道路がらみで土地の評価が下がる3つのケース

相続税の土地評価は、市街地では原則として路線価方式――その土地が面する道路に付された路線価をもとに計算します(相続財産の評価方法の記事もあわせてご覧ください)。ところが、同じ路線価の道路に面していても、道路との関係で使い方が制限される土地は、実際の価値が下がります。そこで財産評価基本通達には、次の3つについて減額のルールが用意されています。

ケース通達減額のしかた(概要)
セットバックを
必要とする宅地
24-6道路として提供しなければならない部分について、通達24-6の算式により計算した割合(0.7を用いる)を乗じた金額を控除する
都市計画道路予定地の
区域内にある宅地
24-7区域内でないものとした場合の価額に、地区区分・容積率・地積割合に応じた補正率を乗じる
私道の用に
供されている宅地
24通常の評価額の100分の30。ただし不特定多数の者の通行の用に供されているときは評価しない
[3つは重なることもある]
たとえば「幅員4メートル未満の道に面していてセットバックが必要」で、かつ「その土地の一部が都市計画道路の予定地にかかっている」ということも起こり得ます。適用の順序や重複適用の可否は個別性が高いため、必ず税理士にご確認ください。

セットバックを必要とする宅地の評価――通達24-6と「70%控除」

セットバックとは、建て替えのときに、敷地の一部を道路として提供する(後退させる)ことをいいます。財産評価基本通達24-6は、建築基準法42条2項に規定する道路に面しており、将来、建物の建替え時等に同法の規定に基づき道路敷きとして提供しなければならない部分を有する宅地について、次のように評価すると定めています。

すなわち、その宅地について道路敷きとして提供する必要がないものとした場合の価額から、その価額に通達24-6の算式により計算した割合を乗じて計算した金額を控除した価額によって評価します。この算式では、セットバック部分の地積が総地積に占める割合に0.7を掛けます。

控除する金額 = 宅地の価額 × (セットバック部分の地積 ÷ 総地積)× 0.7
= セットバックが必要な部分は、実質的に「通常の評価額の30%」で評価されることになる(財産評価基本通達24-6)

計算例(考え方の確認)

路線価方式で計算した宅地の価額が3,000万円、総地積200平方メートル、そのうちセットバックとして提供しなければならない部分が10平方メートルだったとします。

  1. セットバック部分の地積割合を出す 10平方メートル ÷ 200平方メートル = 0.05
  2. 控除する割合を計算する 0.05 × 0.7 = 0.035
  3. 控除額を計算し、評価額を求める 3,000万円 × 0.035 = 105万円 → 3,000万円 - 105万円 = 2,895万円
[「すでに後退済み」の部分は扱いが変わる]
この減額は、あくまで「将来提供しなければならない部分」についてのものです。すでにセットバックが完了し、その部分が現に道路として使われている場合には、私道(通達24)や道路として別に判断されることになります。どちらに当たるかは現況によりますので、必ず専門家にご確認ください。

前提となる建築基準法――42条2項道路と接道義務

セットバックを理解するには、建築基準法上の「道路」という考え方を押さえる必要があります。建築基準法43条は、建物の敷地について建築基準法上の道路に2メートル以上接していなければならない(接道義務)と定めています。そして原則として、建築基準法上の道路は幅員4メートル以上(特定行政庁が指定する区域内では6メートル以上)のものです。

しかし、古い市街地には、幅員4メートル未満の細い道が数多く残っています。そこで建築基準法42条2項は、都市計画区域等に編入された時点ですでに建築物が立ち並んでいた幅員4メートル未満の道について、特定行政庁が指定したものを道路とみなすこととしています。これが実務で「2項道路」「みなし道路」と呼ばれるものです。

2項道路に面していると、建て替え時に敷地が削られる

2項道路では、原則として道の中心線から左右2メートルの範囲が道路とみなされるため、建て替えの際にはそのラインまで敷地を後退させることになります。一方の側が崖や川などである場合には、その反対側から4メートルを確保する形で片側だけ後退する運用があるほか、特定行政庁がやむを得ない事情により中心線からの距離を別に指定できる例外もあるとされています。どのラインまで後退するのかは、必ず現地の特定行政庁(市区町村の建築指導課等)にご確認ください。

相続税の評価では、この「将来削られる部分」が、通達24-6の減額対象になります。逆にいえば、幅員4メートル以上の道路に接しているだけの土地には、この減額は使えません。「うちの前の道は狭い気がする」という感覚ではなく、その道が2項道路として指定されているかどうかが分かれ目になります。

