「畑」「原野」「駐車場」――宅地以外の土地は、評価の入口が違う

相続税の土地評価というと、路線価図を見て、間口や奥行で補正して――という宅地の話が思い浮かびます。けれども、財産評価基本通達は、土地を「地目ごとに評価する」という建て方をとっています。

地目評価の考え方のおおまかな方向
宅地路線価方式または倍率方式
田・畑(農地)4つに区分し、区分ごとに倍率方式・80%・宅地比準方式
山林純山林・中間山林・市街地山林に区分
原野純原野・中間原野・市街地原野に区分
牧場・池沼原野に準じた考え方
雑種地状況が類似する付近の土地の価額を基礎とし、位置・形状等の差を考慮(通達82)

地目は「登記簿」ではなく「課税時期の現況」で判定します

ここが最初の分かれ道です。財産評価基本通達7は、土地の価額は地目の別に評価するとしたうえで、その地目は課税時期の現況によって判定するとしています。

地目は課税時期の現況で判定する
(登記簿の地目ではありません)
財産評価基本通達7(土地の評価上の区分)

ですから、次のようなことが起こります。

「登記が畑だから安い」は、通用しません

相続税の申告で、登記簿の地目だけを見て評価してしまうのは、もっとも多い誤りのひとつです。現況が宅地に近ければ、評価額も宅地に近づきます。

逆もあります。登記簿は「宅地」でも、実際に畑として耕作していれば農地として評価する余地があります。まずは現地を見て、写真を撮り、いつからその状態なのかを記録してください。これが、評価の出発点です。

農地は4つに区分される――純農地・中間農地・市街地周辺農地・市街地農地

農地の評価は、「その農地がどのくらい宅地化の影響を受けているか」で4つに区分することから始まります。区分を定めているのは、財産評価基本通達36から36-4です。

区分範囲を定める通達評価方法を定める通達評価方法
純農地通達36通達37倍率方式
中間農地通達36-2通達38倍率方式
市街地周辺農地通達36-3通達39市街地農地として評価した価額の80%
市街地農地通達36-4通達40宅地比準方式または倍率方式

おおまかなイメージとしては、純農地は純粋な農業地域の農地、中間農地はその周辺、市街地周辺農地は市街化区域に近い農地、市街地農地は市街化区域内の農地や転用許可を受けた農地――という並びです。

自分の農地がどの区分かは、財産評価基準書で確認します

区分の判定は、各国税局が公表している「財産評価基準書」の評価倍率表で確認します。倍率表には、市町村ごと・地域ごとに、「純」「中」「周比準」「比準」「市比準」といった表示と倍率が記載されています。

この表示を読み間違えると、評価額が何倍も変わります。ご自身で判断が難しい場合は、必ず税理士にご確認ください。

純農地・中間農地は倍率方式(通達37・38)、市街地周辺農地は80%(通達39)

倍率方式――固定資産税評価額に倍率を乗じます

純農地(通達37)と中間農地(通達38)は、倍率方式で評価します。

固定資産税評価額 × 倍率(評価倍率表)
純農地=財産評価基本通達37、中間農地=同38

農地の固定資産税評価額は、宅地に比べてかなり低く抑えられています。そのため、純農地・中間農地の相続税評価額も、宅地とは桁が違う水準になることが多いのです。

市街地周辺農地――市街地農地として評価した価額の80%

市街地周辺農地の評価を定めるのは通達39です。

その農地が市街地農地であるとした場合の価額
× 80%
財産評価基本通達39(市街地周辺農地の評価)

なぜ80%なのかというと、市街地周辺農地は、宅地への転用が市街地農地ほど確実ではないという位置づけだからです。「宅地並みだが、まだ宅地ではない」という性格が、この20%の差に表れていると理解すると分かりやすいでしょう。

[計算の順番にご注意ください]
市街地周辺農地を評価するときは、いきなり80%を掛けるのではありません。まず市街地農地としての価額(=次章の宅地比準方式)を計算し、そのうえで80%を乗じます。宅地比準方式の中で造成費を差し引いたあとの金額に、80%を掛けるという順番です。

市街地農地は宅地比準方式――宅地としての価額から造成費を引く(通達40)

算式――「宅地だったらいくらか」から造成費を差し引きます

市街地農地の評価を定めるのは通達40です。原則は宅地比準方式で、地域によっては倍率方式による場合もあります。

(その農地が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額
− 1平方メートル当たりの造成費)
× 地積
財産評価基本通達40(市街地農地の評価)――宅地比準方式

考え方はシンプルです。「この土地を宅地として売るには、まず造成しなければならない。その費用の分だけ、宅地より安いはずだ」ということです。

造成費の金額は、国税局長が定めています

差し引く造成費は、自分で見積もった工事費ではありません。整地・土盛り・土止めなどの費用がおおむね同一と認められる地域ごとに、国税局長が金額を定めています。実際の金額は、各国税局の「財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)」に掲載されています。

