「25年一緒に暮らしてきたのに、相続人ではない」という現実
当センターには、こうしたご相談が少なからず寄せられます。「20年以上、夫婦同然に暮らしてきました。家計も一つでしたし、介護もすべて私がしました。それなのに、亡くなった途端、疎遠だったごきょうだいから『この家から出ていってほしい』と言われています」――。
大変申し上げにくいのですが、法律の答えは、残念ながら明快です。婚姻届を出していない内縁の配偶者・事実婚パートナーは、法定相続人にはなりません。どれだけ長く連れ添っても、どれだけ献身的に看護されても、この結論は変わりません。
この記事でもっともお伝えしたいこと
内縁・事実婚の相続は、亡くなってからできることが、極端に少ないという点に最大の特徴があります。法律婚であれば、遺言がなくても法定相続分があり、遺言があっても遺留分があります。しかし内縁の場合、そのどちらもありません。だからこそ、お二人がお元気なうちにどう備えるかが、すべてを決めます。もし今、この記事をご本人やパートナーの方が読んでくださっているのであれば、どうか「いつか」ではなく、お元気なうちに、できるだけ早くご検討ください。
内縁関係とは何か
内縁関係とは、一般に婚姻の届出を欠くものの、社会通念上、夫婦としての共同生活と認められる事実関係をいうと理解されています。裁判例では、当事者間に夫婦の共同生活と認められる事実関係を成立させようとする合意があること、そしてその事実関係が現に存在することが要件として挙げられています。
内縁関係が認められれば、相続以外の場面――たとえば同居・協力・扶助の義務や、不当な破棄に対する損害賠償など――では、婚姻に準じた保護が及ぶと解されている部分もあります。しかし、相続の場面では、この「準じた保護」が及びません。ここが、内縁関係のもっとも過酷な点です。
民法890条の「配偶者」に内縁が含まれない理由
民法890条は、「被相続人の配偶者は、常に相続人となる」と定めています。子や親、兄弟姉妹には順位がありますが、配偶者だけは常に相続人になる――法律婚の配偶者が手厚く保護されている根拠条文です。
問題は、この「配偶者」の意味です。民法739条1項は、婚姻は戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずると定めています。つまり日本の民法は、届出によって婚姻が成立するという考え方(法律婚主義)を採っています。したがって、届出のない内縁関係は890条の「配偶者」に当たらない、という結論になります。
民法890条の「配偶者」=届出をした配偶者
相続人でないと、具体的に何ができないのか
| 場面 | 内縁の配偶者の立場 |
|---|---|
| 法定相続分 | ありません(法定相続分の対象外) |
| 遺留分 | ありません。遺言で全財産を他人に遺されても、遺留分を請求することはできません。 |
| 遺産分割協議 | 参加する立場にありません。協議は相続人だけで行われます。 |
| 預貯金の払戻し | 相続人でないため、相続を理由とする払戻し請求はできません。 |
| 不動産の相続登記 | 相続を原因とする登記の名義人にはなれません。 |
| 配偶者居住権・配偶者短期居住権 | いずれも法律上の配偶者を対象とする制度であり、内縁の配偶者は対象外です。 |
| 遺族年金 | 受給できる場合があります(後述。相続とは別の制度です) |
住まいを守る①借家の場合――借地借家法36条と最判昭和42年2月21日
内縁の配偶者にとって、もっとも切実な問題は住まいです。相続権がない以上、住み続けられるのかどうかは死活問題になります。賃貸住宅にお住まいの場合、法は一定の手当てを用意しています。
相続人がいない場合――借地借家法36条による承継
借地借家法36条1項は、居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継すると定めています。
→ その同居者が賃借人の地位を承継
同条1項ただし書は、相続人なしに死亡したことを知った後1月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでないとしています。滞納賃料などの債務も承継することになるため、承継を望まない場合の逃げ道が用意されているわけです。また同条2項は、建物の賃貸借関係に基づき生じた債権または債務は、承継した者に帰属すると定めています。
相続人がいる場合――判例による「賃借権の援用」
ここで注意が必要なのは、借地借家法36条は「相続人なしに死亡した場合」の規定であるという点です。亡くなった方に子やきょうだいなどの相続人がいる場合、借家権はその相続人が相続しますので、36条の出番はありません。
