法定相続分とは、民法が定めた「分け方の目安」

法定相続分とは、各相続人が遺産のうちどれだけを受け取れるかについて、民法第900条が定めた割合のことを指します。ここで重要なのは、法定相続分はあくまで「目安」として用意されたものであり、相続人全員の合意(遺産分割協議)があれば、この割合と異なる分け方をすることも可能だという点です。

では、なぜ目安が必要なのでしょうか。理由は大きく二つございます。一つは、遺言書がなく、相続人どうしの話し合いがまとまらない場合の最終的な拠り所になるためです。もう一つは、相続税の計算上、まず法定相続分どおりに分けたものとして税額を計算する仕組みになっているためです(相続税法第16条)。

この記事では、法定相続人の範囲を踏まえた上で、それぞれのケースで割合がどうなるか、そして遺産が3,000万円・6,000万円といった具体的な金額の場合にいくらになるのかを、順を追って整理してまいります。

[復習]
法定相続人の範囲については、姉妹記事「法定相続人とは誰のこと、順位と範囲を図解」で詳しくご説明しております。配偶者は常に相続人、血族側は第1順位(子)→第2順位(直系尊属)→第3順位(兄弟姉妹)の順に判定する点をおさらいなさってから、本記事をお読みいただくとスムーズです。

まず、配偶者と血族相続人の組み合わせによる割合を、図でまとめておきます。

パターン1 配偶者と子 1/2 1/2 配偶者 子(合計) ※子が複数なら頭数で按分 パターン2 配偶者と直系尊属 2/3 1/3 配偶者 直系尊属 ※父母が2名なら各1/6 パターン3 配偶者と 兄弟姉妹 3/4 1/4 配偶者 兄弟姉妹 ※兄弟姉妹は人数で按分
図1:法定相続分の3つの基本パターン(民法第900条)

ケース1:配偶者と子(最も多いパターン)

もっとも多くのご家庭が該当するのが、このパターンでございます。配偶者が2分の1、子全体で2分の1を分け合います。子が複数いれば、子の取り分2分の1を、頭数で均等に按分します。

具体例:配偶者と子2人、遺産6,000万円のケース

CASE STUDY

遺産総額 6,000万円/配偶者・長男・長女

配偶者6,000万円 × 1/2 = 3,000万円
長男6,000万円 × 1/2 × 1/2 = 1,500万円
長女6,000万円 × 1/2 × 1/2 = 1,500万円
合計6,000万円

具体例:配偶者と子3人、遺産9,000万円のケース

CASE STUDY

遺産総額 9,000万円/配偶者・長男・長女・次男

配偶者9,000万円 × 1/2 = 4,500万円
長男9,000万円 × 1/2 × 1/3 = 1,500万円
長女9,000万円 × 1/2 × 1/3 = 1,500万円
次男9,000万円 × 1/2 × 1/3 = 1,500万円
合計9,000万円

このように、配偶者の取り分は子の人数にかかわらず常に2分の1ですが、子側の取り分は人数が増えるほど一人あたりの金額が小さくなる仕組みです。

ケース2:配偶者と直系尊属

被相続人にお子様がおらず、配偶者とご両親(直系尊属)が相続人となるケースでは、配偶者が3分の2、直系尊属全体で3分の1を分け合います。直系尊属が複数いらっしゃる場合は、直系尊属側の取り分を頭数で按分します。

具体例:配偶者と父母、遺産6,000万円のケース

CASE STUDY

遺産総額 6,000万円/配偶者・実父・実母

配偶者6,000万円 × 2/3 = 4,000万円
実父6,000万円 × 1/3 × 1/2 = 1,000万円
実母6,000万円 × 1/3 × 1/2 = 1,000万円
合計6,000万円

父母のいずれかがすでに亡くなっていらっしゃる場合は、ご存命の親が3分の1の全額(上記の例なら2,000万円)を相続いたします。父母がお二人とも亡くなっていて祖父母がご存命の場合は、祖父母が直系尊属として相続人となります。

ケース3:配偶者と兄弟姉妹

被相続人にお子様も直系尊属もいらっしゃらず、配偶者と兄弟姉妹が相続人となるケースでは、配偶者が4分の3、兄弟姉妹全体で4分の1を分け合います。配偶者の取り分が大きくなる点が特徴です。