確認するものどこで見るか
宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額路線価図(路線価地域)または評価倍率表・近傍の宅地の価額(倍率地域)
1平方メートル当たりの造成費財産評価基準書に掲載された、国税局長が定める金額(平坦地・傾斜地の別あり)
地積原則として登記簿の地積(実測と著しく異なる場合は実際の地積)

市街地農地は「宅地並み」の評価になります

市街化区域内の畑をお持ちの方にとって、これはとても重い話です。耕作して野菜を売っている畑でも、相続税の評価は宅地に近い金額になり得ます。収益は小さいのに評価額は大きい――納税資金が足りなくなる典型的なパターンです。

対策としては、生産緑地の指定(次章)、農地等の納税猶予の特例、延納・物納などが考えられます。いずれも要件が細かく、相続が起きてから慌てて選べるものではありません。お元気なうちに、税理士を交えてご検討ください。延納・物納は延納と物納の記事で扱っています。

不整形・がけ地・広い土地などの補正も、宅地と同じように考えます

「宅地であるとした場合の価額」を求める段階では、宅地の評価と同じ考え方の補正が関わってきます。形が悪ければ不整形地の補正、傾斜があればがけ地の補正、面積が大きければ地積規模の大きな宅地の評価が問題になり得ます。宅地比準方式は「宅地の評価の技術」を一度通ってから造成費を引く、という二段構えの作業です。

生産緑地の評価――買取りの申出ができるまでの期間で5%〜35%を控除(通達40-3)

生産緑地とは――市街化区域の農地に、30年の営農義務をかける制度です

生産緑地は、生産緑地法に基づいて、市街化区域内の農地等について都市計画で生産緑地地区を定めたものです。指定を受けると、固定資産税が農地並みに軽減される一方で、その土地で農業を続ける義務(建築等の制限)を負います。

そして、生産緑地法10条は、所有者が市町村長に対して買取りの申出をすることができる時期を定めています。

事項条文内容
通常の買取りの申出生産緑地法10条1項生産緑地地区に関する都市計画の告示の日から起算して30年を経過したとき
30年経過前の買取りの申出生産緑地法10条2項農林漁業の主たる従事者が死亡したとき、または農林漁業に従事することを不可能にさせる故障を有するに至ったとき
特定生産緑地の指定生産緑地法10条の2
(同法10条の3・10条の5)
指定を受けると、買取りの申出ができる時期が10年繰り下げられる(10条の5)。要件を満たせば10条の3により10年単位で期限を延長できる

特定生産緑地の制度は、平成29年(2017年)の生産緑地法改正で創設され、平成30年(2018年)4月1日に施行されたものです。

評価――市街地農地としての価額から、期間に応じた割合を控除します

生産緑地の評価を定めているのは、財産評価基本通達40-3です。考え方は、「まだ売れない期間が長いほど、大きく控除する」というものです。

生産緑地でないものとして評価した価額
× (1 − 控除割合)
財産評価基本通達40-3(生産緑地の評価)
課税時期から買取りの申出ができることとなる日までの期間控除割合
5年以下100分の10(10%)
5年を超え10年以下100分の15(15%)
10年を超え15年以下100分の20(20%)
15年を超え20年以下100分の25(25%)
20年を超え25年以下100分の30(30%)
25年を超え30年以下100分の35(35%)
[課税時期において買取りの申出をすることができる生産緑地]
既に買取りの申出が行われていた生産緑地、または買取りの申出をすることができる生産緑地については、控除割合は100分の5(5%)とされています。「もう売れる状態なのだから、控除は小さい」という整理です。

主たる従事者が亡くなると、控除は5%になり得ます

ここが、生産緑地の相続でもっとも誤解が生じやすいところです。生産緑地法10条2項により、農林漁業の主たる従事者が死亡した場合には、30年の経過を待たずに買取りの申出ができます。

ですから、亡くなった方がその生産緑地の「主たる従事者」であった場合、相続開始の時点で買取りの申出ができる状態になり、控除割合は5%にとどまるという結論になり得ます。「生産緑地だから35%引ける」と思い込んで試算すると、大きく外れます。

誰が「主たる従事者」に当たるか、特定生産緑地の指定を受けているか、申出基準日はいつか――これらは市町村の都市計画担当課と農業委員会で確認が必要な事項です。最新の指定状況は必ず市町村で、評価への当てはめは必ず税理士にご確認ください。

雑種地の評価――近傍地比準と、市街化調整区域内の「しんしゃく割合」(通達82)

雑種地とは――駐車場・資材置場・ゴルフ練習場など

雑種地は、田・畑・宅地・山林・原野・牧場・池沼などのいずれにも当たらない土地です。実務でよく出てくるのは、月極駐車場、資材置場、家庭菜園として使われていない空地、私道以外の空き地などです。

雑種地の評価を定めているのは、財産評価基本通達82です。

その雑種地と状況が類似する付近の土地の価額を基礎とし
位置・形状等の差を考慮して評価する
財産評価基本通達82(雑種地の評価)――いわゆる近傍地比準

つまり、「近くの似た土地はいくらか」から出発するということです。市街化区域内の駐車場であれば、近隣の宅地の価額を基礎に、必要に応じて造成費相当額を控除するという組み立てになるのが一般的です。