この場合について、最高裁判所は昭和42年2月21日判決で、建物賃借人と同居していた内縁の妻は、賃借人の死亡後、他に居住している相続人が承継した賃借権を援用して、賃貸人に対しその建物に居住する権利を主張することができるという趣旨を示しました。同判決は、内縁の妻が賃借人となるわけではないため賃料支払義務は負わない、という点にも触れています。なお、事実上の養親子の関係については、最高裁昭和37年12月25日判決があります。
| 状況 | 借家に住み続けられる根拠 |
|---|---|
| 亡くなった方に 相続人がいない | 借地借家法36条1項により、事実上夫婦同様の同居者が賃借人の権利義務を承継します。 |
| 亡くなった方に 相続人がいる | 36条は適用されません。判例上、相続人が承継した賃借権を援用して居住する権利を主張し得るとされています(最判昭和42年2月21日)。 |
「援用」は万能ではありません
相続人の賃借権を援用するという考え方は、あくまで賃貸人からの明渡請求を拒むための理論であり、内縁の配偶者が賃借人そのものになるわけではありません。相続人が賃貸借契約を解約してしまった場合など、具体的な事情によって結論は変わり得ます。また、実際に賃料を誰がどのように支払うのかという問題も残ります。借家にお住まいで内縁関係にある方は、この不安定さを解消するために、後述する生前の備え(賃貸借契約の名義の見直しを含む)を、必ずお元気なうちにご検討ください。
住まいを守る②持ち家の場合――配偶者居住権は使えない
亡くなった方が所有していた自宅にお住まいの場合、状況はさらに厳しくなります。その建物と土地は相続財産として相続人に承継され、内縁の配偶者には何の権利も生じないのが原則だからです。
ここで思い浮かぶのが、2020年4月に始まった配偶者居住権や配偶者短期居住権の制度でしょう。残された配偶者が自宅に住み続けられるようにする、まさにこの場面のための制度に見えます。しかし、これらはいずれも法律上の配偶者を対象とする制度であり、内縁の配偶者は対象になりません。配偶者短期居住権についても同様です。
持ち家の場合こそ、遺言が決定的な意味を持ちます
賃貸であれば借地借家法36条や判例法理という受け皿がありますが、持ち家の場合、そうした一般的な受け皿はありません。相続人から明渡しを求められれば、法的に対抗する手段はきわめて限られます。逆に言えば、「自宅をパートナーに遺贈する」という一通の遺言があるかどうかで、その後の人生が変わります。持ち家で内縁関係にある方にとって、遺言は「あったほうがよいもの」ではなく、「なければ住まいを失うもの」だとお考えください。
相続人がいないときの受け皿――特別縁故者への財産分与(民法958条の2)
亡くなった方に相続人が一人もいない場合、財産は最終的に国庫に帰属することになります。しかし、その前に置かれているのが特別縁故者に対する相続財産の分与という制度です。内縁の配偶者は、この特別縁故者に該当し得る典型例とされています。
民法958条の2第1項は、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部または一部を与えることができる、と定めています。
手続きの流れと「3か月」の期限
- 相続財産清算人の選任を申し立てる まず、利害関係人などが家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てます。内縁の配偶者は利害関係人にあたり得ます。申立てにあたっては、家庭裁判所の判断により相当額の予納金を求められることがあります。
- 公告により、相続人を捜索する 家庭裁判所が、相続財産清算人を選任した旨および相続人があるならば一定の期間内に権利を主張すべき旨を公告します(民法952条2項。この期間は6か月を下ることができないとされています)。あわせて、清算人による相続債権者・受遺者への公告(民法957条1項)も進みます。
- 期間内に相続人が現れなければ、相続人不存在が確定する 公告期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは、相続人の不存在が確定します。
- 特別縁故者として財産分与を申し立てる 民法958条の2第2項は、この請求は民法952条2項の期間の満了後3か月以内にしなければならないと定めています。この3か月は動かしがたい期限です。
- 家庭裁判所が、分与するかどうか・いくら分与するかを判断する 分与が認められるか、認められるとしていくらかは、家庭裁判所が事案ごとに判断します。申し立てれば必ず全額が認められるという制度ではありません。
→ 民法952条2項の期間満了後3か月以内
手続きの全体像については相続人がいないときの記事で詳しく解説しております。なお、税務上は、特別縁故者が分与を受けた財産は、相続税法4条により、その与えられた時における時価に相当する金額を被相続人から遺贈により取得したものとみなされると整理されています。相続税の申告が必要になる場合がありますので、税理士にご確認ください。
この制度は「相続人がいない場合」限定です