都市計画道路予定地の区域内にある宅地の評価――通達24-7

もう一つの大きな減額が、都市計画道路予定地です。財産評価基本通達24-7は、都市計画道路予定地の区域内(都市計画法4条6項に規定する都市計画施設のうちの道路の予定地の区域内)となる部分を有する宅地について、その部分が区域内でないものとした場合の価額に、次表の地区区分、容積率、地積割合の別に応じて定める補正率を乗じて計算した価額によって評価する、と定めています。

評価額 = 予定地でないものとした場合の価額 × 補正率
= 補正率は「地区区分」「容積率」「地積割合」の3要素で決まる(財産評価基本通達24-7)

なぜ下がるのかというと、都市計画道路の予定地にかかっている部分には、建築の制限がかかるからです。都市計画施設の区域内で建築するには都市計画法53条の許可が必要で、同法54条の許可基準として、階数が2以下で地階がなく、主要構造部が木造・鉄骨造・コンクリートブロック造等で容易に移転・除却できるものであること、といった要件が定められています。つまり、将来道路になる部分には、しっかりした建物を建てにくい――この使いにくさが、評価額の減額として反映されるわけです。

[「計画があるだけ」でも減額の対象になり得る]
都市計画道路は、決定から実際の事業着手まで数十年かかることも珍しくありません。いつ工事が始まるか分からない段階でも、区域内にかかっていれば通達24-7の対象になり得るのがポイントです。「まだ何も起きていないから関係ない」と思い込まないようにしましょう。

補正率表の読み方――地区区分・容積率・地積割合の3要素

通達24-7の補正率は、次の3つの組み合わせで決まります。

FACTOR 1地区区分
(路線価図で確認)
FACTOR 2容積率
(都市計画で確認)
FACTOR 3地積割合
(予定地部分÷総地積)

ここで地積割合とは、通達24-7の注に定められているとおり、その宅地の総地積に対する都市計画道路予定地の部分の地積の割合をいいます。通達に定められた補正率表は、次のとおりです。

地区区分容積率地積割合
30%未満
地積割合
30%以上60%未満
地積割合
60%以上
ビル街地区、
高度商業地区
700%未満0.880.760.60
ビル街地区、
高度商業地区
700%以上0.850.700.50
繁華街地区、
普通商業・併用住宅地区
300%未満0.970.940.90
繁華街地区、
普通商業・併用住宅地区
300%以上
400%未満
0.940.880.80
繁華街地区、
普通商業・併用住宅地区
400%以上
500%未満
0.910.820.70
繁華街地区、
普通商業・併用住宅地区
500%以上0.880.760.60
普通住宅地区、
中小工場地区、大工場地区
200%未満0.990.980.97
普通住宅地区、
中小工場地区、大工場地区
200%以上
300%未満
0.970.940.90
普通住宅地区、
中小工場地区、大工場地区
300%以上0.940.880.80

表からわかる傾向は、次の2点です。第一に、予定地にかかる割合(地積割合)が大きいほど、補正率は小さくなる=減額が大きくなること。第二に、容積率が高い商業地ほど、減額の幅が大きいことです。高い建物を建てられる土地ほど、建築制限による打撃が大きいためと考えられます。反対に、普通住宅地区で容積率が低く、かかる面積もわずかであれば、補正率は0.99――ほとんど下がりません

[補正率表は改正されることがある]
通達24-7の補正率表は、これまでにも改正が行われています(直近では令和3年の改正が公表されています)。ご相続の課税時期にどの表が適用されるかは、必ずその時点の国税庁の通達本文でご確認ください。本記事の数値は執筆時点で国税庁ウェブサイトに掲載されている通達に基づくものです。

私道の評価――通達24の「30%」と「評価しない」の分かれ目

3つめは私道です。財産評価基本通達24は、私道の用に供されている宅地の価額は、通常の方法により計算した価額の100分の30に相当する価額によって評価すると定めています。そして、その私道が不特定多数の者の通行の用に供されているときは、その私道の価額は評価しないとしています。

行き止まりなど特定の者が使う私道 → 30%評価
不特定多数の者が通行する私道 → 評価しない(ゼロ)
= 財産評価基本通達24。「誰が通れる道か」で扱いが大きく変わる

典型的なイメージとしては、公道から公道へ通り抜けできる道や、多くの人が自由に通行している道は「不特定多数の者の通行の用に供されている」として評価しない扱いになり、数軒の家のためだけにある行き止まりの通路は30%評価になる、と説明されます。ただし、これは形状だけで機械的に決まるものではなく、現実の通行状況などを踏まえた個別判断になります。