具体例:配偶者と兄弟姉妹3人、遺産8,000万円のケース

CASE STUDY

遺産総額 8,000万円/配偶者・兄・姉・弟

配偶者8,000万円 × 3/4 = 6,000万円
8,000万円 × 1/4 × 1/3 ≒ 666万6,666円
8,000万円 × 1/4 × 1/3 ≒ 666万6,666円
8,000万円 × 1/4 × 1/3 ≒ 666万6,666円
合計8,000万円(端数調整あり)
[重要]
兄弟姉妹には遺留分が認められておりません(民法第1042条)。したがって、被相続人が生前に「すべての財産を配偶者に相続させる」という遺言書を残されていれば、兄弟姉妹は実質的に何も受け取れない結果となります。お子様のいらっしゃらないご夫婦にとっては、遺言書の効果がとくに大きい場面でございます。

配偶者がいない場合・血族のみのケース

被相続人に配偶者がいらっしゃらない場合は、血族相続人のみが遺産を相続いたします。割合は、その順位の相続人が遺産の全部を、頭数で均等に按分するかたちです。

具体例:子3人だけが相続人のケース、遺産6,000万円

CASE STUDY

遺産総額 6,000万円/長男・長女・次男(配偶者なし)

長男6,000万円 × 1/3 = 2,000万円
長女6,000万円 × 1/3 = 2,000万円
次男6,000万円 × 1/3 = 2,000万円
合計6,000万円

同じく、配偶者・お子様がいらっしゃらず父母だけが相続人ならば父母が遺産の全部を、配偶者・お子様・直系尊属がいらっしゃらず兄弟姉妹だけが相続人ならば兄弟姉妹が遺産の全部を、それぞれ頭数で按分いたします。

代襲相続が絡むときの計算

本来相続人となるはずの子や兄弟姉妹が、被相続人より先に亡くなっていらっしゃる場合、その方の子(孫・甥姪)が代わりに相続する仕組みを代襲相続と申します(民法第887条2項・第889条2項)。代襲相続が絡むときは、本来の相続人が受け取るはずだった割合を、その代襲者の人数で按分するのが基本です。

具体例:長男がすでに死亡、孫2人が代襲するケース

遺産総額6,000万円、相続人は配偶者・長女・(亡長男の子である)孫A・孫Bの計4名とします。

CASE STUDY

遺産総額 6,000万円/配偶者・長女・孫A・孫B

配偶者6,000万円 × 1/2 = 3,000万円
長女6,000万円 × 1/2 × 1/2 = 1,500万円
孫A(亡長男の子)6,000万円 × 1/2 × 1/2 × 1/2 = 750万円
孫B(亡長男の子)6,000万円 × 1/2 × 1/2 × 1/2 = 750万円
合計6,000万円

ポイントは、亡くなった長男の取り分(1,500万円)を、孫2人で頭数按分するという点です。長女の取り分が増えたり減ったりすることはありません。

[ご注意]
相続放棄をした方は、代襲の原因にはなりません(民法第939条)。あくまで先に亡くなった、または相続欠格・廃除に該当した場合に限って、代襲相続が発生いたします。

半血兄弟姉妹・養子・非嫡出子の取扱い

「ふつうの相続分」とは少し違う扱いになる方が、現場ではしばしば登場いたします。代表的な3つのケースを整理してまいります。

① 半血兄弟姉妹(異父・異母兄弟姉妹)

父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹を「半血兄弟姉妹」と呼びます。被相続人と両親をともに同じくする「全血兄弟姉妹」と比べて、半血兄弟姉妹の相続分は2分の1とされております(民法第900条4号但書)。これは第3順位(兄弟姉妹)が相続人となるケースだけに適用されるルールで、子どうしの間では適用されません。

② 養子

養子は、実子と完全に同等の相続分を持ちます。普通養子の場合は、実親・養親の双方の相続人になり得ます(特別養子は養親のみ)。なお、相続税の計算上は、基礎控除や生命保険金の非課税枠を計算する際に「法定相続人の数」に含められる養子の数に上限(実子がいる場合は1名、実子がいない場合は2名まで)が設けられています。これは民法上の相続分とは別の話ですので、混同しないようご注意ください。

③ 非嫡出子(婚姻外で生まれた認知された子)

かつては嫡出子の2分の1とされておりましたが、平成25年の民法改正により、嫡出子と完全に同等の相続分を持つこととされました。長く誤解されている方もいらっしゃいますので、この点はぜひ最新の情報で押さえてくださいませ。

遺産分割協議で割合は変えられる

ここまで法定相続分を見てまいりましたが、冒頭でもお伝えしたとおり、これはあくまで「目安」でございます。相続人全員の合意があれば、法定相続分と異なる分け方をしても問題ありません。これを「遺産分割協議」と呼びます。