特別縁故者への財産分与は、相続人が一人もいないことが大前提の制度です。亡くなった方に子・親・きょうだい(またはその代襲相続人)が一人でもいれば、この制度は使えません。「特別縁故者という道があるから大丈夫」と考えるのは危険です。ごきょうだいや甥姪がいらっしゃる方は、この受け皿はないものとお考えのうえ、遺言による備えをご検討ください。
生前にできる4つの備え――遺言・生命保険・生前贈与・契約
ここからが本題です。内縁・事実婚のご関係では、お元気なうちの備えが、そのまま結果になります。実務でご案内している主な手立てを整理いたします。
① 遺言――もっとも確実で、もっとも重要
内縁の配偶者に財産を遺す方法として、第一に検討すべきは遺言による遺贈です。相続人でない方に財産を渡す唯一の直接的な手段といってよいものです。とくに自宅を遺す場合は、遺言の有無が住まいの帰趨を決めます。
形式としては、公証人が関与する公正証書遺言を強くおすすめいたします。内縁関係というご事情がある場合、遺言の有効性そのものを相続人から争われる可能性が相対的に高いためです。また、遺言の内容を確実に実現するために、遺言執行者を指定しておくことも重要です。
他の相続人の遺留分に注意してください
「全財産を内縁のパートナーに遺贈する」という遺言も作れますが、お子さまや親などの遺留分権利者がいる場合、その方々から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。民法1046条により、遺留分を侵害された方は金銭の支払いを請求できるとされています。この請求権には、民法1048条により、相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年(相続開始の時から10年)という期間制限があります。遺贈を受けたパートナーが、いきなり多額の金銭請求を受けて困る――ということが起きないよう、遺留分に配慮した内容にするか、金銭を用意しておく手当てをあわせて設計してください。詳しくは遺留分の記事をご覧ください。
② 生命保険――受取人に指定できるかを保険会社に確認する
生命保険金は、受取人として指定された方が受取人固有の権利として取得すると解されており、原則として遺産分割の対象にならず、遺留分の計算上も原則として相続財産には含まれないと整理されています。このため、内縁のパートナーに確実に現金を渡す手段として有力です。
ただし、保険会社によっては、内縁の配偶者を受取人に指定できない場合や、同居期間・生計同一などの条件を満たす確認資料を求められる場合があります。加入をご検討の際は、必ず保険会社に事前にご確認ください。なお、税務上の扱いは後述のとおり、法律婚の配偶者とは大きく異なります。
③ 生前贈与――時間をかけて移す
暦年課税による贈与では、受贈者1人あたり年間110万円までの基礎控除があります。長い時間をかけて少しずつ財産を移していく方法は、内縁関係でも使えます。
④ 契約で備える――家族信託・任意後見・死後事務委任
財産を渡すこと以外にも、備えるべきことがあります。判断能力が低下したときに財産管理や身上保護を託す任意後見契約、その前段階を支える財産管理委任契約・見守り契約、そして亡くなった後の葬儀・納骨・行政手続きを託す死後事務委任契約です。
内縁関係では、病院で治療方針の説明を受けられない、危篤の連絡がもらえない、葬儀の喪主になれない、遺骨を引き取れないといった問題が、財産の問題と同じかそれ以上に深刻な形で現れます。これらは遺言ではカバーしきれない領域であり、契約で手当てしておく必要があります。家族信託を組み合わせることで、居住用不動産の管理と承継を設計できる場合もあります。
相続税はどうなるか――2割加算と、使えない特例
遺言や生命保険によって内縁のパートナーが財産を受け取った場合、相続税の世界ではどう扱われるのでしょうか。ここも、法律婚とは大きく異なります。
| 制度 | 内縁の配偶者の場合 |
|---|---|
| 基礎控除 3,000万円+600万円×法定相続人の数 | 内縁の配偶者は法定相続人の数に含まれません。人数が増えることによる控除額の上乗せはありません。 |
| 生命保険金の非課税枠 500万円×法定相続人の数 | この非課税枠は相続人が取得した保険金について適用される制度です。相続人でない内縁の配偶者が受け取る保険金には適用がないと整理されます。 |
| 配偶者の税額軽減 (1億6,000万円または法定相続分) | 使えません。法律上の配偶者を対象とする制度です。 |
| 小規模宅地等の特例 | 「配偶者」や一定の親族を対象とする制度であり、内縁の配偶者は原則として適用対象にならないと整理されます。個別の判断は必ず税理士にご確認ください。 |
| 相続税額の2割加算 (相続税法18条) | 加算の対象外とされるのは配偶者および一親等の血族などです。内縁の配偶者は法律上の配偶者ではないため、原則として2割加算の対象になります。 |
