「受取人が、亡くなった母のままなのです」

ご相続の手続きをお手伝いしていて、いちばん多く出会う「たった一行の見落とし」が、これです。

[ご相談で、実際にうかがったお話]
「父の保険証券を見ましたら、受取人が母になっていました。母は五年前に亡くなっております。父は、そのまま何もしていなかったようです。この保険金は、どうなるのでしょうか。私には弟がおりますが、弟とは十年以上、行き来がありません」
――受取人の欄は、ご本人が変えないかぎり、何十年でもそのまま残ります。離婚なさっても、受取人が亡くなっても、自動では変わりません。

なぜ、この一行がそれほど重いのか

死亡保険金は、遺産分割の対象になりません。受取人として指定された方が、ご自分の固有の財産として受け取ります。

預貯金・不動産などの遺産死亡保険金
誰のものになるか相続人が承継します受取人が固有の権利として取得します
遺産分割協議必要です原則として対象になりません
相続放棄したら受け取れません原則として受け取れます
相続税課税対象ですみなし相続財産として課税対象です

「遺言を書いたから大丈夫」ではありません

ご自宅で遺言を用意なさった方が、保険の受取人はそのままにしておられることが、たいへん多くございます。
保険金は、保険契約にしたがって受取人に支払われます。遺言に「保険金は長男に」と書いても、それだけで受取人が変わるとはかぎりません。後述するとおり、遺言による受取人の変更には、法律上の要件があります。
遺言を書いたら、必ず保険証券の受取人欄も確認してください。

受取人は、いつでも変更できます――保険法43条と被保険者の同意(45条)

保険法43条――保険事故が発生するまでは、いつでも

保険法43条1項は、保険契約者は、保険事故が発生するまでは、保険金受取人の変更をすることができると定めています。

条文内容
保険法43条1項保険契約者は、保険事故が発生するまでは、保険金受取人の変更をすることができる
保険法43条2項保険金受取人の変更は、保険者に対する意思表示によってする
保険法43条3項前項の意思表示は、その通知が保険者に到達したときは、当該通知を発した時にさかのぼって効力を生ずる。ただし、その到達前に行われた保険給付の効力を妨げない
[「保険契約者」が変更する、という点にご注意ください]
受取人を変更できるのは、保険契約者です。被保険者でも、受取人でもありません。
たとえば、契約者が夫、被保険者が夫、受取人が妻という契約であれば、変更するのは夫です。ところが、契約者が父、被保険者が子、受取人が父といった契約では、変更できるのは父です。ご自身の保険だと思っていたものが、契約者はご親族だったということは、実務ではしばしばございます。まず、保険証券で契約者・被保険者・受取人の三者をご確認ください。

保険法45条――被保険者の同意がなければ、効力を生じません

死亡保険契約については、保険法45条が、保険金受取人の変更は、被保険者の同意がなければ、その効力を生じないと定めています。

ここは、実務でつまずきやすいところです

契約者と被保険者が同じ方であれば、問題は起こりません。けれども、契約者と被保険者が別の方である契約では、被保険者の同意が要ります。
被保険者が認知症などで判断能力を欠く状態になっておられる場合、この同意が得られず、受取人の変更ができなくなることがあります。
「いつでも変えられる」とは言っても、変えられなくなる日は来ます。お元気なうちに、ご確認ください。

遺言でも変更できます――保険法44条と、保険者への通知

保険法44条1項

保険法44条1項は、保険金受取人の変更は、遺言によっても、することができると定めています。

つまり、生前に保険会社へ届け出るという方法だけでなく、遺言に書いておくという方法も、法律上は認められているということです。

ただし、44条2項があります

保険法44条2項は、次のように定めています。

遺言による保険金受取人の変更は、
その遺言が効力を生じた後、
保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければ、
これをもって保険者に対抗することができない
保険法44条2項(e-Gov法令検索より)

