同性パートナーは法定相続人にならない――民法の「配偶者」は法律婚の相手

民法は、被相続人の配偶者は常に相続人となると定めています(民法890条)。ここでいう「配偶者」は、婚姻届を出して法律上の夫婦となった相手を指します。現行法のもとでは同性カップルは婚姻届を受理されないため、同性パートナーは民法上の「配偶者」に当たらず、法定相続人になりません。

法定相続人となるのは、配偶者のほかは、子(第1順位)、子がいなければ直系尊属(父母など。第2順位)、それもいなければ兄弟姉妹(第3順位)です(民法887条・889条)。どれだけ長く一緒に暮らし、生計を共にしていても、パートナーはこの順位のどこにも入らないのが現在のルールです。

[内縁・事実婚の異性カップルと同じ立場]
婚姻届を出していない異性の事実婚カップルも、同じく法定相続人にはなりません。借家権の承継(借地借家法36条)や特別縁故者(民法958条の2)など、事実婚カップルに関する論点は内縁・事実婚パートナーの相続の記事で詳しく解説しています。本記事では、同性カップルならではの事情に焦点を当てます。

パートナーシップ制度と同性婚訴訟の現状――2026年9月時点で相続上の効力はない

自治体のパートナーシップ制度

多くの自治体が、同性カップルなどの関係を公的に認めるパートナーシップ宣誓(証明)制度を設けています。公営住宅への入居や、病院での面会・説明などの場面で活用されることがあります。

しかし、これは自治体の要綱・条例にもとづく制度であり、民法上の婚姻とは別のものです。自治体自身も、相続などの法的な効力は生じないと案内しています。「宣誓したから相続できる」ということにはなりません。

同性婚をめぐる裁判の動き

同性どうしの婚姻を認めていない現行の民法・戸籍法の規定について、全国で訴訟が起こされ、高等裁判所では違憲とする判断が相次ぐ一方、合憲とした判断もあります。最高裁判所は2026年3月25日、これらの訴訟を15人の裁判官全員で審理する大法廷に回付したと報じられていますが、2026年9月時点で判断はまだ示されておらず、審理が続いています。

「いずれ法律が変わるから」と待たない

仮に今後、最高裁の判断や立法によって状況が変わる可能性があるとしても、いつ・どのような内容で変わるかは分かりません。また、変わる前に相続が起きれば、その時点の法律で処理されます。制度の行方を見守りつつも、今の法律を前提に、今できる備えをしておくことが大切です。最新の状況は、報道や法務省の情報でご確認ください。

個別の法律では、同性パートナーが認められた例も

一方で、最高裁判所第三小法廷は2024年3月26日、犯罪被害者等給付金の支給を受けられる遺族である「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に、同性パートナーも該当し得ると判断しました。ただし、これはその法律の遺族給付金についての判断であり、民法上の相続権を認めたものではありません。制度ごとに、条文の文言や趣旨に照らして個別に判断されている段階です。

何もしないと財産はどこへ行くか――親・兄弟姉妹、いなければ国庫へ

遺言などの備えをしないまま亡くなると、財産は法定相続人に引き継がれます。同性カップルの場合、法律上の子がいないことが多いため、次の流れになるのが典型です。

亡くなった方の家族の状況財産を引き継ぐ人
父母などが存命父母など(直系尊属)がすべて相続
父母などが亡くなっていて、兄弟姉妹がいる兄弟姉妹(亡くなっていれば甥・姪)がすべて相続
相続人が誰もいない相続財産清算人による清算を経て、国庫に帰属(民法959条)。ただし特別縁故者への財産分与の可能性あり

つまり、二人で暮らした自宅であっても、名義が亡くなった方にあれば、パートナーは何も引き継げないおそれがあります。相続人となった親族から自宅の明け渡しを求められる、預金や遺品の整理に関われないといった事態も起こり得ます。

特別縁故者は「最後の手段」

相続人が誰もいない場合、被相続人と生計を同じくしていた者などは、家庭裁判所に請求して、清算後に残った財産の全部または一部の分与を受けられる可能性があります(民法958条の2第1項)。請求は、相続人捜索の公告期間(6か月以上)の満了後3か月以内にしなければなりません(同条2項・952条2項)。

ただし、相続人(父母などの直系尊属、兄弟姉妹、兄弟姉妹が亡くなっている場合の甥・姪)が1人でもいれば使えません(全員が相続放棄した場合を除く)。分与されるかどうか、どれだけ分与されるかも家庭裁判所の判断で、手続きに時間もかかります。相続人がいない場合の流れは相続人がいないときの記事で解説しています。

