住宅ローンが残ったまま亡くなったら、家と借金はどうなるのか

まず、原則を確認いたします。相続では、プラスの財産だけでなくマイナスの財産(債務)も相続人に引き継がれるのが基本です。住宅ローンも借入金ですから、本来であれば相続人が返済を引き継ぐことになります。

しかし現実には、住宅ローンを返済中の方が亡くなったとき、ご遺族が数千万円の返済を背負うという事態は、多くの場合起こりません。理由は団体信用生命保険(団信)です。住宅ローンを組む際に、この保険への加入が実質的な条件となっている金融機関が多く、そのおかげで債務者の死亡によりローンが完済されるしくみになっているからです。

「団信に入っているかどうか」を最初に確認してください

住宅ローンの相続で最初にすべきことは、返済を続けることでも、慌てて相続放棄を検討することでもありません。そのローンに団信が付いているかどうかを、借入先の金融機関に確認することです。ここが分からないまま「借金を相続してしまう」と思い込み、相続放棄の3か月の期限に追われて自宅まで手放してしまう――そうした行き違いを、私たちは実際に見てきました。まず事実を確認してください。

家(不動産)そのものは、相続財産として残る

誤解されやすい点ですが、団信でローンが完済されても、ご自宅の不動産そのものは相続財産として残ります。つまり、遺産分割の対象になり、相続税の課税対象にもなり、名義変更(相続登記)も必要です。「ローンが消えたから何もしなくてよい」ということにはなりません。

団体信用生命保険(団信)とは――保険金を受け取るのは金融機関

団体信用生命保険とは、住宅ローンの債務者が死亡または所定の高度障害状態になったときに、保険金によってローンの残高が返済されるしくみの生命保険です。一般には「団信」と略されます。

項目団信の一般的な構造
被保険者住宅ローンの債務者(お金を借りた方)
保険金受取人金融機関(債権者)。相続人ではありません。
保険事故被保険者の死亡、または約款に定める所定の高度障害状態など
保険金の使いみち住宅ローン残高の返済に充てられ、債務が消滅します
相続人が受け取るもの現金ではなく、「返済義務がなくなる」という結果
団信の保険金は
相続人ではなく金融機関が受け取る
= 相続人は現金を得るのではなく、返済義務から解放される

この「受取人が金融機関である」という一点が、後で述べる相続税の取扱いを理解する鍵になります。生命保険を使った相続対策の記事でご説明した「500万円×法定相続人の数」という死亡保険金の非課税枠は、相続人が受け取る死亡保険金についての制度です。団信の保険金は相続人が受け取るものではありませんので、この非課税枠の話とは土俵が異なります。

[団信にはいくつかの種類があります]
死亡・高度障害のみを保障する基本的なものに加えて、がん・三大疾病・八大疾病などを保障範囲に加えた特約付きの団信や、夫婦それぞれが被保険者となるタイプの団信もあります。どの範囲まで保障されるか、保険金が支払われる条件は何かは、加入されている団信の約款によって異なります。金融機関から交付された書面をご確認いただくか、借入先に直接お問い合わせください。

亡くなった後の手続きの流れ――金融機関への連絡から完済まで

団信による完済は、放っておいて自動的に行われるものではありません。ご遺族から金融機関へ届け出ていただく必要があります。一般的な流れは次のとおりです。

  1. 借入先の金融機関に連絡する まず、住宅ローンを借りている金融機関に、債務者が亡くなったことを連絡します。返済予定表、金銭消費貸借契約書、通帳などに借入先が記載されています。この段階で「団信の加入の有無」もあわせて確認してください。
  2. 団信の請求書類を取り寄せ、提出する 金融機関または保険会社から、死亡保険金請求の書類が案内されます。一般には、死亡診断書(死体検案書)の写し、住民票の除票、戸籍謄本、団信の加入者証などが求められます。必要書類は保険会社ごとに異なりますので、案内にしたがってご準備ください。
  3. 保険会社の審査を経て、保険金が金融機関に支払われる 書類が受理されると、保険会社の審査を経て、金融機関に保険金が支払われます。審査には一定の期間がかかります。
  4. ローンが完済され、完済の証明書類が交付される 保険金がローン残高に充当され、債務が消滅します。金融機関から、抵当権抹消登記に必要な書類(登記識別情報または登記済証、抵当権解除証書、金融機関の委任状など)が交付されます。
  5. 抵当権抹消登記を申請する 交付された書類をもとに、不動産の所在地を管轄する法務局に抵当権抹消登記を申請します(後述)。
[保険金が下りるまでの間の引き落としについて]
死亡から保険金の支払いまでには期間がありますので、その間も口座からの引き落としが続くことがあります。この場合に後日精算されるのか、それとも引き落としを止める手続きを取るのかは、金融機関によって取扱いが異なります。また、被相続人名義の口座は死亡の届出により凍結されるため、引き落とし自体ができなくなる場合もあります。この点は必ず借入先にご確認ください。口座凍結については亡くなった人の預貯金の相続手続きの記事もご参照ください。

