「その他の財産」とは――土地・建物・株式・預貯金の“次”にあるもの

相続税の申告では、故人が持っていた財産を種類ごとに分けて評価します。土地、家屋、有価証券、現金・預貯金――ここまでは多くの方が思い浮かべられます。そして、それ以外のすべてが入る受け皿が「その他の財産」です。

この区分に入るものを挙げてみると、その幅の広さに驚かれるはずです。

これらに共通する評価の原則は、相続税法22条にあります。相続財産の価額は、原則として「取得の時における時価」によるというものです。そして、その「時価」を具体的にどう算定するかを、国税庁が定めた財産評価基本通達が細かく示しています。土地の路線価も、非上場株式の類似業種比準方式も、すべてこの通達に根拠があります。

相続財産の価額=課税時期(相続開始時)の時価
その時価の算定ルールを定めたものが財産評価基本通達
= 「その他の財産」にも、ちゃんと番号のついたルールが用意されている

金額が小さいから省略してよい、ということにはなりません

「家財なんて、売っても数万円です」――そのお気持ちは分かります。実際、家庭用財産の評価額は数十万円程度に収まることも多くあります。しかし、金額が小さいことと、記載しないでよいことは別です。とくにゴルフ会員権と貸付金は、金額が大きくなりやすく、しかも名義や契約書という形で外部に記録が残っているため、税務調査で把握されやすい財産です。相続税の税務調査では、故人の預金の動きから「この振込は誰への貸付か」が確認されることも珍しくありません。意図的でない漏れであっても、加算税や延滞税の対象になり得ますので、まずは一覧にすることから始めてください。

一般動産の評価の原則――通達128の評価単位と通達129の評価方法

家具、家電、自動車、貴金属、骨とう品――形のある「もの」は、通達の上では一般動産として扱われます。この一般動産の評価には、二つの基本ルールがあります。

通達128《評価単位》――何を1つと数えるか

まず、どの単位で評価するかを定めているのが財産評価基本通達128です。原則は1個または1組ごとに評価します。ただし、ここに実務上とても大切なただし書きがあります。

家庭用動産、農耕用動産、旅館用動産等で、1個または1組の価額が5万円以下のものについては、それらを一括した価額によって、一世帯、一農家、一旅館等ごとに評価することができるとされています。

1個または1組の価額が5万円以下の家庭用動産等
→ 一世帯ごとに一括した価額で評価できる(通達128)
= 食器一枚、タオル一枚まで値段をつけて並べる必要はない、という趣旨のルール

これは納税者にとって非常にありがたい規定です。テレビ、冷蔵庫、洗濯機、ソファ、食器、衣類……といった日用品を一つずつ評価する必要はなく、「家庭用財産 一式 ○○万円」とまとめて計上できるということです。実務では、申告書に「家財一式」として数十万円程度を計上することが一般的に行われています。

[「できる」規定です――5万円を超えるものは別立てになります]
注意していただきたいのは、これが「できる」という選択的な規定であり、しかも対象は1個または1組の価額が5万円以下のものに限られるという点です。1点で5万円を超える価値のあるもの――高級腕時計、貴金属、ブランド品、価値のある骨とう品、自動車など――は、家財一式に紛れ込ませることはできません。これらは個別に評価する必要があります。「まとめて家財一式にしておけば大丈夫」という理解は、ここで崩れます。

通達129《一般動産の評価》――いくらと見るか(第6章第1節「一般動産」)

次に、金額をどう算定するかを定めているのが財産評価基本通達129です。原則は、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価するとされています。

そして、これらが明らかでない動産については、同種・同規格の新品の課税時期における小売価額から、製造の時から課税時期までの期間の償却費の額の合計額または減価の額を控除した金額によって評価するとされています。要するに、「同じものの新品価格から、使った分だけ減らす」という考え方です。

STEP 1 売買実例価額
(中古市場の相場)を探す
STEP 2 なければ精通者意見価格
(専門家の意見)を求める
STEP 3 それも明らかでなければ
新品小売価額−償却費

