4. 預けたお金の残高を、いつ、どうやって確認できますか 定期的な報告があるか。請求すれば見せてもらえるか。
  5. 御社が事業を続けられなくなったら、私のお金と契約はどうなりますか 返還・保全・引継ぎの仕組みが、書面で定められているか。
  6. 月額に含まれるものと、別料金になるものを教えてください 回数の制限、時間帯による割増しの有無。
  7. 途中で解約したら、いくら返ってきますか 契約書のどの条項に書かれているか、指し示していただく。
  8. これまでに、どのくらいの実績がありますか 設立からの年数、現在の契約者数、実際にお看取りまで対応した件数。
  9. 私の希望を、どうやって記録し、引き継いでくださいますか 延命治療についてのお考え、葬儀のかたち、納骨先、連絡してほしい方。担当者が替わっても引き継がれる形になっているか。
  10. 遺言について、どうお考えですか 「遺言も必要です」と正直に言ってくださる事業者か。財産の行き先は、このサービスでは決まりません。ここを曖昧になさる事業者は、慎重にご検討ください。
[ご家族がいらっしゃる場合]
遠方であっても、ご親族がいらっしゃるなら、契約なさる前に、必ずお知らせください。お亡くなりになったあと、ご遺骨や遺品の引取り、預託金の精算をめぐって、事業者とご親族の間で行き違いが生じることがあります。
「知らなかった」がいちばんのもめごとのもとです。一言お伝えになっておくだけで、後々がずいぶん違います。
ご相談事例
※以下は、実際のご相談を参考に構成した架空の事例です。特定の個人・団体とは関係ありません。

「保証人の欄が、どうしても埋められません」――Tさまのご相談

Tさま(70代・女性)は、3年前にご主人を亡くされ、おひとりでお暮らしです。お子さまはいらっしゃいません。ご相談にお越しになったのは、白内障の手術で入院なさることになったときでした。

ご相談の入口は、「入院の書類に身元保証人の欄があるのですが、書ける人がおりません。どうしたらよいのでしょうか」というお話でした。

私はまず、「病院の方には、いらっしゃらないとお伝えになりましたか」とお尋ねしました。Tさまは、「言いにくくて、まだ言えておりません」とおっしゃいました。

私は、「まず、正直にお伝えになってください」と申し上げました。「厚生労働省は、身元保証人等がいないことのみを理由に入院を拒否することは認められない、という考え方を示しております。医師法19条1項の応招義務に照らして、という理由です。ですから、いらっしゃらないと伝えたから入院できなくなる、ということには、本来ならないのです」と。

Tさまは、少しほっとしたご様子でした。そのうえで、「ただ、病院が心配していらっしゃることに、こちらから先にお答えするのがよいと思います」と申し上げました。「費用のお支払い、緊急のご連絡先、退院後にどちらへお帰りになるか。この三つをご自分から先にお話しになると、話がずいぶん進みやすくなります」と。

実際、Tさまは病院にご相談なさり、無事に入院・手術を終えられました。

後日、改めてお越しになったTさまは、「今回は何とかなりましたが、この先もっと大きな病気をしたら、と思うと不安です。身元保証のサービスというものを、広告で見たのですが」とおっしゃいました。

私は、「検討なさる価値は、じゅうぶんにあると思います」と申し上げたうえで、「ただ、確かめていただきたいことがございます」と続けました。

私は、「いちばん大事なのは、お預けになるお金がどう管理されるかです」とご説明しました。「2024年6月に、国のガイドラインができました。預託金を事業者ご自身のお金と分けて管理すること、使いみちをはっきりさせること、記録して報告できるようにすること、事業が続けられなくなったときの返還や引継ぎを決めておくこと。こうした考え方が示されています。ですから、『もし御社が続けられなくなったら、私のお金はどうなりますか』と、正面からお尋ねになってください」と。

Tさまは、「そんなことを聞いて、失礼になりませんでしょうか」とおっしゃいました。

私は、「まっとうな事業者であれば、いちばん聞いてほしい質問です」とお答えしました。「きちんと備えていらっしゃるところほど、丁寧に、書面を示しながら説明してくださいます」と。

最後に、私はもう一つ申し上げました。「そして、このご契約をなさっても、財産の行き先は決まりません。Tさまがお世話になった方や、お気持ちのある団体にお遺しになりたいのでしたら、遺言が必要です。そちらは、別途、公証役場でご準備なさってください」と。

Tさまは、深くうなずかれました。「二つ、やることが分かりました」とおっしゃって、お帰りになりました。

― 私たちから一言 ―

「頼れる人がいない」不安に、値段が付く時代だからこそ

身元保証サービスのご相談をお受けするとき、私どもがいつも心に置いていることがあります。それは、この分野は、不安がそのまま商品になりやすいということです。

「おひとりさまは大変ですよ」「保証人がいないと入院もできませんよ」――そう言われれば、どなたでも不安になります。そして不安なときほど、その場で決めてしまいたくなる。これは、人としてごく自然なことです。