「遺言に書いたから安心」ではありません

遺言で受取人を変更しても、保険会社に通知が届くまでは、保険会社に対して主張できません。そして、その通知をするのは保険契約者の相続人です。
つまり、遺言の存在を知らない相続人が、旧受取人として先に保険金を請求してしまうという事態が起こり得ます。
遺言で受取人を変更なさるのであれば、遺言執行者を定め、保険証券の所在と保険会社名を遺言書やエンディングノートに明記なさってください。そのうえで、可能であれば、生前に保険会社の所定の手続きで変更しておかれることを、私どもは強くおすすめしております。

[古い契約には、保険法44条・46条が適用されないことがあります]
保険法は2010年(平成22年)4月1日に施行されました。同法の附則2条は、この法律の規定は、施行の日以後に締結された保険契約について適用すると定めています。
施行日より前に締結された生命保険契約にも適用される規定は、附則4条に列挙されていますが、そこに44条(遺言による変更)と46条(受取人の死亡)は含まれていません。
つまり、2010年3月31日以前にご契約になった保険については、これらの規定がそのままは当てはまらないことになります。古い契約の取り扱いは、約款の定めと従前の法律(旧商法)によることになりますので、必ず保険会社および弁護士にご確認ください。

受取人が先に亡くなっていたら――保険法46条、相続人の全員が受取人に

保険法46条は、一行の規定です

保険金受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、
その相続人の全員が保険金受取人となる
保険法46条(e-Gov法令検索より)

ここで「その相続人」とは、亡くなった受取人の相続人のことです。被保険者の相続人ではありません。ここを取り違えると、結論が変わってしまいます。

具体的に見てみます

[整理のための設例です]
契約者・被保険者はお父さま、受取人はお母さまと指定されていました。
お母さまが先にお亡くなりになり、お父さまは受取人を変更しないまま、その後にお亡くなりになりました。
――この場合、保険法46条により、お母さまの相続人の全員が保険金受取人となります。お母さまの相続人がお父さまとお子さま2人であったとすれば、お父さまも「相続人」に含まれるという点に注意が必要です。
実際に誰が受取人となるかは、亡くなった順序、戸籍上の相続人の範囲、約款の定めによって変わります。必ず保険会社および弁護士にご確認ください。

疎遠なご親族が受取人になることがあります

受取人が先に亡くなっていた場合、その方の相続人が受取人になります。受取人がご兄弟やご両親であった場合には、そのご家族――ご本人からすれば、疎遠なご親族――が受取人になるということが起こり得ます。
「そんなつもりはなかった」では、変えられません。受取人がお亡くなりになったら、その時点で必ず変更手続きをなさってください。

均等か、法定相続分か――最判平成5年9月7日と最判平成6年7月18日

似ているようで、まったく違う二つの場面

「相続人が受取人になる」という点では同じに見えても、そこに至る筋道が違えば、取得割合も違います。

場面誰が受取人か取得割合
契約で受取人を「相続人」と指定していた被保険者の死亡時における相続人原則として法定相続分の割合(最判平成6年7月18日)
指定受取人が保険事故発生前に死亡したその受取人の相続人の全員(保険法46条)原則として均等の割合(最判平成5年9月7日)

最判平成6年7月18日――「相続人」指定は法定相続分

保険契約で受取人を単に「相続人」と指定した場合について、最高裁平成6年7月18日判決(民集48巻5号1233頁)は、特段の事情のないかぎり、その指定には、相続人が保険金を受け取るべき権利の割合を「相続分の割合」によるとする旨の指定も含まれ、各保険金受取人の有する権利の割合は相続分の割合になるという趣旨の判断を示しました。判決の文言は「相続分の割合」であり、本記事で以下「法定相続分」と記しているのは、これを分かりやすく言い換えたものです。

受取人=「相続人」と指定
↓
配偶者と子2人なら
配偶者 1/2、子 各1/4
最判平成6年7月18日の考え方にもとづく整理です。実際の割合は約款の定めと個別の事実関係によります

最判平成5年9月7日――46条の場面では均等

これに対して、指定されていた受取人が先に亡くなり、その相続人が受取人となる場面について、最高裁平成5年9月7日判決(民集47巻7号4740頁)は、各人の取得割合は相続分ではなく、原則として均等であるという趣旨の判断を示しました。