団信の保険金が支払われないことも、まれにあります

団信は生命保険ですので、加入時の告知内容に事実と異なる点があった場合(告知義務違反)や、約款に定める免責事由に該当する場合には、保険金が支払われないことがあり得ます。また、そもそも団信に加入していない(加入できなかった、任意加入で入らなかった)ケースもあります。「団信があるから大丈夫」と決めつけず、必ず金融機関に事実を確認してください。もし保険金が支払われない場合は、ローンが債務として残ることになり、相続放棄限定承認を含めた検討が必要になります。これらには原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月という期限がありますので、早い段階で専門家にご相談ください。

団信で完済されるローンは、相続税の債務控除ができない

ここが、この記事でもっとも見落とされやすい論点です。

相続税の計算では、被相続人の債務を遺産総額から差し引くことができます。これを債務控除といいます。ただし、控除できるのは、相続税法14条にいう「確実と認められるもの」に限られます。国税庁の解説でも、差し引くことができる債務は「被相続人が死亡したときに現に存在した被相続人の債務(借入金や未払金など)で確実と認められるもの」とされています。

では、団信付きの住宅ローンはどうなるのか。国税庁が公表している相続税申告の誤りやすい事例の資料では、団体信用生命保険契約に基づき返済が免除される住宅ローンは、被相続人の死亡により支払われる保険金によって補てんされることが確実であって、相続人が支払う必要のない債務であるため、相続税の課税価格の計算上、債務として差し引くことはできないと説明されています。

団信で完済されるローン
→ 相続税の債務控除はできない
= 相続人が支払う必要のない債務だから(相続税法14条の「確実な債務」に当たらない)

感覚的には「死亡した日にローン残高が3,000万円あったのだから、3,000万円引けるはずだ」と考えたくなるところです。しかし債務控除の判定は、相続開始時点に借入があったかどうかではなく、相続人が最終的に負担することになる債務かどうかで行われる、という整理です。団信で消えるローンは、相続人の懐から出ていくことのない債務ですから、控除の対象にならないという結論になります。

残高証明書をそのまま第13表に書き写してしまう誤りに注意

金融機関が発行する残高証明書には、相続開始日現在の住宅ローン残高が記載されているだけで、団信で免除されるかどうかまでは書かれていないことがあります。その数字をそのまま相続税申告書の第13表(債務及び葬式費用の明細書)に記入してしまうと、本来より相続税を少なく申告することになり、後日の税務調査で指摘を受けるおそれがあります。国税庁が「誤りやすい事例」としてわざわざ取り上げているほど、実務で起きやすい間違いです。相続税の税務調査の記事もあわせてご覧ください。

団信の保険金に相続税や所得税はかかるのか

団信の保険金は受取人が金融機関ですので、相続人が受け取る死亡保険金のように「みなし相続財産」として相続税の課税対象になるものではない、と整理されています。また、東京国税局の文書回答では、保険事故が死亡であった場合の債務免除について、相続税の課税上は相続人によって承継される債務がないものとし、被保険者である顧客およびその相続人について所得税の課税関係は生じないという趣旨が示されています。

論点団信付き住宅ローンの一般的な取扱い
ローン残高の債務控除できない(相続人が支払う必要のない債務のため)
団信の保険金への相続税受取人が金融機関であるため、相続人が受け取る死亡保険金として課税される性質のものではないと整理されます
「500万円×法定相続人」の非課税枠相続人が受け取る死亡保険金に適用される制度であり、団信の保険金はその適用場面とは異なります
債務免除益への所得税東京国税局の文書回答では、死亡による債務免除について所得税の課税関係は生じないとされています
自宅(不動産)相続財産として課税対象小規模宅地等の特例の適用可否を必ず検討します
[亡くなった年の住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)について]
被相続人が住宅ローン控除を受けていた場合、亡くなった年分の所得税の取扱いは準確定申告の中で検討することになります。適用の可否や計算方法は、居住していた期間、団信による完済の時期、その年の所得の状況などによって異なり、一律に「使える」「使えない」と言い切れるものではありません。準確定申告には原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月という期限がありますので、早めに税理士にご相談ください。