家庭用財産と自動車――5万円以下は一括評価、車は中古相場が手がかり

前節のルールを、実際の財産に当てはめてみます。

家庭用財産(家財一式)

通達128のただし書きにより、1個または1組が5万円以下のものは一括評価できます。実務上は、お住まいの規模や生活の様子から総額を見積もって「家財一式」として計上します。特別に価値のあるものがないご家庭であれば、それほど大きな金額にはなりません。

ただし、次のようなものが含まれている場合は、個別に評価するかどうかを検討してください。

金地金と仏具は、まったく違う扱いになります

同じ「家の中にあるもの」でも、扱いは大きく異なります。金地金や金貨は、課税時期の相場で評価される、はっきりとした課税財産です。近年は価格の上昇もあり、金額が大きくなりやすいところです。一方、墓所・霊びょう・祭具およびこれらに準ずるもの(仏壇・仏具など)は、相続税法12条により原則として非課税財産とされています。ただし、非課税とされるのはあくまで日常礼拝の用に供されているものであり、投資や商品として保有されている金の仏具などは課税対象になり得ます。詳しくは祭祀財産の承継の記事をご覧ください。

自動車

自動車も一般動産ですから、通達129により、売買実例価額・精通者意見価格等を参酌して評価します。実務では、中古車の買取価格や査定額、同じ車種・年式・走行距離の中古車販売価格が有力な手がかりになります。

買取業者の査定書を取っておけば、金額の根拠として残せますので有用です。逆に、「もう古いから0円」と決めつけるのは危険です。年式が古くても人気車種であれば相場がつくことがあり、近年は旧車の価格が上昇している例もあります。なお、自動車の名義変更(移転登録)そのものは相続手続きの一環ですので、こちらは相続の名義変更の記事をご参照ください。

書画骨とう品・美術品――通達135、売買実例価額と精通者意見価格

掛け軸、絵画、茶道具、陶磁器、刀剣――こうした書画骨とう品の評価を定めているのが財産評価基本通達135《書画骨とう品の評価》です。

この通達は、次の二つに区分しています。

区分評価方法
書画骨とう品の販売業者が有するもの棚卸商品等の評価に関する通達133の定めにより評価する
それ以外のもの
(一般の方がお持ちの場合)
売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する

つまり、一般のご家庭にある骨とう品については、市場での売買実例か、専門家の意見価格が基準になるということです。

[「価値があるかどうか分からない」ときの現実的な進め方]
骨とう品でいちばん多いご相談が、「父が集めていたものだが、価値があるのか見当もつかない」というものです。この場合、まずは付属している箱書き・鑑定書・購入時の領収書を探してください。これらがあれば、それ自体が有力な手がかりになります。次に、明らかに高額そうなものがあれば、古美術商や鑑定士に意見価格を出してもらうことをご検討ください。鑑定には費用がかかりますが、後から税務署に「もっと高いはずだ」と指摘されたときの反論材料にもなります。逆に、量が多いだけで市場価値がほとんどないコレクションであれば、家財一式に含めて処理することが実務上一般的です。判断に迷うものは、写真を撮って税理士にご相談ください。

ゴルフ会員権――通達211、取引相場があるものは通常の取引価格の70%

ゴルフ会員権は、財産評価基本通達211《ゴルフ会員権の評価》に評価方法が定められています。ここは数値がはっきりしている論点ですので、正確に押さえていただきたいところです。

取引相場のある会員権

取引相場のあるゴルフ会員権は、課税時期における通常の取引価格の70%に相当する金額によって評価します。

取引相場のあるゴルフ会員権
= 課税時期の通常の取引価格 × 70%
= 財産評価基本通達211(1)。取引価格に含まれない預託金等があるときは、別に加算します

さらに、その取引価格に含まれない預託金等があるときは、次の金額を加算するとされています。

取引相場のない会員権

取引相場のない会員権は、その会員権の内容によって三つに分かれます。

会員権の内容評価方法
株主でなければ
会員となれないもの
その会員権に係る株式の価額によって評価する
株主であり、かつ
預託金等の預託も要するもの
株式の価額と預託金等の価額との合計額によって評価する
預託金等の預託を
要するもの
取引相場のある会員権の場合の預託金等の計算方法(直ちに返還/複利現価)により計算した金額によって評価する

