生活保護を受けていても相続人になれます――相続権は制限されません

まず、いちばん多い誤解から解いておきます。「生活保護を受けている人は相続できない」「相続すると生活保護が打ち切られるから、放棄するしかない」――どちらも正確ではありません。

誰が相続人になるかは、民法が決めています。配偶者は常に相続人となり、子・直系尊属・兄弟姉妹が順番に相続人になります。民法には、生活保護を受けていることを理由に相続権を制限する規定はありません。生活保護を受けているご家族も、ほかの相続人とまったく同じ立場で遺産分割協議に加わります。

よくある思い込み実際のところ
生活保護を受けていると相続できない相続できます。相続権は民法で決まり、生活保護による制限はありません
相続したら、すぐ生活保護が打ち切られる相続財産は「利用し得る資産」として扱われ、その額や内容に応じて、返還・保護の停止・廃止などが検討されます(個別の判断です)
黙っていれば分からない61条の届出義務があります。届け出ずに保護を受け続けると、78条の徴収や85条の罰則が問題になり得ます
相続放棄すれば何も問題にならない相続放棄そのものは可能ですが、放棄の経緯について福祉事務所から説明を求められることがあります

つまり、問題は「相続できるかどうか」ではなく、「相続した財産を、生活保護のルールのなかでどう扱うか」です。以下、生活保護法の条文にそって順に見ていきます。

[この記事で扱う「福祉事務所」について]
生活保護の決定・実施を担うのは、法律上「保護の実施機関」です。実際の窓口は、お住まいの市区の福祉事務所(町村部では都道府県の福祉事務所など)になります。担当のケースワーカーがいる場合は、その方が最初の相談先です。

相続財産は「利用し得る資産」――生活保護法4条1項の補足性の原則

生活保護の考え方の土台にあるのが、4条の「保護の補足性」です。条文は次のとおりです。

保護は、生活に困窮する者が、
その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、
その最低限度の生活の維持のために
活用することを要件として行われる。
生活保護法4条1項

生活保護は、ほかに使えるものをすべて使っても、なお最低限度の生活に足りない部分を補う制度です。相続によって預貯金や不動産を取得すれば、それは「利用し得る資産」になります。まずはそれを生活のために活用することが求められる――これが基本の考え方です。

4条2項――扶養と他の法律による扶助が優先します

同じ4条の2項は、民法に定める扶養義務者の扶養や他の法律に定める扶助が、生活保護法による保護に優先して行われると定めています。そして3項は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではないとしています。

相続の場面で大切なのは、「相続財産が手元に入るまでのあいだも、保護は続くのが通常」という点です。遺産分割がまとまるまで何か月もかかることは珍しくありません。相続財産がすぐには生活に使えないあいだは、通常、保護を続けたうえで、あとから精算する扱いになります(預金をすぐに払い戻せる場合など、個別の判断があります)。その精算が、次に見る63条の返還です。

相続財産の種類によって、扱いは変わります

相続財産の種類一般的な考え方
預貯金・現金そのまま生活に充てられる資産です。返還や保護の停止・廃止の検討に直結します
不動産売却して生活に充てることが検討されます。居住用の不動産は保有が認められる場合もありますが、個別の判断です
共有持分・換価が難しい財産すぐにはお金にならないため、換価の見込みや方法について福祉事務所と相談しながら進めることになります
借金などの債務相続すると、法定相続分に応じて債務も引き継ぎます。債務が多い場合は相続放棄が合理的なこともあります

どの財産をどこまで保有できるか、いつまでにどう換価するかは、世帯の状況をふまえた福祉事務所の判断になります。最新の取扱いは、担当の福祉事務所・厚生労働省でご確認ください。

相続が起きたら福祉事務所へ――生活保護法61条の届出義務

生活保護を受けている方には、61条の届出義務があります。

被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があつたとき、
又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは、
すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長に
その旨を届け出なければならない。
生活保護法61条

相続が発生し、財産を取得する見込みが生じることは、「生計の状況についての変動」に当たると考えられます。遺産分割がまとまってから、あるいはお金が振り込まれてからではなく、相続が起きた段階で、まず担当のケースワーカーに伝えておくのが安全です。