たとえば、次のような分け方も合意があれば可能です。

遺産分割協議が整いましたら、その内容を「遺産分割協議書」として書面に残し、相続人全員の署名と実印による押印、印鑑証明書の添付を行います。これは不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約手続きで必須となる書面です。

[ポイント]
法定相続分は、あくまで話し合いがまとまらないときの「最後のものさし」と捉えるのが実務的です。多くのご家庭では、ご家族の事情に沿った柔軟な分け方をなさっているのが実情でございます。一方、合意がまとまらないときは、法定相続分が家庭裁判所の調停・審判の出発点となります。
よくある相談事例
※以下の事例は架空のものであり、実在の個人・団体とは関係ありません。

「子どもがいないので、私の相続分はどうなるのでしょうか」

先日、60代のご夫婦Cさん・Dさんからご相談がございました。お二人にはお子様がいらっしゃらず、Cさん(夫)には高齢のお母様、ご兄弟3名がご存命とのこと。Dさん(妻)は「もし主人に万一のことがあったら、私の取り分はどうなるのでしょうか」と、不安そうにお越しになりました。

お話をうかがい、まず仮にご自宅マンションと預貯金を含めた遺産総額を6,000万円と想定して試算をいたしました。お子様がいらっしゃらないため、第2順位のお母様が相続人となり、ご兄弟は相続人にはなりません。法定相続分は、配偶者であるDさんが3分の2=4,000万円、お母様が3分の1=2,000万円となります。

続いて、もしお母様もすでに他界されていた場合をご説明しました。その場合は第3順位のご兄弟3名が相続人となり、Dさんは4分の3=4,500万円、ご兄弟3名で4分の1(1,500万円)を3等分(各500万円)という形になります。さらに、ご兄弟には遺留分が認められないため、Cさんが「妻にすべての財産を相続させる」という公正証書遺言を残されれば、Dさんが全額を受け取ることが法的に可能となる旨もお伝えいたしました。

Dさんは「割合の意味と、遺言書を準備する重要性が初めて腑に落ちました」とご安心の表情でお帰りになりました。このように、ご家族の構成によって法定相続分は大きく変わり、その理解が、必要な準備の判断材料となります。

― 私たちから一言 ―

「割合を知ると、家族会議がぐっと進みます」

ご相談にお越しになる方の多くは、「自分は法定相続分どおりにもらえないのではないか」あるいは「兄弟と平等に分けないと不公平になるのではないか」と、不安を抱えていらっしゃいます。実際にお話しをうかがってみると、具体的な金額に置き換えてみると不安の正体が見えてくることがほとんどです。

とくに、お子様のいらっしゃらないご夫婦の場合、配偶者の取り分が3分の2や4分の3まで上がる一方で、ご両親や兄弟姉妹が登場することにご本人も気づいていらっしゃらないケースが多く見られます。お子様がいらっしゃるご家庭でも、再婚や養子縁組、認知の有無により、思いがけない相続人が現れることもございます。

法定相続分はあくまで法律上の目安にすぎません。大切なのは、「わが家ならどうしたいか」をご家族で話し合うこと、そしてその意思を、必要に応じて遺言書として残しておくことでございます。具体的な金額を当てはめて試算をご希望でしたら、初回相談は無料で承っておりますので、どうぞお気軽にお声がけください。

一般社団法人相続なんでも相談センター 代表理事 宮野 宏樹

この記事のまとめ

  • 法定相続分は、民法第900条が定めた「相続人どうしの分け方の目安」です。
  • 配偶者と子なら「1/2 :1/2」、配偶者と直系尊属なら「2/3 :1/3」、配偶者と兄弟姉妹なら「3/4 :1/4」が基本です。
  • 血族側の取り分は、同順位の相続人の頭数で均等に按分されます。
  • 代襲相続では、亡くなった本来の相続人の取り分を、その代襲者の人数で割ります。
  • 半血兄弟姉妹は全血兄弟姉妹の1/2、養子・非嫡出子は実子・嫡出子と同等の相続分を持ちます。
  • 相続人全員の合意があれば、遺産分割協議で法定相続分と異なる分け方も可能です。

参考文献(一次情報)

※本記事は一般的な解説を目的としたものであり、個別の事情により取扱いが異なる場合がございます。実際のお手続きにあたっては、必ず税理士・司法書士・弁護士などの専門家にご相談ください。また、本記事の内容は執筆時点の法令・税制に基づいており、最新の制度改正により取扱いが変わる場合がございます。

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