この判決は旧商法676条2項のもとでの事案で、保険法46条は、その考え方を明文化したものと位置づけられます。結論の根拠は、保険金請求権を相続によって承継するのではなく、法律の規定によって、受取人の相続人が新たに受取人となるという構造にあります。数人が受取人となるときは、民法427条の原則により、各自が平等の割合で権利を有すると整理されています。

この違いが、実際の金額を大きく変えます

たとえば3,000万円の死亡保険金があったとして、配偶者と子2人が受取人となる場面を考えます。
法定相続分によるなら、配偶者1,500万円、子各750万円。均等によるなら、それぞれ1,000万円ずつ。500万円の差が生じます。
どちらの筋道でその方が受取人になったのかを取り違えると、支払われるべき金額が変わってしまいます。実際の請求にあたっては、必ず保険会社および弁護士にご確認ください。

ご相談事例
※以下は、実際のご相談を参考に構成した架空の事例です。特定の個人・団体とは関係ありません。

「母のままになっていた受取人」――Tさまご兄弟のご相談

Tさま(50代・男性)は、お父さま(80代)を亡くされ、保険証券を手にご相談にお越しになりました。

ご相談の入口は、「父の生命保険の受取人が、母のままになっていました。母は七年前に亡くなっております。この保険金は、私が受け取ってよいのでしょうか」というお話でした。

私はまず、「保険証券のご契約日は、いつになっておりますか」とお尋ねしました。Tさまは、「平成十年、と書いてあります」とお答えになりました。

私は、「そこを確認させていただいたのには、理由があります」と申し上げました。「保険法という法律は平成22年4月に施行されたのですが、それより前のご契約については、当てはまる規定が違ってくることがあるのです。ですから、この件は、まず保険会社に約款の取り扱いをお尋ねいただく必要があります」と。

Tさまは、少し意外そうなご様子で、「法律で決まっているのではないのですか」とおっしゃいました。

私は、「決まってはいるのですが、いつのご契約かによって、どの決まりが当てはまるかが変わるのです」とご説明しました。そのうえで、「一般論として申し上げれば」と続けました。「受取人が先に亡くなっている場合には、その亡くなった受取人の相続人が、受取人になるという考え方が採られています。この場合の取り分は、法定相続分ではなく、頭割りとされるのが原則です」と。

Tさまは、「頭割り、ですか。すると、弟と半分ずつということになりますか」とお尋ねになりました。

私は、「お母さまがお亡くなりになった時点で、お母さまの相続人が誰であったかによります」と申し上げました。「お父さまがご存命でしたから、お父さまも含まれます。そのお父さまが後にお亡くなりになった――となると、そこからさらに整理が必要になります。ここは、戸籍をそろえたうえで、弁護士に見ていただくべきところです」と。

Tさまは、しばらく考えてから、「弟とは、十年以上、行き来がありません。連絡を取らなければ、受け取れないということですね」とおっしゃいました。

私は、「そうなります」とお答えし、こう申し上げました。「もしお父さまが、五年前にお母さまが亡くなられた時点で受取人を変えておられたら、この手間は、まったく生じませんでした」と。

Tさまは、深くうなずかれました。そして、「私も、自分の保険を確かめます」とおっしゃいました。

後日うかがったところでは、Tさまは戸籍を取り寄せたうえで保険会社と弁護士に相談され、ご自身とご家族の保険についても、受取人の記載をすべて確認なさったとのことでした。

※上記は一般的な整理であり、実際の取り扱いは契約の締結時期・約款の定め・個別の事情により異なります。保険金の帰属については必ず保険会社および弁護士に、課税関係については必ず税理士にご確認ください。

死亡保険金は遺産ではありません――最判昭和40年2月2日と相続放棄

受取人固有の財産である、という原則

最高裁昭和40年2月2日判決(民集19巻1号1頁)は、受取人を「被保険者死亡の場合はその相続人」と指定した事案について、保険金請求権は保険契約の効力発生と同時に相続人たるべき者の固有財産となり、被保険者の遺産から離脱しているという趣旨の判断を示しました。