届出のときに求められることが多い資料

必要な資料は福祉事務所によって異なります。「何を出せばよいか」を最初に確認しておくと、手続きがぐっと楽になります。

[ほかの相続人の側でできること]
生活保護を受けているご本人が、体調やご事情から手続きを進めにくいこともあります。そのようなときは、ほかの相続人の方が、ご本人の了解を得て、ケースワーカーとの連絡に同席するなどの形でお手伝いいただくと、遺産分割もスムーズに進みやすくなります。

保護費の返還はいつの分からか――資力の発生は「亡くなった日」(63条)

相続で財産を取得すると、多くの場合、63条の費用返還が問題になります。

被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、
保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、
その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において
保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。
生活保護法63条

「資力が発生した日」は、原則として被相続人が亡くなった日

ここが、もっとも誤解の多いところです。相続財産が実際に手元に入るのは、遺産分割がまとまり、預金の払戻しや不動産の売却が済んだあとです。けれども、厚生労働省が示している生活保護の問答集(平成21年3月31日付け保護課長事務連絡「生活保護問答集について」)では、相続による資力の発生時点は、原則として被相続人の死亡時とされています。

その根拠とされているのが民法です。相続は死亡によって開始し(民法882条)、相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継し(896条)、遺産の分割は相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる(909条)。そのため、亡くなった日以後に受けた保護費が、返還の対象になり得るという整理です。

返還の対象になり得る保護費 = 被相続人が亡くなった日以後に受けた保護費
(ただし、相続によって取得した財産の額が上限)
具体的な返還額は「保護の実施機関の定める額」として福祉事務所が決定します

数字でイメージしてみます

項目例
被相続人が亡くなった日1月10日
遺産分割協議がまとまった日9月20日
ご本人が相続した預貯金300万円
1月10日以後に受けた保護費月13万円 × 約8か月分 = 約104万円
返還の対象になり得る額約104万円(相続した300万円の範囲内なので、全額が対象になり得ます)

そのうえで、残りの約196万円は「利用し得る資産」として生活に充てることになり、その間は保護が停止・廃止されることが考えられます。上の数字は理解のための例示です。実際の返還額は、世帯の状況や保護費の内訳(医療扶助の額なども含まれ得ます)をふまえて福祉事務所が決定します。

[返還額から差し引かれるものがあることも]
63条の返還額は「保護の実施機関の定める額」です。63条の返還は原則として全額が対象です。ただし厚生労働省の通知にもとづく運用では、全額を返還すると世帯の自立が著しく妨げられると認められる場合に限り、自立更生のためにやむを得ない用途に充てた額などを差し引くことが認められることがあります。届け出ないまま使ってしまった額や、ほかのご家族に贈与した額などは対象外とされています。何が認められるかは個別の判断ですので、使い道を決める前に、必ずケースワーカーにご相談ください。

返還金は「国税徴収の例により」徴収されることもあります

77条の2は、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず保護を受けた者から、63条の実施機関の定める額の全部または一部を徴収できると定め、その徴収金は国税徴収の例により徴収することができるとしています(徴収することが適当でないときとして厚生労働省令で定めるときを除きます)。また78条の2では、ご本人の申出により、保護金品の一部を徴収金の納入に充てるしくみも設けられています。返還を求められたら、そのままにせず、支払い方法を相談することが大切です。

相続放棄はできるのか――家庭裁判所の手続きと、福祉事務所への説明

「弟には放棄してもらったほうがいいのでしょうか」というご質問は、とても多くいただきます。

相続放棄そのものは可能です

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に(民法915条1項)、家庭裁判所に申述して行います(938条)。放棄をした人は、その相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなされます(939条)。生活保護を受けていることを理由に、相続放棄が禁止されているわけではありません。

とくに、借金などの債務が財産より多い場合や、管理や換価が極めて難しい不動産しかない場合には、相続放棄が合理的な選択になることもあります。

ただし「財産があるのに放棄する」ときは慎重に

一方で、預貯金など明らかに生活に充てられる財産があるのに、ほかの相続人に取得させるために放棄する――このような場合は、事情が変わります。民法上の相続放棄が有効であることと、生活保護の制度のなかでその放棄をどう評価するかは、別の問題だからです。

4条1項は「利用し得る資産」の活用を保護の要件としています。福祉事務所から、放棄に至った経緯について説明を求められることがありますし、名目上だけ放棄して、実際にはその財産をご本人が使っているような場合には、「財産はなかった」とは扱われない可能性があります。