→ 特例は使えず、税額は2割加算
つまり、財産を遺すこと自体は遺言で実現できても、税負担は法律婚に比べて明確に重くなるということです。とくに自宅などの不動産を遺贈する場合、受け取った側に現金がなければ納税資金に窮するという事態が起こり得ます。遺贈と生命保険を組み合わせ、納税資金まで含めて設計することが実務上きわめて重要になります。2割加算の詳細は相続税の2割加算の記事をご覧ください。
「25年一緒に暮らした家を、出ていけと言われました」
70代の女性から、こんなご相談をいただきました。「20代で離婚してから、彼と25年間、夫婦同然に暮らしてきました。婚姻届を出さなかったのは、彼の前の奥さまとのお子さんへの遠慮からです。3年前から彼は寝たきりになり、介護はすべて私がしました。先月亡くなり、四十九日も済まないうちに、その息子さんから『この家は父の名義なので、出ていってほしい』という手紙が届きました」。
私たちがお伝えしなければならなかったのは、厳しい内容でした。この家は亡くなった方の名義であり、内縁の配偶者である相談者に相続権はなく、配偶者居住権も使えないこと。相続人であるお子さまがいる以上、特別縁故者の制度も使えないこと。遺言があれば、まったく違う結果になっていたこと――。相談者は「25年も一緒にいたのに、法律では他人なんですね」と、静かに言われました。
それでも、できることは探しました。長年の介護の実態や生活の実情を整理して、お子さま側と話し合いの席を設けること。明渡しの時期について猶予を求めること。あわせて、ご自身の遺族年金の受給可能性を年金事務所で確認していただくこともご案内しました。最終的には、一定の解決金を受け取ったうえで転居されるという形になりました。この結果を「よかった」と申し上げるつもりはありません。ただ、同じ立場の方に一つだけお伝えしたいのは、この事案で必要だったのは、たった一通の公正証書遺言だったということです。
「法律が守ってくれない関係だからこそ、書面で守る」
内縁・事実婚のご相談は、私たちがお受けする中で、もっとも「間に合わなかった」と感じることの多い分野です。ご相談にみえるのは、多くの場合、パートナーを亡くされた後です。そして、その時点でできることは、驚くほど少ない。25年、30年という歳月の重みと、法律上の立場の軽さとの落差を前に、私たち自身が言葉に詰まることもあります。
誤解のないように申し上げますが、これは制度が冷たいという話ではありません。民法は、届出という明確な基準によって配偶者の範囲を定め、そのかわりに手厚い保護を与えるという設計を採っています。基準が明確であることには、それ自体の合理性があります。ただ、その設計の外側で人生を共にしてこられた方々に、その事実が事前に十分に伝わっていない――問題があるとすれば、そこだと考えています。「夫婦同然に暮らしていれば、何かしら権利があるはずだ」と思っておられる方は、本当に多いのです。
ですから、私たちは繰り返しお伝えしています。法律が自動では守ってくれない関係だからこそ、書面で守ってくださいと。公正証書遺言を一通。受取人を指定した生命保険を一本。そして、いざというときのための死後事務委任契約を一通。この三つを備えておくことで、残された方の負担は大きく変わり得ます。費用はご事情や財産の内容によって異なりますので、まずは概算をお示しするところからご相談ください。お二人がお元気で、話し合える今このときが、いちばん動きやすいときです。当センターでは、弁護士・司法書士・税理士と連携し、ご事情に立ち入りすぎない形で設計のお手伝いをしております。どうか、お早めにご相談ください。
内縁・事実婚の相続でよくある7つの落とし穴
当センターへのご相談の中で見えてきた、内縁・事実婚の相続でよくある誤解と落とし穴を7つに整理いたしました。
- 「長く一緒に暮らしていれば相続人になれる」と思い込む 民法890条の「配偶者」は、民法739条により届出をした配偶者を指すと解されています。同居期間の長さや貢献の大きさによって相続権が生じることはありません。遺留分もありません。
- 遺言を「まだ早い」と先延ばしにする 内縁関係では、遺言の有無が結果を大きく左右します。借家の承継や特別縁故者といった受け皿はありますが、いずれも適用の条件が限られます。とくに持ち家にお住まいの場合、遺言がなければ住まいを失うおそれがあります。作成には判断能力が必要ですので、お元気なうちにしか作れません。
- 「特別縁故者の制度があるから大丈夫」と考える 民法958条の2は、相続人が一人もいない場合の制度です。お子さまやごきょうだい、甥姪がいれば使えません。また、相続財産清算人の選任申立てが前提で、公告期間満了後3か月以内という期限もあります。
- 借家について、相続人がいる場合も借地借家法36条が使えると考える 36条は「相続人なしに死亡した場合」の規定です。相続人がいる場合は、判例上の賃借権の援用(最判昭和42年2月21日)によることになり、その保護は36条ほど確実なものではありません。