株式の価額が関係する場合は、その株式が非上場であれば非上場株式の相続税評価の考え方が入ってきます。

評価しなくてよいゴルフ会員権もあります――ここは見落とされがちです

通達211には、重要な例外が置かれています。株式の所有を必要とせず、かつ譲渡できない会員権で、返還を受けることができる預託金等がなく、ゴルフ場施設を利用して単にプレーができるだけのものは、評価しないとされているのです。つまり、「売れず、預託金も戻らず、ただプレーできるだけ」という会員権には、財産としての価値を認めないという扱いです。名義が残っているだけで実質的な価値のない会員権をお持ちのケースは実際に多くありますので、お持ちの会員権がどの類型に当たるのかを、規約や証書で確認してください。ただし、この判断は会員権の規約の内容によりますので、該当するかどうかは税理士にご確認いただくのが確実です。

[リゾート会員権も同じ考え方で整理します]
リゾートホテルの会員権なども、売買相場があるのか、預託金が返ってくるのか、株式が付いているのかという同じ切り口で性質を確認していきます。あわせて、年会費の未払いがないかもご確認ください。未払いの年会費は、故人の確定した債務であれば債務控除の対象になり得ます。債務控除の考え方は葬儀費用と債務控除の記事で整理しています。

貸付金・売掛金・未収入金――通達204と、回収不能のときの通達205

「その他の財産」のなかで、もっとも金額が大きくなりやすく、もっとも見落とされやすいのが債権です。とくに、故人がご自身の会社に貸していたお金(役員貸付金)や、親族に貸していたお金は、相続財産として計上が必要です。

通達204《貸付金債権の評価》――元本+既経過利息

財産評価基本通達204は、貸付金、売掛金、未収入金などの貸付金債権等の評価について、次の合計額によるとしています。

貸付金債権等の価額=元本の価額利息の価額
元本=返済されるべき金額/利息=課税時期現在の既経過利息として支払を受けるべき金額(通達204)

ここで押さえていただきたいのは、原則として額面(返済されるべき金額)で評価されるということです。土地のように評価額が下がる仕組みは、原則として働きません。1,000万円貸していれば、1,000万円の財産として計上するのが出発点になります。

なお、課税時期にすでに支払期限が到来している未収の家賃や地代については、通達204ではなく通達208《未収法定果実の評価》が定められています。遺産分割前に生じた家賃が誰のものになるかという民法上の論点は、遺産分割前に生じた家賃・配当の記事で整理しています。

通達205《貸付金債権等の元本価額の範囲》――回収不能なら算入しない

とはいえ、回収できる見込みのないお金まで額面で課税されるのは、あまりに酷です。そこで置かれているのが財産評価基本通達205です。

この通達は、債権金額の全部または一部について、課税時期において回収が不可能または著しく困難であると見込まれるときは、それらの金額は元本の価額に算入しないとしています。そして、その判断のよりどころとなる事由が具体的に列挙されています。

  1. 債務者について、法的整理や支払不能の状態が生じている場合 手形交換所の取引停止処分、会社更生法の更生手続開始決定、民事再生法の再生手続開始決定、破産法の破産手続開始決定などが挙げられています。
  2. 業況不振等により、事業を廃止または6か月以上休業している場合 業況不振または重大な損失により、事業を廃止し、または6か月以上休業しているときが挙げられています。
  3. 債権者集会の協議により、債権の切捨て・棚上げが決定された場合 切り捨てられた部分や、年賦償還で弁済期が決定後5年を超える部分、課税時期後5年を経過した日後に弁済されることとなる部分などが挙げられています。
  4. 当事者間の契約により、金融機関等のあっせんに基づいて債権が調整された場合 真正な債権調整と認められるものについて、同様の扱いが示されています。