場面考え方の目安
債務が財産を上回る相続放棄が合理的な場合が多い。3か月の期間に注意
換価困難な不動産・共有持分しかない放棄が合理的と評価される余地がある。事前に福祉事務所へ相談
預貯金などの財産がある放棄すると、資産の活用の観点から説明を求められる可能性。必ず事前に相談
遺産分割協議で「取得分ゼロ」にする家庭裁判所の相続放棄とは別物。財産を無償で他の相続人に移す形になるため、同じく慎重な検討が必要
[「放棄」と「遺産分割で何ももらわない」は違います]
家庭裁判所に申述する相続放棄と、遺産分割協議で「自分は何も取得しない」と合意することは、法律上まったく別のものです。後者の場合、ご本人は相続人のままであり、債務も法定相続分に応じて引き継ぎます。生活保護の観点からも、本来取得できた財産を手放したと見られ得ます。どちらを選ぶ場合も、事前に福祉事務所と、弁護士・司法書士にご相談ください。

届け出なかったらどうなるか――78条の徴収と40%以下の上乗せ、85条の罰則

相続で財産を得たのに届け出ず、そのまま保護を受け続けていた――この場合は、63条の返還ではなく、78条の不正受給の問題として扱われる可能性があります。

条文内容
78条1項不実の申請その他不正な手段により保護を受けた者から、費用の額の全部または一部を徴収するほか、その徴収する額に100分の40を乗じて得た額以下の金額を徴収することができる
78条4項徴収金は国税徴収の例により徴収することができる(77条の2第2項の準用)
85条1項不実の申請その他不正な手段により保護を受けた者は、3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。ただし、刑法に正条があるときは刑法による

63条の返還は「受けた分を返す」ものですが、78条の徴収には、最大で4割の上乗せがあり得ます。さらに悪質と判断されれば刑事罰の対象にもなり得ます。どちらに当たるかは、届出をしたかどうか、事情を知っていたかどうかなど、個別の事実関係によって判断されます。

ご本人に隠すつもりがなくても、「相続の話は兄がやってくれているから」と届出を後回しにしているうちに、振込まで済んでしまう――こういうことが現実に起こります。相続が起きたら、まず一報を入れる。これがご本人を守るいちばんの方法です。

[「拘禁刑」について]
刑法等の改正により、2025年6月1日から懲役刑と禁錮刑が「拘禁刑」に一本化されました。現行の生活保護法85条も「拘禁刑」と規定しています。古い解説では「懲役」と書かれていることがあります。

生活保護を受けていた親が亡くなったとき――葬祭扶助(18条)と遺留金品(76条)

ここまでは「受給者が相続人になる」場面でした。逆に、生活保護を受けていた親御さんやご親族が亡くなった場面についても、要点を整理しておきます。

葬祭扶助――18条

18条1項は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、検案、死体の運搬、火葬または埋葬、納骨その他葬祭のために必要なものの範囲内で葬祭扶助を行うと定めています。

さらに18条2項は、次の場合に、その葬祭を行う者があるときは、その者に対して葬祭扶助を行うことができるとしています。

つまり、お子さんなどの扶養義務者が喪主として葬儀を行う場合には、18条2項の葬祭扶助は原則として使えません。その場合でも、喪主となる方ご自身が困窮しているときは、18条1項の葬祭扶助が問題になります。葬儀社と契約する前に、福祉事務所に相談してください。契約してしまってからでは対象にならないことがあります。

遺留金品――76条

76条1項は、18条2項により葬祭扶助を行う場合、保護の実施機関は、その死者の遺留の金銭及び有価証券を保護費に充て、なお足りないときは、遺留の物品を売却してその代金をこれに充てることができると定めています。同条2項は、この費用について、遺留の物品の上に他の債権者の先取特権に対して優先権を有するとしています。