団信に入っていない住宅ローンを相続したら――こちらは債務控除の対象

すべての住宅ローンに団信が付いているわけではありません。代表例が【フラット35】です。フラット35の団体信用生命保険は任意加入とされており、健康上の理由などから加入しなかった方や、あえて別の生命保険で備えることを選んだ方もいらっしゃいます。また、金融機関以外からの借入れ(親族からの借入れなど)で住宅を取得している場合にも、当然ながら団信はありません。

この場合、住宅ローンは相続開始時点で現に存在し、かつ相続人が実際に返済することになる債務ですから、団信付きのケースとは正反対に、相続税の債務控除の対象になります

団信なしのローン
→ 相続税の債務控除の対象になる
= 相続人が現実に返済する債務だから。団信付きとは結論が逆になる

借入金は、遺産分割協議では自由に決められない

ここで、もう一つ重要な注意点があります。金銭債務のように分けることのできる債務(可分債務)は、相続開始と同時に法定相続分に応じて当然に分割され、各相続人が承継すると解されています(最高裁昭和34年6月19日判決)。

したがって、「長男が家もローンも全部引き受ける」と遺産分割協議で取り決めたとしても、その合意は相続人の間では有効でも、貸主である金融機関に当然に主張できるとは限りません。金融機関に対して債務者を一人に集約するには、金融機関の承諾を得たうえで免責的債務引受などの手続きを行う必要があるのが通常です。詳しくは借金・保証債務の相続の記事で解説しております。

[債務控除を使えるのは、その債務を負担する人です]
債務控除は、遺産総額から機械的に引くものではなく、その債務を負担することになる相続人や包括受遺者の課税価格から差し引くという構造です。また、相続税法上、債務控除には人の範囲についての定めもあります。誰の課税価格からいくら引くのかは申告書の作成に直結しますので、税理士にご確認ください。

ペアローン・連帯債務・連帯保証――「半分しか消えない」ケース

ご夫婦で住宅を購入された場合、借り方によって団信の効き方が大きく変わります。ここは実務でとくに誤解の多いところです。

借り方一方が亡くなったときの一般的な帰結
ペアローン
(夫と妻がそれぞれ契約)
2本のローンが別々に存在し、それぞれに団信が付いているのが通常です。亡くなった方のローンは完済されますが、残された方のローンはそのまま残り、返済が続きます
連帯債務型
(1本のローンを2人で負う)
取扱いは商品によって大きく異なります。主債務者のみが団信の対象となる商品もあれば、夫婦連生の団信を用意している商品もあります。どちらが被保険者になっているかを契約書で必ず確認してください。
収入合算・連帯保証型
(一方が債務者、他方が連帯保証人)
団信の被保険者は原則として債務者本人です。連帯保証人にすぎない配偶者が亡くなっても、ローンは完済されません。

ペアローンは「片方だけが消える」という前提で家計を見直す必要があります

ペアローンで一方が亡くなった場合、残されたご家族はご自身のローンの返済を、失われた収入の分だけ苦しい家計の中で続けていくことになります。さらに、亡くなった方が持っていた住宅の共有持分は相続財産となり、他に相続人がいれば遺産分割の対象になります。不動産の共有相続の問題が、そのまま住まいの問題として現れるのです。ご夫婦で住宅を購入された方は、お元気なうちに一度、借り方と団信の内容を確認しておかれることを強くおすすめいたします。

抵当権抹消登記と相続登記――ローンが消えても登記は自動では消えない

団信で住宅ローンが完済されても、登記簿に記録された抵当権は自動的に消えるわけではありません。抵当権を登記簿から消すには、抵当権抹消登記を申請する必要があります。

抵当権抹消登記の基本

項目内容
申請先その不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)
登録免許税不動産1個につき1,000円。土地1筆と建物1棟なら合計2,000円が目安です。なお、同一の申請書で20個以上の不動産の抹消を申請する場合は一律20,000円とされていますので、敷地権付きのマンションなど個数が多くなる場合はご確認ください。
主な添付書類金融機関から交付される登記識別情報(または登記済証)、抵当権解除証書等、金融機関の委任状、金融機関の資格証明書など。金融機関により書類の名称・構成が異なります。
期限法律上の申請義務や期限は定められていません。ただし放置は禁物です(下記)。