遺言で遺す――公正証書遺言・遺言執行者・遺留分への配慮

法定相続人でない人に財産を遺す、もっとも基本的で有効な方法が遺言です。遺言者は、遺言によって財産の全部または一部を処分(遺贈)することができます(民法964条)。

公正証書遺言をおすすめする理由

同性パートナーへの遺贈は、親族にとって想定外であることも少なくありません。自筆証書遺言では、形式の不備や「本人が書いたのか」「判断能力はあったのか」をめぐって争いになるリスクがあります。公証人が関与する公正証書遺言は、方式の不備による無効のリスクが低く、原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配も小さい方法です(公正証書遺言の記事)。

遺言執行者をパートナー(または専門家)に

遺言者は、遺言で遺言執行者を指定できます(民法1006条1項)。遺言執行者がいれば、預金の解約や不動産の登記などを遺言執行者が中心となって進められるため、パートナーが親族と一つひとつ交渉しなくてすみます。関係性によっては、弁護士や司法書士などの専門家を指定しておくのも一つの方法です。

親が存命なら「遺留分」に配慮する

兄弟姉妹以外の相続人には遺留分があります。直系尊属(父母など)のみが相続人である場合、遺留分は遺留分を算定するための財産の価額の3分の1です(民法1042条1項1号)。一方、兄弟姉妹には遺留分がありません。

相続人が父母のみ → 遺留分は全体の3分の1
相続人が兄弟姉妹のみ → 遺留分はなし
→ 兄弟姉妹が相続人なら、遺言で全財産をパートナーに遺すことも可能
民法 1042条1項

親が存命の場合に全財産をパートナーに遺贈すると、親から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。自宅はパートナーに、預金の一部は親に、というように遺留分に配慮した配分にしておくと、争いを避けやすくなります(遺留分の記事)。

「包括遺贈」と「特定遺贈」の違い

「全財産の2分の1を遺贈する」のように割合で遺すのが包括遺贈、「自宅マンションを遺贈する」のように特定の財産を遺すのが特定遺贈です。包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するため(民法990条)、借金も割合に応じて引き継ぐことになり、遺産分割協議にも加わります。どちらがよいかは、財産と親族関係によって変わります。

遺言以外の備え――生命保険の受取人・祭祀承継者の指定・住まいの名義

生命保険の受取人にパートナーを指定する

死亡保険金は、受取人固有の財産として遺産分割を経ずに受取人に支払われるのが原則で、すぐに使えるお金を遺す手段として有効です。近年は、同性パートナーを死亡保険金の受取人に指定できる保険会社も増えています。ただし、パートナーシップ証明書や同居を示す書類の提出を求めるなど、取扱いは保険会社ごとに異なります。加入中の保険の受取人を変更したい場合も、まず保険会社に確認しましょう(保険金受取人の記事)。

お墓・遺骨のことは「祭祀承継者の指定」で

お墓や仏壇などの祭祀財産は、相続財産とは別に、祖先の祭祀を主宰すべき者が承継します。被相続人の指定があれば、その指定された人が承継します(民法897条1項)。指定は遺言でもできるため、パートナーを祭祀主宰者に指定しておくと、遺骨の扱いや供養をめぐる親族との対立を避けやすくなります(祭祀財産の承継の記事)。

住まいの名義と費用負担を確認する

二人で購入した自宅でも、登記の名義が一人だけになっていることがあります。共有名義にしておけば、少なくともパートナー自身の持分はパートナーのものとして残ります。ただし、名義と実際の資金負担が一致しないと贈与税の問題が生じることがあるため、名義を変える前に税理士に相談しましょう。賃貸住まいの場合、相続人がいないときの借家権の承継(借地借家法36条)が同性パートナーにも及ぶかは、確立した判断がない点にも注意が必要です。

相続税の注意点――2割加算、配偶者の税額軽減・生命保険金の非課税枠が使えない

遺言で財産を遺せても、相続税の面では法律上の配偶者より不利になります。主な違いは次のとおりです。

項目法律上の配偶者同性パートナー(受遺者)
相続税額の2割加算(相続税法18条)対象外対象(一親等の血族・配偶者以外のため)
配偶者の税額軽減(同法19条の2)1億6,000万円と法定相続分相当額のいずれか多い金額まで税額がかからない使えない
基礎控除の「法定相続人の数」(同法15条)1人として数える数えない
生命保険金・死亡退職金の非課税枠(同法12条1項6号・7号)500万円×法定相続人の数の枠を使える使えない(非課税枠は相続人が取得した保険金等が対象)
債務・葬式費用の控除(同法13条1項)控除できる包括受遺者なら控除できるが、特定受遺者はできない