相続人として気をつけたいこと

生活保護と相続でよくある7つの落とし穴

  1. 「生活保護を受けているから相続できない」と思い込む 相続権は民法で決まり、生活保護を理由とする制限はありません。ご本人も、ほかの相続人と同じ立場で遺産分割協議に加わります。
  2. お金が振り込まれてから届け出ればよいと考える 61条は、生計の状況に変動があったときに「すみやかに」届け出ることを求めています。相続が起きた段階で、まずケースワーカーに一報を入れてください。
  3. 返還は「遺産分割がまとまってから」の分だけだと考える 厚生労働省の問答集では、相続による資力の発生時点は原則として被相続人の死亡時とされています。亡くなった日以後に受けた保護費が、取得した財産の額を上限に、63条の返還の対象になり得ます。
  4. 相続したお金を先に使ってしまう 返還が決まる前に使い切ってしまうと、返還の原資がなくなり、分割での徴収などに長く苦しむことになりかねません。使い道は、必ず事前にケースワーカーと相談してください。
  5. 「放棄すれば何も問題ない」と安易に放棄する 相続放棄そのものは可能です(民法938条・939条)。けれども、預貯金などがあるのに放棄すると、4条1項の資産の活用の観点から説明を求められることがあります。債務が多い場合などを除き、事前に福祉事務所へ相談してください。
  6. 遺産分割で「取得分ゼロ」にすれば放棄と同じだと考える 協議で何も取得しないことは、家庭裁判所の相続放棄とは違います。債務は法定相続分に応じて引き継いだままであり、生活保護の面でも財産を手放したと見られ得ます。
  7. 保護を受けていた親の葬儀を、先に葬儀社と契約してしまう 葬祭扶助(18条)の対象になるかどうかは、誰が葬祭を行うか、遺留金品がどれだけあるかによって変わります。契約の前に、福祉事務所へご相談ください。
ご相談事例
※以下は、実際のご相談を参考に構成した架空の事例です。特定の個人・団体とは関係ありません。

「弟には放棄してもらうつもりでした」――Tさまご兄弟のご相談

Tさま(50代・男性)は、お父さま(80代)を亡くされて2か月ほど経った頃にお越しになりました。「相続人は私と弟の2人です。父の財産は、実家の土地建物と、預金が800万円ほどです。弟は体を壊してから生活保護を受けています。相続すると保護が打ち切られてしまうと聞いたので、弟には相続放棄をしてもらい、私が全部相続して、弟の生活はこれまでどおり保護で――と考えているのですが」というご相談でした。

私はまず、「弟さんの担当のケースワーカーさんには、お父さまが亡くなったことをもう伝えておられますか」とうかがいました。Tさまは「いえ、相続が片付いてからと思っていました」とのお答えでした。

私は、「生活保護法61条は、生計の状況に変動があったときに、すみやかに届け出ることを求めています。まずは弟さんから、お父さまが亡くなったことを伝えていただくのがよいと思います」とご説明しました。

そのうえで、「相続放棄そのものはできます。ただ、預金があるのに放棄して、お兄さまが全部を相続するという形ですと、生活保護法4条1項の『利用し得る資産』を活用しなかったのではないか、と福祉事務所から説明を求められる可能性があります。放棄を決める前に、福祉事務所に相談されたほうが安全です」とお伝えしました。

Tさまは「よかれと思ってやろうとしていたことが、弟を困らせるかもしれなかったのですね」と、しばらく考え込んでおられました。

その後、Tさまは弟さんと一緒に福祉事務所へ相談に行かれました。弟さんは法定相続分に沿って預金の一部を相続し、お父さまが亡くなった日以後に受けていた保護費については、福祉事務所が定めた額を返還されたそうです。残りの預金で当面の生活をまかなうあいだ、保護は停止になったとうかがいました。実家の不動産については、Tさまが取得し、そのぶんの代償金を弟さんに支払う形で、司法書士と弁護士にも相談しながら進められたとのことです。

Tさまは「黙って放棄させていたら、あとで弟が責められていたかもしれません」と振り返っておられました。

― 私たちから一言 ―

「黙っておいてあげる」ことが、いちばんご本人を困らせます

生活保護を受けているご家族がいる相続では、ほかのご家族が「なるべく弟(妹)の保護に影響が出ないように」と、とても気をつかっておられます。そのお気持ちは、本当によく分かります。

けれども、私がこれまで拝見してきたなかで、いちばんつらい結果になるのは、「福祉事務所には言わずに、こっそり分けておこう」というケースです。あとで相続が分かったとき、ご本人が不正受給を問われ、上乗せを含めて徴収される――気をつかったはずのご家族が、結果的にいちばん大切な人を追い詰めてしまうのです。

生活保護のルールは、「相続したら返す、使えるものは使う」という、じつは筋の通ったものです。最初に福祉事務所へ一報を入れ、一緒に段取りを決めていく――それだけで、多くの場合、穏やかに進めることができます。