この原則から、実務上、次のような帰結が導かれます。

  1. 遺産分割の対象になりません受取人が指定されている死亡保険金は、原則として遺産分割協議の対象外です。相続人全員の同意がなくても、受取人が単独で請求できます。
  2. 相続放棄をしても受け取れます相続放棄をした方であっても、受取人として指定されていれば、死亡保険金は原則として受け取れます。相続財産ではないからです。
  3. 被相続人の債権者は、原則として保険金に手を出せません相続財産ではありませんから、被相続人の債務の引当てにはならないのが原則です。

相続放棄をした方は、相続税の非課税枠が使えません

相続放棄をしても保険金は受け取れます。しかし、相続税の非課税枠(500万円×法定相続人の数)は、「相続人が取得した保険金」についての規定です。相続放棄をした方は相続人ではありませんから、この非課税枠を使うことはできません。
ややこしいことに、非課税枠を計算するときの「法定相続人の数」には、相続放棄をした人も、放棄がなかったものとして数えます。「枠の計算には入るが、その方自身は枠を使えない」という関係です。
相続放棄を検討されている場合は、保険金の課税関係もあわせて、必ず税理士にご確認ください。相続放棄そのものについては相続放棄の手続きと3か月の熟慮期間、知らないと損をする落とし穴もご覧ください。

それでも持戻される場合があります――最決平成16年10月29日と、相続税の扱い

「著しい不公平」があるとき

死亡保険金が受取人固有の財産であるという原則を確認したうえで、最高裁平成16年10月29日決定(民集58巻7号1979頁)は、保険金受取人である相続人とほかの共同相続人との間に生ずる不公平が、到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情があるときは、特別受益に準じて持戻しの対象となるという趣旨の判断を示しました。

考慮される事情(判例が挙げるもの)
保険金の額
この額の遺産の総額に対する比率
同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなど、保険金受取人である相続人およびほかの共同相続人と被相続人との関係
各相続人の生活実態
その他の諸般の事情
[「何割を超えたら持戻し」という基準はありません]
よく「遺産の何割を超えたら持戻される」という言い方を目にしますが、最高裁は、そのような数値基準を示していません。あくまで諸般の事情を総合考慮して、著しい不公平があるかどうかで判断されます。
「この金額なら大丈夫」という安全圏はございません。保険を使った相続の設計をなさる際は、必ず弁護士にご相談ください。特別受益そのものについては特別受益と寄与分とは、生前贈与や介護の貢献を遺産分割で公平に調整するしくみを完全ガイドもご覧ください。

相続税では、はっきり課税されます

民法上は遺産ではなくても、相続税では課税されます。被相続人が保険料を負担していた死亡保険金は、相続税法3条1項1号により、相続または遺贈により取得したものとみなされます(みなし相続財産)。

保険金の非課税限度額
= 500万円 × 法定相続人の数
相続税法12条1項6号(現行条文。号の番号は法改正により変動することがあります)
受取人非課税枠(500万円×法定相続人の数)相続税額の2割加算
配偶者・子など相続人使えます対象になりません
相続放棄をした方使えません(相続人ではないため)個別の判定によります
孫・兄弟姉妹・内縁の方など使えません(相続人でない場合)対象になり得ます(相続税法18条)
[契約の形によって、税目そのものが変わります]
死亡保険金の課税関係は、契約者(保険料の負担者)・被保険者・受取人が誰かによって、相続税・所得税・贈与税のいずれかに分かれます。
「保険金だから相続税」と決めてかからないでください。とくに、保険料を負担していた方と契約者の名義が違う場合には、思わぬ課税が生じ得ます。必ず税理士にご確認ください。
非課税枠の考え方は生命保険を使った相続対策、非課税枠「500万円×法定相続人」の正しい活かし方、非課税財産全体の整理は相続税の非課税財産とは――相続税法12条が定める7つ、お墓と仏壇、500万円×法定相続人の数、申告期限までの寄附を完全ガイドもあわせてご覧ください。

請求の期限――保険法95条の3年

保険法95条1項は、保険給付を請求する権利は、これを行使することができる時から3年間行使しないときは、時効によって消滅すると定めています。

「証券が見つからないので、そのままにしている」というお話をうかがうことがありますが、時間は流れています。お心当たりがある場合は、生命保険協会の「生命保険契約照会制度」という調べ方もございます。早めに保険会社へご確認ください。