とくに見落としやすいのが葬式費用です。債務控除は、相続人と包括受遺者に限られます(相続税法13条1項)。「自宅マンションを遺贈する」という特定遺贈を受けたパートナーが葬儀費用を負担しても、その費用を課税価格から差し引けないことになります。

また、特別縁故者として財産分与を受けた場合も、遺贈により取得したものとみなされて相続税の対象になります(相続税法4条1項)。相続税が実際にかかるかどうかは、遺産総額や基礎控除との関係によります。2割加算のしくみは相続税の2割加算の記事をご覧ください。

[生前贈与を使う場合も]
生前に財産を移す方法として贈与もありますが、贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)は法律上の配偶者が対象で、同性パートナーは使えません。暦年贈与の年110万円の基礎控除などを使う場合も、贈与契約書を作り、実際に財産を渡すなど、贈与の実態を整えておくことが大切です。

養子縁組という選択肢と、生前の備え(任意後見・死後事務委任・パートナーシップ契約)

養子縁組で「法律上の親子」になる方法

同性カップルのなかには、年長の一方が年少の一方を養子にすることで法律上の親子となり、相続権を確保する方法を選ぶ方もいます。20歳に達した者は養子をすることができ(民法792条)、年長者を養子にすることはできません(民法793条)。養子は縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得するため(民法809条)、第1順位の相続人となり、相続税の2割加算の対象からも外れます。

養子縁組には、見過ごせない注意点がある

①養親子の間では、離縁して親族関係が終了した後でも婚姻をすることができません(民法736条)。将来、同性婚が法制化されても、二人は結婚できない可能性があります。②縁組をする意思がないときは縁組は無効とされるため(民法802条1号)、相続をめぐって親族から縁組の有効性を争われるおそれがあります。③養子は養親の親族とも親族関係を持つことになります(民法727条)。本当に養子縁組がふさわしいかは、弁護士などの専門家と慎重にご検討ください。

生きているあいだの備えも一緒に

相続の前には、病気や判断能力の低下という場面があります。法律上の家族でないパートナーは、医療・介護・財産管理の場面で「家族ではない」と扱われることがあります。次のような書面を組み合わせて備えておくと安心です。

  1. 任意後見契約判断能力が低下したときに、パートナーを任意後見人として財産管理や契約を任せられるよう、公正証書で契約しておきます(成年後見制度の記事)。
  2. 死後事務委任契約葬儀・納骨・行政手続き・遺品整理などを、パートナーに正式に委任しておきます(死後事務委任契約の記事)。
  3. パートナーシップ合意契約(公正証書)共同生活の費用負担、財産の帰属、医療に関する意思の尊重などを契約書として公正証書にしておく方法です。相続権を生むものではありませんが、二人の関係と意思を証明する書面になります。
  4. 医療に関する意思表示緊急時の連絡先や、病状説明・面会をパートナーに認めてほしいという意思を書面にしておくことも役立ちます。

同性パートナーの相続でよくある7つの落とし穴

  1. パートナーシップ宣誓をしたから相続できると思う 自治体の制度には相続の法的効力はありません。遺言などの備えが別に必要です。
  2. 「長く一緒に暮らしていれば認められる」と思う 同居年数にかかわらず、法定相続人にはなりません。親や兄弟姉妹が相続人になります。
  3. 自筆の遺言を書いて安心してしまう 親族との争いに備えるなら、公正証書遺言と遺言執行者の指定がおすすめです。
  4. 親の遺留分を考えずに全財産を遺贈する 父母のみが相続人なら、全体の3分の1の遺留分があります。兄弟姉妹には遺留分はありません。
  5. 相続税を配偶者と同じように考える 2割加算の対象となり、配偶者の税額軽減・生命保険金の非課税枠は使えません。
  6. 特定遺贈なのに葬儀費用を控除できると思う 債務控除は相続人と包括受遺者に限られます。
  7. 養子縁組のデメリットを知らずに進める 養親子の間では、離縁しても婚姻ができません。縁組の有効性を争われるおそれもあります。
ご相談事例
※以下は、実際のご相談を参考に構成した架空の事例です。特定の個人・団体とは関係ありません。