もうひとつ、ぜひ知っておいていただきたいのは、生活保護を受けている方が亡くなった場合の相続です。財産はほとんどないと思っていたら、滞納や借入れが残っていたということがあります。お部屋の片付けを急ぐお気持ちは分かりますが、遺品を処分する前に、相続放棄をするかどうかを決めてください。

生活保護と相続が重なる場面は、ご家族にとって、とても言い出しにくいご相談だと思います。どうぞ遠慮なくお話しください。必要に応じて、弁護士・司法書士・税理士におつなぎいたします。

一般社団法人相続なんでも相談センター 代表理事 宮野 宏樹

この記事のまとめ

  • 生活保護を受けていても、相続権は制限されません。ほかの相続人と同じ立場で遺産分割協議に加わります。
  • 生活保護法4条1項は、保護は生活に困窮する者が「その利用し得る資産、能力その他あらゆるもの」を活用することを要件として行われると定めています。相続財産はこの「資産」に当たります。
  • 4条2項は扶養義務者の扶養・他法の扶助の優先を、3項は急迫した事由がある場合の保護を定めています。相続財産がすぐには生活に使えないあいだは、通常、保護を続けたうえで、あとから63条により精算する扱いになります(個別の判断です)。
  • 61条は、生計の状況に変動があったときにすみやかに届け出る義務を定めています。相続が起きた段階で、ケースワーカーに一報を。
  • 63条は、資力があるにもかかわらず保護を受けたとき、受けた保護金品に相当する金額の範囲内で実施機関の定める額を返還しなければならないと定めています。
  • 厚生労働省の問答集では、相続による資力の発生時点は原則として被相続人の死亡時とされています(民法882条・896条・909条)。亡くなった日以後の保護費が、取得した財産の額を上限に返還の対象になり得ます。
  • 返還は原則として全額が対象です。世帯の自立が著しく妨げられる場合に限り、自立更生のためのやむを得ない用途に充てた額などが差し引かれることがありますが、届け出ずに使った額や贈与した額は対象外とされています。使い道は事前に相談を。
  • 77条の2により、返還金は国税徴収の例により徴収されることがあります。78条の2には、保護金品から徴収金に充てる申出のしくみもあります。
  • 相続放棄は可能です(民法915条1項・938条・939条)。ただし財産があるのに放棄する場合は、資産の活用の観点から説明を求められることがあります。
  • 届け出ずに保護を受け続けると、78条1項の徴収(徴収額の100分の40以下の上乗せを含む)や、85条1項の罰則(3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)が問題になり得ます。
  • 生活保護を受けていた方が亡くなった場合、18条2項の葬祭扶助は葬祭を行う扶養義務者がないとき等に行われ、76条により遺留の金銭・有価証券などが葬祭扶助の費用に充てられることがあります。
  • 相続放棄を考えているなら、遺品の処分や預金の引出しの前に専門家へ。単純承認とみなされるおそれがあります(民法921条1号)。
  • 最新の法令・通知・運用は、e-Gov法令検索、厚生労働省、担当の福祉事務所でご確認ください。

参考文献(一次情報)

※本記事は一般的な解説を目的としたものであり、個別の事情により取り扱いが異なる場合がございます。本記事は法律上の助言を提供するものではなく、特定の返還額や保護の停止・廃止の可否、相続放棄の是非を保証するものではありません。相続財産の保有の可否、63条の返還額、資力の発生時点、78条の適用の有無、葬祭扶助の対象となるかなどは、世帯の状況、相続財産の内容、届出の時期、福祉事務所の判断などの個別の事実関係によって結論が変わり得る事項です。とくに厚生労働省の問答集や通知は法律そのものではなく、実務上の解釈・運用を示したものであり、個別の事案では異なる判断がされることがあります。本文中の条文の引用は、読みやすさのために要旨として示した箇所があります。正確な文言は必ず原文をご確認ください。本文中の計算例は理解のための例示であり、実際の事案に当てはまるとは限りません。記載した条項番号・割合・期間は執筆時点で確認したものですが、法令・通知・運用は改正等により変更される可能性があります。本記事の内容は2026年9月時点の情報に基づいていますが、実際にご検討される際は、必ずe-Gov法令検索、厚生労働省、担当の福祉事務所で最新の内容をご確認のうえ、生活保護の取扱いについては担当の福祉事務所に、相続放棄や遺産分割に関する法的な判断については弁護士・司法書士に、相続税の申告については税理士にご確認ください。本記事の情報を利用したことによる損害等について、当センターは責任を負いかねます。

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