抵当権抹消を放置すると、いざというときに動けなくなります

抵当権抹消登記に期限はありませんが、登記簿に抵当権が残ったままの不動産は、売却も、新たな担保設定も、実務上きわめて困難になります。「いつかやろう」と書類をしまい込んでいるうちに、金融機関から交付された書類を紛失したり、金融機関自体が合併・商号変更を重ねたりして、手続きが格段に面倒になることがあります。書類が手元にそろっている今のうちに済ませてしまうのが、結局いちばん楽です。

あわせて、相続登記の3年を忘れずに

抵当権抹消と並んで必要になるのが、不動産の名義を相続人に変える相続登記です。こちらは2024年(令和6年)4月1日から義務化されました。法務省の案内によれば、相続によって不動産を取得した相続人は、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならず、正当な理由なくこれを怠った場合は10万円以下の過料の対象になり得るとされています。遺産分割が成立した場合には、その成立の日から3年以内の登記も必要です。

相続登記の申請義務
→ 取得を知った日から3年以内/怠れば10万円以下の過料
= 2024年4月1日施行。施行前に発生した相続についても2027年3月31日までの登記が必要とされています

登記の順序や、抵当権抹消と相続登記のどちらを先に行うかは、金融機関から交付された書類の名義や事案の状況によって変わり得ます。ご自身で申請される場合は相続登記を自分でやる全手順の記事を、義務化の全体像は相続登記の義務化の記事をご覧ください。判断に迷われる場合は、司法書士にご相談いただくのが確実です。

相談事例
※以下は、よくあるご相談をもとに再構成した架空の事例です。実在の方とは関係ありません。

「ローンが3,000万円残っています。家を売るしかないのでしょうか」

働き盛りのご主人を突然亡くされた奥さまから、震える声でご相談をいただきました。「住宅ローンがまだ3,000万円以上残っています。私のパート収入では、とても払えません。子どもたちの学校のこともあるのに、この家を売って出ていくしかないのでしょうか」。

まずお願いしたのは、返済予定表と金銭消費貸借契約書をお持ちいただくことでした。確認すると、団体信用生命保険に加入されていることがはっきりしました。その場で金融機関へのご連絡の仕方と、必要書類の集め方をご説明し、ローンは保険金で完済され、奥さまが返済を引き継ぐことにはならないことをお伝えしました。奥さまは「本当ですか」と何度も確かめられました。

そのうえで、二つのことを申し添えました。一つは、ローンが消えても自宅は相続財産として残るので、相続登記が必要であり、相続税の計算でも自宅は課税対象になること。もう一つは、その3,000万円は相続税の債務控除には使えないことです。「引けると思っていました」という奥さまのお言葉は、私たちが日々お聞きするものでした。結果として、小規模宅地等の特例の適用を検討したうえで税理士とともに申告を進め、抵当権抹消登記と相続登記も期限内に完了しました。ご自宅を手放す必要は、ありませんでした。

― 私たちから一言 ―

「まず借入先に電話をする」――それだけで救われるご家族があります

住宅ローンのご相談は、ほかの相続のご相談とは少し性質が違うと感じています。不安の大きさが、金額の大きさに比例してしまうのです。通帳の残高や返済予定表に並ぶ数千万円という数字を前に、「この家に住み続けられない」「子どもの進学をあきらめさせることになる」と、眠れない夜を過ごされる方が本当に多くいらっしゃいます。

けれども実務の現場で申し上げますと、多くのケースは、借入先の金融機関に一本お電話をいただくところから解決に向かいます。団信に加入されているかどうかは、金融機関に聞けば分かることです。そして加入されていれば、返済を引き継ぐ必要はありません。ご相談にみえた方が、その事実をお伝えした瞬間に肩の力を抜かれる――私たちが何度も立ち会ってきた場面です。どうか、一人で結論を出す前に、事実を確認してください。

そのうえで、実務家としてお伝えしなければならないことが二つあります。一つは、団信でローンが消えても、それは相続税の債務控除には使えないということ。国税庁が「誤りやすい事例」として挙げているほど、間違いの多い論点です。もう一つは、抵当権抹消登記と相続登記が残っているということ。とくに相続登記は2024年4月から義務化され、3年という期限が設けられました。安心されたあとの「やり残し」が、数年後にご家族を困らせることがあります。当センターでは、税理士・司法書士と連携し、団信の確認から申告・登記まで一続きの流れとしてお手伝いしております。まずはお気軽にお声がけください。