「二人の家を、パートナーに遺したい」――Mさまのご相談

Mさま(60代)は、同性のパートナーと25年以上一緒に暮らし、数年前には自治体のパートナーシップ宣誓もされました。住んでいるマンションはMさまの単独名義で、「私が先に亡くなったら、パートナーはこの家に住み続けられるのか」と心配されてご相談に来られました。Mさまのご両親はすでに他界され、お兄さまがいらっしゃいます。

私からは、「今のままでは、Mさまの財産はお兄さまが相続することになります。パートナーシップ宣誓には相続の効力がありません。ただ、兄弟姉妹には遺留分がないので、遺言でマンションを含む財産をパートナーに遺すことができます」とお伝えしました。

Mさまは提携の専門家と相談のうえ、パートナーに財産を遺贈する公正証書遺言を作成し、遺言執行者には専門家を指定されました。あわせて、パートナーを祭祀主宰者に指定し、任意後見契約と死後事務委任契約もお二人で結ばれました。相続税の見込み(2割加算を含む)についても税理士に試算してもらったそうです。Mさまは「法律が守ってくれない分を、自分たちで形にできて、ようやく安心できました」とおっしゃっていました。

― 私たちから一言 ―

「書面にしておくこと」が、パートナーを守る

同性カップルの方からのご相談で、いちばん多いのは「自分が先に亡くなったら、パートナーはどうなるのか」というご心配です。現行法では、どれだけ深い信頼関係があっても、パートナーは自動的には何も引き継げません。

一方で、遺言・生命保険の受取人・祭祀承継者の指定・任意後見・死後事務委任といった手段を組み合わせれば、かなりの部分を自分たちで備えることができます。大切なのは、元気なうちに、書面で残しておくことです。

同性婚をめぐる司法や立法の動きは続いていますが、相続はその時点の法律で処理されます。制度の変化を待つのではなく、今の法律を前提に、今できる準備を進めていただければと思います。

私たちは、お二人の状況を伺いながら論点を整理し、必要に応じて弁護士・司法書士・税理士などの専門家におつなぎしております。どうぞお気軽にご相談ください。

一般社団法人相続なんでも相談センター 代表理事 宮野 宏樹

この記事のまとめ

  • 現行法では、同性パートナーは民法上の「配偶者」(民法890条)に当たらず、法定相続人になりません。
  • 自治体のパートナーシップ制度には相続の法的効力はありません。同性婚をめぐる訴訟は続いていますが、2026年9月時点で最高裁の判断は示されていません。
  • 何もしなければ、財産は父母などや兄弟姉妹へ、相続人がいなければ国庫へ。特別縁故者の制度(民法958条の2)は相続人がいない場合に限られます。
  • いちばんの備えは公正証書遺言と遺言執行者の指定。父母のみが相続人なら遺留分は3分の1、兄弟姉妹には遺留分はありません(民法1042条)。
  • 生命保険の受取人指定、祭祀承継者の指定(民法897条1項)、住まいの名義の確認も有効です。
  • 相続税では2割加算の対象となり、配偶者の税額軽減・生命保険金の非課税枠は使えません。特定受遺者は葬式費用を控除できません。
  • 養子縁組で相続権を確保する方法もありますが、離縁後も婚姻できない(民法736条)などの注意点があります。最新の法令は法務省・国税庁・e-Gov法令検索でご確認ください。

参考文献(一次情報)

※本記事は一般的な解説を目的としたものであり、個別の事情により取り扱いが異なる場合がございます。本記事は法律・税務上の助言を提供するものではなく、特定の遺言・契約・養子縁組の有効性や、相続税の課税関係を保証するものではありません。遺言の内容、遺留分、生命保険の受取人指定の可否、養子縁組の適否、相続税額などは、財産の内容や親族関係などの個別の事情によって異なります。同性婚をめぐる訴訟や法制度は今後変わる可能性があります。本文中の条文の引用は、読みやすさのために一部を省略し、要旨として示した箇所があります。本記事の内容は2026年9月時点の情報に基づいていますが、実際にご検討される際は、必ず法務省、国税庁、e-Gov法令検索で最新の内容をご確認のうえ、弁護士・司法書士・税理士などの専門家にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害等について、当センターは責任を負いかねます。

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