「返ってこないと思う」だけでは、通達205は使えません

私たちがもっとも丁寧にご説明するのが、ここです。通達205が求めているのは、破産手続開始決定や6か月以上の休業といった、外部から客観的に確認できる事実です。「相手にお金がなさそうだ」「もう何年も返ってきていない」といったご事情だけでは、元本から外すことは難しいのが実務の実感です。とくに故人がご自身の会社に貸していた役員貸付金は要注意です。会社が赤字であっても事業を続けている限り、通達205に列挙された事由に当たらず、額面で相続財産に計上せざるを得ないことが多いのです。「会社に貸したお金だから、返ってこない前提で考えていました」というご相談は、当センターでも本当に多くいただきます。この問題は、亡くなってからでは手が打てません。生前に、貸付金の整理(債務免除やDES等の検討)を専門家と進めておくことが有効な備えの一つです。

電話加入権はどうなったか――2021年1月1日以後の取扱い

最後に、実務が大きく変わった財産を一つ取り上げます。固定電話の電話加入権です。

かつて電話加入権は数万円で取引される財産で、相続税の申告書にも独立の項目として記載され、電話取扱局ごとに定められた標準価額によって評価されていました。ご高齢の方の申告書を見ると、「電話加入権 ○○円」という行がきちんと立っているのを目にします。

しかし、その後の通信環境の変化により、電話加入権が市場で取引されることはほとんどなくなりました。これを受けて、国税庁は質疑応答事例「電話加入権の評価」において、令和3年(2021年)1月1日以後に相続、遺贈により取得した電話加入権については、一般動産についての財産評価基本通達128《評価単位》の定めに基づき、一括して評価する家庭用財産等に電話加入権を含めることとして差し支えないという取扱いを示しています。

ここで正確に押さえていただきたいのは、これが「差し支えありません」という許容の書き方であるという点です。同じ質疑応答事例は、原則としては電話加入権も一般動産として売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価するという総論を残しています。つまり、「家財一式に含めなければならない」という義務ではなく、「含めてもかまわない」という取扱いが認められたと理解するのが正確です。

2021年1月1日以後に相続・遺贈で取得した電話加入権
家庭用財産等に含めて一括評価して差し支えない
= 国税庁 質疑応答事例「電話加入権の評価」による取扱い(通達128《評価単位》の定めに基づくもの)。なお令和2年12月31日以前に取得したものについては別途の取扱いとされています

実務上の意味は明快です。「電話加入権をいくらで評価すればよいのか」と悩む必要はもうなく、家財一式のなかに含めて差し支えないということになります。とはいえ、これは財産として存在しないことになったという意味ではありません。名義変更や解約の手続きは、相続手続きとして別途必要になりますので、忘れずに進めてください。

相談事例
※以下は、よくあるご相談をもとに再構成した架空の事例です。実在の方とは関係ありません。

「会社に貸していた3,000万円が、そのまま相続財産になると言われました」

50代の男性から、こんなご相談をいただきました。「父が亡くなりました。財産は自宅と預金、それに父が経営していた会社の株です。相続税の試算をお願いしたところ、『お父様が会社に貸していた3,000万円も相続財産です』と言われて驚いています。会社は赤字続きで、返せる状態ではありません。返ってこないお金に税金がかかるのでしょうか」。

まず、決算書を拝見しました。貸借対照表の負債に「役員借入金 3,000万円」が計上されていました。長年にわたり、運転資金が足りないときにお父様がご自身の預金から会社に入れてこられたものでした。借用書はなく、利息の取り決めもありません。

お伝えしなければならなかったのは、財産評価基本通達204により、貸付金債権は原則として元本の価額(返済されるべき金額)で評価されること。そして、額面から外すには通達205に列挙された事由――破産手続開始決定、6か月以上の休業など、客観的に確認できる事実が必要になるということでした。この会社は赤字ではあっても事業を継続しており、従業員もいました。「赤字だから回収不能」という主張は、通達205の枠組みには乗りにくいのです。