― 私たちから一言 ―

「もっとも安く、もっとも確実な相続対策」は、受取人欄の確認です

相続のご相談をお受けするなかで、私どもがいちばん費用対効果が高いと感じている対策があります。

保険証券を出してきて、受取人の欄を見ること。それだけです。

費用はかかりません。専門家に頼む必要もありません。五分で終わります。それでいて、この五分を惜しんだために、後になって何十万円もの費用と、何か月もの時間と、ご家族どうしの気まずさが生じる――そういう場面を、私どもは何度も見てまいりました。

とくに申し上げたいのは、受取人がお亡くなりになったときです。

お連れ合いを亡くされた直後というのは、ご葬儀があり、年金の手続きがあり、名義変更があり、とにかく気が回らないものです。「自分の保険の受取人」まで手が届かないのは、当然のことだと思います。

ですから私どもは、一周忌のころに、一度だけ、保険証券を確かめてくださいと申し上げております。ちょうど、いろいろな手続きが一段落するころです。

もうひとつ、申し上げていることがあります。離婚なさった方は、その日のうちに確かめてくださいということです。受取人が元のお連れ合いのままになっているという例は、決して珍しくありません。

遺言も、家族信託も、たしかに大切な備えです。けれども、その前に――いま、お手元の保険証券に書かれている一行が、本当にご自分のお気持ちどおりになっているか。まず、そこからご確認ください。

一般社団法人相続なんでも相談センター 代表理事 宮野 宏樹

生命保険の受取人でよくある7つの落とし穴

  1. 受取人が亡くなったのに、変更しないまま放置する 受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となります(保険法46条)。その結果、疎遠なご親族が受取人に加わることがあり得ます。受取人がお亡くなりになったら、その時点で必ず変更手続きをなさってください。
  2. 離婚したのに、受取人が元の配偶者のまま 離婚しても、受取人の記載は自動では変わりません。保険会社は、原則として保険契約の記載にしたがって支払います。離婚が成立したら、その日のうちに保険証券をご確認ください。
  3. 「遺言に書いたから、受取人も変わる」と考える 遺言による受取人の変更は法律上できますが(保険法44条1項)、遺言の効力が生じた後に、保険契約者の相続人が保険者に通知しなければ、保険者に対抗できません(同条2項)。さらに、2010年(平成22年)4月1日より前に締結された契約については、保険法の規定がそのままは適用されないことがあります(保険法附則2条・4条)。できるかぎり生前に保険会社の所定の手続きで変更なさってください。
  4. 受取人を変更しようとしたが、被保険者の同意が得られない 死亡保険契約の受取人の変更は、被保険者の同意がなければ効力を生じません(保険法45条)。契約者と被保険者が別の方である契約で、被保険者が判断能力を欠く状態になっていると、変更ができなくなることがあります。お元気なうちにご確認ください。
  5. 「相続人」と指定した場合の取り分を、均等だと思い込む 契約で受取人を「相続人」と指定した場合は、特段の事情のないかぎり法定相続分の割合によるとされています(最判平成6年7月18日)。これに対して、指定受取人が先に死亡し、その相続人が受取人となる場合は、原則として均等とされています(最判平成5年9月7日)。筋道が違えば、割合も違います。必ず保険会社および弁護士にご確認ください。
  6. 相続放棄をすれば非課税枠も使える、と考える 相続放棄をしても保険金は原則として受け取れますが、非課税枠(500万円×法定相続人の数)は「相続人が取得した保険金」についての規定(相続税法12条1項6号)ですから、相続放棄をした方は使えません。一方で、枠を計算するときの「法定相続人の数」には、放棄がなかったものとして数えます。混同なさらないでください。
  7. 「保険金は遺産ではないから、いくら渡しても問題ない」と考える 死亡保険金は受取人固有の財産であるのが原則ですが(最判昭和40年2月2日)、ほかの共同相続人との不公平が到底是認できないほど著しいと評価すべき特段の事情があるときは、特別受益に準じて持戻しの対象となり得ます(最決平成16年10月29日)。「何割までなら安全」という基準は示されていません。保険を使った承継の設計は、必ず弁護士および税理士にご相談ください。