「自分の家だけが使う通路」は、私道として減額しない

注意が必要なのは、その土地の所有者だけが使っている、いわゆる専用通路です。国税庁のタックスアンサー「私道の評価」(No.4622)の注では、宅地への通路として専用利用している路地状敷地については、私道として評価することはせず、隣接するその宅地とともに1画地の宅地として評価するとされています。「細長い通路状の部分だから当然30%」と思い込むと、評価を誤るおそれがあります。ご自身の土地がこれに当たるかどうかの判断は、必ず国税庁の一次情報を確認のうえ、税理士にご相談ください。

私道そのものの価額の出し方

私道に路線価が付されていない場合でも、評価ができないわけではありません。国税庁のタックスアンサー「私道の評価」(No.4622)では、私道の価額は次の算式によるとされています。

私道の価額 = 正面路線価 × 奥行価格補正率 × 間口狭小補正率
× 奥行長大補正率 × 0.3 × 地積
= その私道が接続している路線の路線価をもとに計算する(国税庁タックスアンサーNo.4622)

また同じページの注では、その私道に特定路線価が設定されている場合には、「特定路線価×0.3×地積」で評価しても差し支えないとされています。

[特定路線価は「宅地」を評価するための制度]
ここでいう特定路線価(通達14-3)は、路線価の設定されていない道路のみに接している「宅地」を評価する必要がある場合に、その道路を路線とみなしてその宅地を評価するために、納税義務者からの申出等に基づいて設定されるものです。私道そのものを評価する目的で設定を申し出る制度ではない点にご注意ください。私道と、その私道にのみ接する宅地をあわせて相続した場合の取り扱いは、無道路地の評価とあわせて税理士にご確認ください。

3つの減額を使うための調べ方と必要資料

これらの減額は、自分で調べて申告書に反映しなければ、誰も教えてくれません。相続した土地について、次の順番で確認していくとよいでしょう。

  1. 登記事項証明書・公図・地積測量図を取る 法務局で取得します。土地の形状、隣地との関係、通路状の部分の有無を確認します(相続財産の調べ方もご参照ください)。
  2. 路線価図で地区区分と路線価を確認する 国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で、その土地が普通住宅地区か普通商業・併用住宅地区か等を確認します。通達24-7の補正率を引くために必要です。
  3. 市区町村の建築指導課で「道路」を確認する 前面道路が建築基準法42条2項道路かどうか、後退のラインはどこかを確認します。道路種別を示す図面(道路台帳等)で確認できることが多いです。
  4. 都市計画課で都市計画図を確認する 用途地域・容積率と、都市計画道路の予定地にかかっているかを確認します。多くの自治体では、都市計画情報をインターネットで公開しています。
  5. 現地を歩いて、通行の状況を確認する 私道が通り抜けできるか、行き止まりか、実際に誰が通っているか。写真を撮って記録しておくと、後の説明資料になります。
相談事例
※以下は、よくあるご相談をもとに再構成した架空の事例です。実在の方とは関係ありません。

「実家の前の道が狭いのは知っていましたが、評価に関係するとは思いませんでした」

お父さまを亡くされた方から、こんなご相談をいただきました。「実家の前の道は、車がすれ違えないくらい狭い道です。子どもの頃から当たり前だったので、なんとも思っていませんでした。相続税の申告を自分でやってみようと路線価を調べて、土地の評価額を計算したのですが、なんだか高い気がして……」。

市区町村の建築指導課で確認したところ、前面の道は建築基準法42条2項道路として指定されており、建て替えの際にはセットバックが必要とのことでした。さらに都市計画図を見ると、敷地の一部が都市計画道路の予定地にもかかっていることが分かりました。「役所で確認して、初めて自分の土地の状況を正確に知りました。数字が動く話だと知っていれば、もっと早く調べていたのに」。

このように、道路がらみの減額は「役所で確認しないと分からない」ものばかりです。実際にいくら下がるのか、そもそも適用できるのかは、資料をそろえたうえで税理士が判断することになります。ご自身で申告される場合も、土地が含まれるときは一度専門家に相談されることを、私たちはおすすめしています。

― 私たちから一言 ―

「土地の評価は、路線価に地積を掛けて終わりではありません」

相続のご相談をお受けしていて、いつも申し上げるのが「土地の評価は、路線価×地積では終わらない」ということです。今回ご紹介したセットバック(通達24-6)・都市計画道路予定地(通達24-7)・私道(通達24)のほかにも、無道路地地積規模の大きな宅地、不整形地、貸家建付地など、評価を下げ得るルールはいくつも用意されています。