結果として、この3,000万円は相続財産に計上することになりました。一方で、この方にはもう一つの視点をお伝えしました。会社側から見れば、これは3,000万円の借入金です。相続によって債権者が息子さまに移ったわけですから、今後どう整理していくかを会社の側で検討できる、ということです。債務免除には会社側で債務免除益という課税が生じ得ますし、他の株主がいれば株価の変動を通じた贈与の問題も生じ得ますので、税理士と時間をかけて設計することになりました。

この事案でお伝えしたかったのは、役員貸付金・役員借入金は、生前にしか手を打てない財産だということです。お亡くなりになった時点で金額は固まってしまいます。会社にお金を入れている経営者の方は、決算書の貸借対照表を一度ご覧ください。そこに書かれた金額が、そのまま相続財産の予告になっています。

― 私たちから一言 ―

「申告漏れは、隠したときではなく、知らなかったときに起きます」

相続税の申告をお手伝いしていて、いつも思うことがあります。申告漏れの大半は、隠そうとして起きるのではなく、「それが財産だと知らなかった」から起きるのです。土地や預金を隠す方は、まずいらっしゃいません。漏れるのは、亡くなったお父様が親族に貸していたお金や、ずっと使っていなかったゴルフ会員権や、ご自身の会社への貸付金です。ご遺族に悪意はありません。ただ、財産として意識されていなかっただけなのです。

ですから、私たちがご相談の最初に必ずお願いしているのは、「金額の大小で判断せず、まず全部並べてください」ということです。価値があるかどうか、財産に当たるかどうかの判断は、こちらでいたします。借用書、証書、鑑定書、保証金の預り証、古い契約書――封筒に入ったまま引き出しに眠っているものを、一度全部出していただく。これが何より効きます。とくに会社を経営されていたご家庭では、必ず決算書の貸借対照表を確認してください。役員借入金という一行が、数千万円の相続財産を意味していることがあります。

そして、生前の対策という観点から、正直に申し上げたいことがあります。「その他の財産」は、亡くなってからでは打てる手がほとんどありません。貸付金は額面で固まります。使わないゴルフ会員権も、そのまま残ります。ですから、お元気なうちに整理していただきたいのです。使っていない会員権は処分を検討する。親族への貸付は、返済してもらうか、贈与として整理するか決める。会社への貸付は、税理士と一緒に方針を立てる。どれも、後から誰かが代わりにやることはできません。当センターでは、税理士と連携して、財産の棚卸しから整理の方針づけまでお手伝いしております。「これは財産になるのでしょうか」――その一言で結構です。まずはお電話ください。

一般社団法人相続なんでも相談センター 代表理事 宮野 宏樹

「その他の財産」の評価でよくある7つの落とし穴

当センターへのご相談の中で見えてきた、「その他の財産」の評価をめぐるよくある誤解と落とし穴を7つに整理いたしました。

  1. 親族や自分の会社への貸付金を、財産と考えていない 貸付金債権は、財産評価基本通達204により原則として元本の価額(返済されるべき金額)と既経過利息の合計で評価されます。返ってきていないという事情だけでは額面から外せません。決算書の役員借入金は、そのまま相続財産の予告です。
  2. 「回収できないと思う」だけで元本から外そうとする 通達205が求めているのは、手形交換所の取引停止処分、更生手続・再生手続・破産手続の開始決定、事業の廃止または6か月以上の休業といった客観的に確認できる事由です。赤字であっても事業を続けている会社への貸付金は、額面での計上を求められることが多くあります。
  3. 高価なものまで「家財一式」にまとめてしまう 通達128のただし書きで一括評価できるのは、1個または1組の価額が5万円以下の家庭用動産等です。貴金属、高級腕時計、価値のある骨とう品、自動車などは個別の評価が必要になります。
  4. ゴルフ会員権を、取引価格そのままで計上する 取引相場のある会員権は、課税時期における通常の取引価格の70%に相当する金額で評価します(通達211)。ただし、取引価格に含まれない預託金等があるときは別に加算が必要です。
  5. 価値のないゴルフ会員権まで評価してしまう 株式の所有を必要とせず、譲渡もできず、返還を受けられる預託金等もなく、単にプレーができるだけの会員権は評価しないとされています。お持ちの会員権がどの類型に当たるか、規約や証書で確認してください。
  6. 古い自動車を一律に0円と決めつける 自動車は一般動産として、通達129により売買実例価額・精通者意見価格等を参酌して評価します。年式が古くても人気車種であれば相場がつくことがあります。買取業者の査定書は金額の根拠として残せます。
  7. 骨とう品の箱書きや鑑定書を捨ててしまう 書画骨とう品は通達135により、売買実例価額・精通者意見価格等を参酌して評価します。箱書き・鑑定書・購入時の領収書は、評価額の根拠としてそのまま使える資料です。片づけの際に処分してしまわないようご注意ください。