- 配偶者居住権や配偶者の税額軽減が使えると誤解する 配偶者居住権・配偶者短期居住権、配偶者の税額軽減、贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)は、いずれも法律上の配偶者を対象とする制度です。内縁の配偶者には適用されません。
- 相続税の2割加算と納税資金を計算に入れずに遺贈する 内縁の配偶者は原則として相続税額の2割加算(相続税法18条)の対象です。不動産だけを遺贈すると、受け取った側が納税資金に困ることがあります。生命保険などとの組み合わせで設計してください。
- 財産のことだけ考えて、医療・葬儀・遺骨の問題を忘れる 内縁関係では、病状説明を受けられない、喪主になれない、遺骨を引き取れないといった問題が現実に起こります。任意後見契約や死後事務委任契約を、遺言とセットでご検討ください。
この記事のまとめ
- 民法890条の「配偶者」は、民法739条により届出をした配偶者を指すと解され、内縁の配偶者は法定相続人にならない。
- 内縁の配偶者には法定相続分も遺留分もなく、遺産分割協議に参加する立場もない。
- 居住用建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合、事実上夫婦同様の同居者は賃借人の権利義務を承継する(借地借家法36条1項)。承継を望まない場合は、知った後1か月以内に反対の意思表示ができる。
- 相続人がいる場合は36条の適用がなく、判例上、相続人が承継した賃借権を援用して居住する権利を主張し得るとされている(最判昭和42年2月21日)。
- 配偶者居住権・配偶者短期居住権は法律上の配偶者を対象とする制度であり、内縁の配偶者は対象外である。
- 相続人が一人もいない場合、特別縁故者への財産分与(民法958条の2)が受け皿となり得る。申立ては民法952条2項の期間満了後3か月以内。
- 特別縁故者が分与を受けた財産は、相続税法4条により遺贈により取得したものとみなされる。
- 内縁の配偶者は基礎控除の「法定相続人の数」に含まれず、生命保険金の非課税枠も適用されず、配偶者の税額軽減も使えない。
- 内縁の配偶者は、原則として相続税額の2割加算(相続税法18条)の対象になる。
- 遺族年金は、厚生年金保険法3条2項および国民年金法の定義により、事実上婚姻関係と同様の事情にある者も対象となり得る。
- 備えの中心は、公正証書遺言・受取人を指定した生命保険・死後事務委任契約の3点。お元気なうちにしか作れない。
参考文献(一次情報)
- e-Gov法令検索 民法(第739条・第890条・第952条・第958条の2・第1046条・第1048条) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- e-Gov法令検索 借地借家法(第36条) https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090
- e-Gov法令検索 相続税法(第4条・第12条・第15条・第18条・第19条の2) https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073
- e-Gov法令検索 厚生年金保険法(第3条第2項・第59条) https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115
- 法務省「民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html
- 裁判所「特別縁故者に対する相続財産分与の申立て」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_16/index.html
- 裁判所「裁判例検索」(最高裁判所判決 昭和42年2月21日 民集21巻1号155頁ほか) https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search1
- 日本年金機構「遺族年金(受給要件・対象者・年金額)」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/index.html
- 国税庁タックスアンサー No.4157「相続税額の2割加算」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4157.htm
「婚姻届は出していません」――そのままにせず、今ご相談ください
遺言による備え、住まいの守り方、生命保険と納税資金、死後事務委任契約。
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