この記事のまとめ

  • 保険契約者は、保険事故が発生するまでは、いつでも保険金受取人を変更できます(保険法43条1項)。変更は保険者に対する意思表示によって行います(同条2項)。
  • その意思表示は、通知が保険者に到達したときは、通知を発した時にさかのぼって効力を生じますが、到達前に行われた保険給付の効力は妨げられません(保険法43条3項)。
  • 死亡保険契約の受取人の変更は、被保険者の同意がなければ効力を生じません(保険法45条)。
  • 受取人の変更は遺言によってもできます(保険法44条1項)が、遺言の効力が生じた後に保険契約者の相続人が保険者に通知しなければ、保険者に対抗できません(同条2項)。
  • 保険法は2010年(平成22年)4月1日施行で、その規定は原則として施行日以後に締結された保険契約について適用されます(附則2条)。44条・46条は、施行日前の生命保険契約にも適用される規定を列挙した附則4条には含まれていません。
  • 受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となります(保険法46条)。ここでいう相続人は、亡くなった受取人の相続人です。
  • この場合の取得割合は、原則として均等とされています(最判平成5年9月7日)。
  • これに対し、契約で受取人を「相続人」と指定していた場合は、特段の事情のないかぎり法定相続分の割合によるとされています(最判平成6年7月18日)。
  • 死亡保険金は受取人固有の財産であり、相続によって承継取得するものではありません(最判昭和40年2月2日)。原則として遺産分割の対象にならず、相続放棄をしても受け取れます。
  • ただし、不公平が到底是認できないほど著しいと評価すべき特段の事情があるときは、特別受益に準じて持戻しの対象となり得ます(最決平成16年10月29日)。数値基準は示されていません。
  • 相続税では、被相続人が保険料を負担していた死亡保険金はみなし相続財産(相続税法3条1項1号)として課税されます。
  • 非課税限度額は500万円×法定相続人の数(相続税法12条1項6号)です。相続放棄をした方や、相続人でない受取人は、この非課税枠を使えません。枠の計算上の「法定相続人の数」には、放棄がなかったものとして数えます。
  • 保険給付を請求する権利は、行使できる時から3年で時効消滅します(保険法95条1項)。心当たりがある場合は、生命保険協会の生命保険契約照会制度もご活用ください。
  • 保険金の帰属や約款の解釈については必ず保険会社および弁護士に、課税関係については必ず税理士にご確認ください。最新の法令はe-Gov法令検索、税務の取り扱いは国税庁のホームページでご確認ください。

参考文献(一次情報)

※本記事は一般的な解説を目的としたものであり、個別の事情により取り扱いが異なる場合がございます。本記事は税務上または法律上の助言を提供するものではなく、特定の方が保険金を受け取れること、その取得割合、税額を保証するものではありません。保険金の帰属、受取人の変更の効力、取得割合、特別受益に準じた持戻しの可否、課税関係は、保険契約の締結時期・約款の定め・個別の事実関係によって結論が変わり得る事項です。とくに、保険法(2010年4月1日施行)より前に締結された保険契約については、同法附則により適用される規定が異なりますので、必ず保険会社の約款をご確認ください。本文中の設例や金額の例示は、制度の骨格をご理解いただくために単純化したものであり、実際の支払額や税額を示すものではありません。記載した法令名・条項・判例・数値は執筆時点で確認したものですが、法令・通達・約款・実務の取り扱いは変更される可能性があります。条文の号の番号は法改正により繰り上がり・繰り下がりが生じることがあります。本記事の内容は2026年9月時点の情報に基づいていますが、実際にご検討される際は、必ずe-Gov法令検索、国税庁などの一次情報と、ご契約の保険会社の約款で最新の内容をご確認のうえ、保険金の帰属や約款の解釈については必ず保険会社および弁護士に、課税関係については必ず税理士に、登記については必ず司法書士にご確認ください。本記事の情報を利用したことによる損害等について、当センターは責任を負いかねます。

「保険証券を見たのですが、これで合っているのでしょうか」――そのご確認からで結構です

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