この記事のまとめ

  • 相続財産の価額は、原則として課税時期(相続開始時)の時価によるものとされ、その算定ルールを定めているのが国税庁の財産評価基本通達である。
  • 「その他の財産」には、家庭用財産、自動車、書画骨とう品、貴金属、ゴルフ会員権、貸付金・売掛金、未収家賃、電話加入権などが含まれる。
  • 一般動産は、財産評価基本通達128により原則として1個または1組ごとに評価する。
  • ただし通達128のただし書きにより、家庭用動産、農耕用動産、旅館用動産等で1個または1組の価額が5万円以下のものは、一括した価額により一世帯、一農家、一旅館等ごとに評価することができる。
  • 通達129により、一般動産は売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。それらが明らかでないときは、同種・同規格の新品の課税時期における小売価額から償却費または減価の額を控除した金額によって評価する。
  • 自動車も一般動産であり、中古車の買取価格や査定額が有力な手がかりになる。年式が古いことだけを理由に0円と扱うのは適切でない。
  • 書画骨とう品の評価は通達135により、販売業者が有するものは通達133により、それ以外は売買実例価額・精通者意見価格等を参酌して評価する。
  • ゴルフ会員権のうち取引相場のあるものは、通達211により課税時期における通常の取引価格の70%に相当する金額で評価する。
  • 取引価格に含まれない預託金等があるときは、直ちに返還を受けられるものはその金額、一定期間経過後に返還を受けられるものは複利現価により計算した金額を加算する。
  • 取引相場のない会員権は、株主でなければ会員となれないものは株式の価額、株主かつ預託金等の預託を要するものは株式の価額と預託金等の価額の合計額、預託金等の預託を要するものは預託金等の計算方法により評価する。
  • 株式の所有を必要とせず、譲渡できず、返還を受けられる預託金等もなく、単にプレーができるだけの会員権は評価しないとされている。
  • 貸付金債権等は通達204により、元本の価額(返済されるべき金額)と課税時期現在の既経過利息の合計額で評価する。
  • 通達205により、回収が不可能または著しく困難と見込まれる金額は元本の価額に算入しない。ただし取引停止処分、更生・再生・破産手続の開始決定、事業の廃止または6か月以上の休業など、列挙された客観的な事由が前提となる。
  • 電話加入権については、国税庁の質疑応答事例により、令和3年(2021年)1月1日以後に相続・遺贈により取得したものは、通達128《評価単位》の定めに基づき、一括して評価する家庭用財産等に含めることとして差し支えないものとされている。原則としては一般動産として売買実例価額・精通者意見価格等を参酌して評価するという総論が残されており、義務ではなく許容の取扱いである(令和2年12月31日以前に取得したものは別途の取扱い)。

参考文献(一次情報)

※本記事は一般的な解説を目的としたものであり、個別の事情により取り扱いが異なる場合がございます。財産の評価は、その財産の性質、契約や規約の内容、市場の状況によって結論が変わることがあり、とくにゴルフ会員権の類型判定、貸付金債権の回収可能性の判断、骨とう品の価額の算定は、個別の検討を要する論点です。通達の内容および取扱いは改正される可能性があります。本記事の内容は2026年8月時点の情報に基づいていますが、実際の申告にあたっては、必ず国税庁の一次情報で最新の内容をご確認のうえ、税理士などの専門家にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害等について、当センターは責任を負いかねます。

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