だからこそ、申し上げたいのです。どうか、その場でご契約なさらないでください。

まっとうな事業者であれば、「持ち帰って、ご家族やご相談先とよくご検討ください」と必ず言ってくださいます。その一言が言えるかどうかが、私どもの見る、いちばん大きな分かれ目です。

そして、もう一つ。まず、公的なところに相談してみてください。お住まいの地域包括支援センター、市区町村の福祉の窓口、社会福祉協議会。日常生活自立支援事業など、公的な仕組みで足りる部分もございます。そこで足りない部分を、民間のサービスで補う。この順序でお考えになると、必要以上のご契約を避けられます。

最後に、いちばん大事なことを申し上げます。このサービスは、財産の行き先を決めるものではありません。身元保証も、死後事務委任も、「してもらうこと」を決める契約です。「誰に遺すか」は、遺言でなければ決められません。

おひとりさまの終活は、「生きているあいだの支え」と「亡くなったあとの事務」と「財産の行き先」の三つを、それぞれ別に用意して、初めて完成いたします。どれか一つでも欠けていると、残りの二つも十分に働きません。

「何から手をつけたらよいか分かりません」――そのお電話一本からで、けっこうです。ご事情をうかがい、いま本当に必要なものから順に、ご一緒に整えてまいります。

一般社団法人相続なんでも相談センター 代表理事 宮野 宏樹

身元保証サービスでよくある7つの落とし穴

  1. 「保証人がいないと入院できない」と思い込み、慌てて契約してしまう 厚生労働省は2018年(平成30年)4月27日の通知で、医師法19条1項の応招義務に照らし、身元保証人等がいないことのみを理由として入院を拒否することは認められない旨を示しています。介護保険施設についても同様の考え方が示されています。まずは医療機関・施設に正直にご事情をお話しになり、費用の支払い・緊急連絡先・退院後の行き先について具体的にご説明なさってください。そのうえで、なお必要かどうかをご検討ください。
  2. 「国のガイドラインがあるから安心」と考える 2024年(令和6年)6月に策定された「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」は、行政が示した指針であって、事業者を直接規制する法律ではありません。許認可や登録の制度があるわけでもありません。ガイドラインは「安心の保証」ではなく、「事業者を確かめるための物差し」としてお使いください。制度の状況は変わり得ますので、最新の内容は内閣官房・消費者庁・厚生労働省のホームページでご確認ください。
  3. 「サービスの対価」と「預託金」を分けずに考える 毎月の利用料と、将来の葬儀費用などのためにお預けになる預託金は、まったく性質の違うお金です。ガイドラインは、預託金を事業者の財産と区分して管理し、使いみちを明らかにし、記録・報告できるようにすることを求める考え方を示しています。「いま、いくら預かっていて、何に使う予定か」を書面で確認できるかをお確かめください。
  4. 「事業者が倒れたら」を聞かないまま契約する 2016年(平成28年)には、公益財団法人日本ライフ協会が破綻し、預託金の問題が明らかになりました。これを受けて2017年(平成29年)1月31日に消費者委員会が建議を行っています。「事業を続けられなくなったとき、預けたお金と契約はどうなりますか」――この質問への答えが書面で用意されているかどうかが、いちばんの見分けどころです。
  5. 「後見人がいるから身元保証も大丈夫」と考える 成年後見人・任意後見人の職務は財産管理と身上保護であり、ご本人の債務を保証することは一般に職務として想定されていません。また、後見は原則としてご本人の死亡により終了しますので、お亡くなりになったあとの事務は、別に死後事務委任契約などで備えておく必要があります。個別の取扱いは、後見人・医療機関・施設にご確認ください。
  6. 遺言を作らないまま、これで終活が済んだと思ってしまう 身元保証も死後事務委任も、「してもらうこと」を決める契約であって、財産の行き先を決めるものではありません。おひとりさまの場合、遺言がなければ、相続人がいらっしゃらないときは最終的に国庫に帰属することになり得ます。お世話になった方やご友人、支援したい団体にお遺しになりたいのであれば、遺言が不可欠です。必ず公証役場または弁護士・司法書士にご相談ください。
  7. ご親族に一言も伝えないまま契約する 遠方であっても、疎遠であっても、ご親族がいらっしゃるなら、契約なさったことをお伝えになっておいてください。お亡くなりになったあと、ご遺骨・遺品の引取り、預託金の精算をめぐって、事業者とご親族の間で行き違いが生じることがあります。「知らなかった」が、いちばんのもめごとのもとです。