大切なのは、これらが「申告する側が主張しなければ反映されない」ということです。税務署が「お宅の土地はセットバックが必要ですから下げておきますね」と言ってくれることはありません。だからこそ、公図・路線価図・道路台帳・都市計画図という4点セットを、面倒でも取りにいくことが、ご家族の負担を軽くする一歩になります。

一方で、逆の失敗もあります。適用できないのに減額してしまい、後の税務調査で否認されるケースです。とくに私道の「30%なのか、ゼロなのか、そもそも宅地の一部なのか」という判断や、セットバックの「将来分か、すでに済んだ分か」という区別は、慎重な検討が必要です。私たちは、土地の状況の確認から、必要な資料の集め方、税理士との連携までを一括してお手伝いしています。「うちの土地、これに当たるのだろうか」という段階でも、どうかお気軽にご相談ください。

一般社団法人相続なんでも相談センター 代表理事 宮野 宏樹

道路がらみの土地評価でよくある7つの落とし穴

当センターへのご相談の中で見えてきた、道路がらみの土地評価をめぐるよくある誤解と落とし穴を7つに整理いたしました。

  1. 「道が狭い」という感覚だけでセットバックの減額を使ってしまう 通達24-6の対象は、建築基準法42条2項の道路に面し、道路敷きとして提供しなければならない部分を有する宅地です。まず特定行政庁に道路種別を確認しましょう。
  2. セットバック部分を「全体の70%控除」と誤解する 控除するのは「セットバック部分の地積÷総地積×0.7」を乗じた金額です。土地全体が30%になるわけではありません。
  3. 都市計画道路の予定地でも「まだ工事が始まっていないから関係ない」と思い込む 事業着手前でも、区域内にかかっていれば通達24-7の対象になり得ます。都市計画図の確認を省略しないようにしましょう。
  4. 補正率を古い表や不正確な資料から引いてしまう 通達24-7の補正率表は改正されることがあります。課税時期に適用される国税庁の通達本文で必ず確認してください。
  5. 通り抜けできる私道を「30%」で評価してしまう 不特定多数の者の通行の用に供されている私道は、通達24により評価しない扱いです。30%で評価すると納め過ぎになりかねません。
  6. 自分の家だけが使う専用通路を、私道として減額してしまう 宅地への通路として専用利用している路地状敷地は、私道として評価せず、隣接するその宅地とともに1画地の宅地として評価するとされています。ご自身の土地が該当するかは、必ず専門家にご確認ください。
  7. 資料を集めずに「たぶん該当する」で申告してしまう 公図・路線価図・道路台帳・都市計画図などの裏づけがないと、否認されたときに説明できません。根拠資料を残しておきましょう。

この記事のまとめ

  • 道路との関係で相続税の土地評価が下がる代表例は、セットバック(通達24-6)・都市計画道路予定地(通達24-7)・私道(通達24)の3つ。
  • セットバックは、建築基準法42条2項の道路に面し、道路敷きとして提供しなければならない部分を有する宅地が対象。
  • 控除額は「宅地の価額×(セットバック部分の地積÷総地積)×0.7」。その部分は実質30%評価となる。
  • 都市計画道路予定地は、都市計画法4条6項の都市計画施設のうち道路の予定地の区域内にかかる部分がある宅地が対象。
  • 通達24-7の補正率は、地区区分・容積率・地積割合の3要素で決まる。普通住宅地区・容積率200%未満・地積割合30%未満なら0.99。
  • 私道は通達24により100分の30で評価。ただし不特定多数の者の通行の用に供されているときは評価しない。
  • 宅地への通路として専用利用している路地状敷地は、私道として評価せず、隣接するその宅地とともに1画地の宅地として評価する。
  • いずれも申告する側が主張しなければ反映されない。公図・路線価図・道路台帳・都市計画図を確認し、判断は税理士に相談を。

参考文献(一次情報)

※本記事は一般的な解説を目的としたものであり、個別の事情により取り扱いが異なる場合がございます。セットバックを必要とする宅地・都市計画道路予定地の区域内にある宅地・私道の評価は、土地の形状、道路の種別、通行の状況、都市計画の内容、課税時期などによって個別に判断されるものであり、本記事の内容が特定の結果を保証するものではありません。とくに通達24-7の補正率表の数値、地区区分・容積率の区分、控除割合などは改正される可能性がありますので、必ず最新の情報をご確認ください。本記事の内容は2026年7月時点の情報に基づいていますが、実際の申告にあたっては、必ず国税庁国土交通省・お住まいの市区町村等の一次情報を確認のうえ、税理士・不動産鑑定士などの専門家にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害等について、当センターは責任を負いかねます。

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