一般社団法人相続なんでも相談センター 代表理事 宮野 宏樹

住宅ローンの相続でよくある7つの落とし穴

当センターへのご相談の中で見えてきた、住宅ローンの相続でよくある誤解と落とし穴を7つに整理いたしました。

  1. 団信の確認をしないまま「借金を相続した」と思い込み、相続放棄を急ぐ まず借入先の金融機関に団信の加入の有無を確認してください。団信付きであれば、ローンは完済されるのが一般的です。確認しないまま相続放棄をすれば、自宅を含むプラスの財産まで失うことになりかねません。
  2. 団信で消えるローン残高を、相続税の債務控除に入れてしまう 国税庁は、団信により返済が免除される住宅ローンは相続人が支払う必要のない債務であるため、債務として差し引くことはできないとしています。残高証明書の数字をそのまま申告書の第13表に写さないでください。
  3. ローンが消えたから手続きは終わりだと考える 自宅の不動産は相続財産として残ります。遺産分割、相続税の課税、相続登記のいずれも必要です。ローンの消滅と、不動産の承継は別の話です。
  4. 抵当権抹消登記をしないまま何年も放置する 抵当権抹消に法律上の期限はありませんが、登記簿に抵当権が残っていると売却も担保設定も困難になります。金融機関から書類が交付された時点で済ませておくのが確実です。登録免許税は不動産1個につき1,000円です。
  5. ペアローンなのに「両方消える」と思っている ペアローンは2本の別々のローンです。亡くなった方の分は完済されますが、残された方のローンは残り、返済が続きます。収入合算・連帯保証型で連帯保証人が亡くなった場合も、ローンは完済されません。
  6. 団信なしのローンについて、遺産分割協議だけで返済者を決めたつもりになる 金銭債務は法定相続分に応じて当然に分割されると解されており(最高裁昭和34年6月19日判決)、相続人間の合意を金融機関に当然に主張できるとは限りません。債務者を集約するには、金融機関の承諾を得た手続きが必要になるのが通常です。
  7. 相続登記の3年と、準確定申告の4か月を見落とす 相続登記は2024年4月1日から義務化され、取得を知った日から3年以内の申請が必要とされ、正当な理由なく怠れば10万円以下の過料の対象になり得ます。亡くなった年分の所得税の準確定申告にも、原則として4か月の期限があります。

この記事のまとめ

  • 住宅ローンに団体信用生命保険が付いていれば、債務者の死亡により保険金が支払われ、ローンは完済されるのが一般的である。
  • 団信の保険金の受取人は相続人ではなく金融機関であり、相続人は現金ではなく「返済義務からの解放」を得る。
  • 国税庁は、団信により返済が免除される住宅ローンは相続人が支払う必要のない債務であり、相続税の課税価格の計算上、債務として差し引くことはできないとしている。
  • 債務控除の対象は、相続税法14条にいう「確実と認められる」債務に限られる。
  • 団信に入っていない住宅ローン(フラット35で任意加入しなかった場合など)の残債は、相続税の債務控除の対象になる。
  • 金銭債務は法定相続分に応じて当然に分割されると解されており、遺産分割協議の合意だけで金融機関に対抗できるとは限らない。
  • ペアローンでは亡くなった方のローンのみが完済され、残された方のローンは残る。連帯保証人の死亡では完済されない。
  • ローンが完済されても抵当権は自動では消えない。抵当権抹消登記の登録免許税は不動産1個につき1,000円で、申請先は不動産所在地を管轄する法務局。
  • 相続登記は2024年4月1日から義務化され、取得を知った日から3年以内の申請義務、正当な理由のない不申請には10万円以下の過料が定められている。
  • 自宅は相続財産として課税対象に残るため、小規模宅地等の特例の適用可否をあわせて検討する。

参考文献(一次情報)

※本記事は一般的な解説を目的としたものであり、個別の事情により取り扱いが異なる場合がございます。団体信用生命保険の保障範囲・免責事由・保険金支払いの可否は加入されている団信の約款によって定まるものであり、本記事が保険金の支払いを保証するものではありません。また、相続税の債務控除の可否、住宅ローン控除や準確定申告の取扱い、抵当権抹消登記と相続登記の順序や必要書類は、契約内容・相続の状況・金融機関の取扱いによって個別に判断されるものです。本記事の内容は2026年8月時点の情報に基づいていますが、実際の手続きにあたっては、必ず国税庁法務省等の一次情報で最新の内容をご確認のうえ、借入先の金融機関、および税理士・司法書士・弁護士などの専門家にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害等について、当センターは責任を負いかねます。

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