この記事のまとめ

  • 高齢者等終身サポート事業(身元保証サービス)は、政府の資料において、本人との契約に基づき、身元保証等サービスおよび死後事務サービスを事業として継続的に提供する事業として整理されています。内容は身元保証等・日常生活支援・死後事務の三つの柱に分かれます。
  • パンフレット上は一つのプランに見えても、実際には身元保証契約・財産管理委任契約・任意後見契約・死後事務委任契約などが束ねられていることが多く、どの部分がどの契約で、いつから効力を持つのかの確認が欠かせません。
  • 厚生労働省は2018年(平成30年)4月27日の通知で、医師法19条1項の応招義務に照らし、身元保証人等がいないことのみを理由として医療機関が入院を拒否することは認められない旨を示しています。介護保険施設についても、同様の考え方が示されています。
  • 厚生労働省は2019年(令和元年)5月31日に「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」も公表しています。
  • 応招義務そのものの解釈については、2019年(令和元年)12月25日付の厚生労働省医政局長通知により、病状の深刻度、診療時間・勤務時間の内外、患者と医療機関・医師との信頼関係、医療機関の専門性や診療能力、他の医療機関による対応の可能性などを踏まえて判断するという整理が示されています。身元保証人等がいないことのみを理由とする入院の拒否が認められないという考え方自体は、変わっていません。
  • 2024年(令和6年)6月、内閣官房を中心とする関係省庁により「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」が策定されました。これは行政の指針であって、事業者を直接規制する法律ではなく、許認可・登録の制度も設けられていません。
  • ガイドラインが示す主な考え方は、契約書・重要事項説明書の書面交付と説明、サービスの対価と預託金の区分、預託金の分別管理と使途の明確化、記録と報告、契約終了時・事業継続困難時の返還・保全・引継ぎです。
  • ガイドラインは、預託金について特定の信託制度の利用を法律上義務づけるものではありません。求められているのは分別管理・使途の明確化・記録・報告・返還と引継ぎの確保です。
  • 背景には、2016年(平成28年)の公益財団法人日本ライフ協会の破綻と、2017年(平成29年)1月31日の消費者委員会の建議があります。
  • 費用は入会金・契約時費用/月額利用料/預託金の三層で考えます。月額に含まれる範囲、長期にわたった場合の総額、途中解約時の返金条件を、契約前に必ずご確認ください。
  • 成年後見人・任意後見人は、一般に身元保証人になることが職務として想定されていません。また後見は原則としてご本人の死亡により終了するため、死後の事務は別に備える必要があります。
  • このサービスでは、財産の行き先は決まりません。お世話になった方や団体にお遺しになりたい場合、遺言が不可欠です。おひとりさまの終活は、生きているあいだの支え・亡くなったあとの事務・財産の行き先の三つを、それぞれ別に用意して初めて整います。
  • まずは地域包括支援センター、市区町村の福祉の窓口、社会福祉協議会など公的な相談先をお訪ねください。公的な仕組みで足りる部分を確かめたうえで、足りない部分を民間のサービスで補うという順序が、必要以上のご契約を避ける近道です。
  • 契約や法律関係については必ず弁護士に、後見・遺言・登記については必ず弁護士または司法書士に、課税関係については必ず税理士にご確認ください。制度の状況は変わり得ますので、最新の内容は内閣官房・消費者庁・厚生労働省のホームページでご確認ください。

参考文献(一次情報)

※本記事は一般的な解説を目的としたものであり、個別の事情により取り扱いが異なる場合がございます。本記事は法律上または税務上の助言を提供するものではなく、特定の事業者・サービスを推奨または保証するものではありません。また、特定の医療機関・介護施設が身元保証人なしで入院・入所を受け入れることや、お預けになった預託金が確実に返還されることを保証するものでもありません。どのサービスや制度がふさわしいか、契約の内容が適切か、預託金の管理方法が十分かは、ご本人の健康状態・判断能力・ご家族の状況・財産の内容・お住まいの地域の資源など、個別の事実関係によって結論が変わり得る事項です。とくに、契約を解除できるか、支払った費用が返還されるかは、契約書の定めと個別の事情によって大きく異なります。本文中の説明は、制度の骨格をご理解いただくために単純化したものであり、要件のすべてを網羅したものではありません。高齢者等終身サポート事業者ガイドラインは行政の指針であって法律ではなく、事業者に対する許認可・登録の制度は設けられていません。記載した法令名・条項・通知の日付・ガイドラインの名称等は執筆時点で確認したものですが、法令・通知・ガイドライン・実務の取り扱いは改正等により変更される可能性があります。本記事の内容は2026年9月時点の情報に基づいていますが、実際にご検討される際は、必ずe-Gov法令検索、内閣官房、厚生労働省、消費者庁、お住まいの市区町村・地域包括支援センターなどで最新の内容をご確認のうえ、契約や法律関係については必ず弁護士に、後見・遺言・登記については必ず弁護士または司法書士に、課税関係については必ず税理士にご確認ください。本記事の情報を利用したことによる損害等について、当センターは責任を負いかねます。

「身元保証人になってくれる人がいません」――そのご相談からで結構です

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契約書をお持ちいただければ、確認すべき箇所をご一緒に見てまいります。必要に応じて、弁護士・司法書士・税理士におつなぎいたします。