市街化調整区域内の雑種地――法的規制を「しんしゃく」します

難しいのは市街化調整区域内の雑種地です。市街化調整区域は、原則として建物を建てられない区域です。ですから、近くの宅地の価額をそのまま基礎にすると、実際には建てられない土地を、建てられる土地と同じように評価してしまうことになります。

そこで国税庁は、宅地比準方式をとる場合に、開発行為の可否、建築制限、位置などを考慮した「法的規制等に係るしんしゃく割合」を考慮するという考え方を、質疑応答事例で示しています。示されている割合には、50%・30%・0%といった区分があります。

[しんしゃく割合の当てはめは、個別判定が原則です]
国税庁は、しんしゃく割合を機械的に適用しなければならないとはしていません。個別に判定することを原則としつつ、示された表によることも差し支えない、という位置づけです。「市街化の影響度」と「その雑種地の利用状況」の具体的な組合せごとにどの割合を用いるかは、国税庁の質疑応答事例でご確認ください。50%・30%・0%のどれに当たるかで評価額が大きく変わるため、この判定は必ず税理士にご相談ください。

雑種地は「賃貸している」かどうかでも変わります

雑種地を他人に貸している場合は、その利用の状況に応じた減額が問題になります。たとえば、自分でアスファルト舗装をして経営している月極駐車場と、土地だけを貸して借主が構築物を設置している場合とでは、扱いが変わり得ます。

また、小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)の対象になるかどうかも、構築物の有無などによって結論が変わる論点です。小規模宅地等の特例の記事もあわせてご覧ください。

評価の前に確認すること――地目の判定・評価単位・届出と納税猶予

評価単位――「筆ごと」ではありません

相続税の土地評価は、登記簿の1筆ごとに行うものではありません。宅地については「1画地の宅地」を単位とし(財産評価基本通達7-2)、農地については原則として1枚の農地を単位としつつ、市街地周辺農地・市街地農地・生産緑地については利用の単位となっている一団の農地を単位とするなど、地目ごとに定めがあります。

評価単位を誤ると、補正の適用も変わり、評価額そのものが動きます。詳しくは宅地の評価単位「1画地の宅地」の記事をご覧ください。

農地を相続したときの届出――農業委員会への手続きがあります

農地を相続で取得したときは、農業委員会への届出が必要とされています(農地法3条の3)。売買や贈与のような農地法3条の許可は不要ですが、届出は別に求められる、という関係です。

[届出の期限・過料は、必ず最新の案内でご確認ください]
届出の期限や、届出をしなかった場合の取扱いは、農地法・同法施行規則の定めによります。具体的な期限日と過料の額については、最新の内容を農林水産省・お住まいの市町村の農業委員会でご確認ください。農地の相続手続き全般は農地・山林を相続したらの記事で扱っています。

農地等の納税猶予――使えれば大きい、けれども要件は厳しい

農業を継続する相続人が農地を取得した場合には、農地等についての相続税の納税猶予の特例(租税特別措置法70条の6)を検討する余地があります。農業投資価格を超える部分に対応する相続税額の納付が猶予されるという、非常に効果の大きい制度です。

ただし、この特例は相続税の申告期限までに申告し、担保を提供すること、その後も農業を継続することなど、要件が細かく定められています。途中で耕作をやめたり譲渡したりすると、猶予された税額と利子税を納めなければならなくなることがあります。「とりあえず使っておく」という選択ができる制度ではありません。適用の可否と長期の見通しは、必ず税理士にご相談のうえご判断ください。最新の要件は国税庁でご確認ください。

評価の前に、まず「全部の土地を並べる」ことから

農地や雑種地をお持ちのご家庭では、そもそも何筆あるのか、どこにあるのかが分からないことが珍しくありません。次の資料をそろえてから、評価の作業に入ってください。

①名寄帳(市町村で取得)/②固定資産税の課税明細書/③登記事項証明書と公図/④現地の写真と、いつからその状態かのメモ/⑤生産緑地の指定の有無(市町村の都市計画担当課)/⑥農業委員会での農地台帳の確認。相続財産の調べ方は相続財産の調べ方の記事で整理しています。

農地・雑種地の相続税評価でよくある7つの落とし穴

  1. 登記簿の地目だけを見て評価してしまう 地目は課税時期の現況で判定します(財産評価基本通達7)。登記が「畑」でも、砂利を敷いた駐車場として使っていれば雑種地としての評価が問題になります。現地を見ずに登記簿だけで評価するのは、もっとも危険な進め方です。
  2. 「畑だから評価はゼロに近い」と思い込む 市街化区域内の農地は、市街地農地として宅地比準方式(通達40)で評価され、宅地に近い金額になり得ます。収益は小さいのに評価額は大きい、という状態になりやすく、納税資金の不足が起きやすい財産です。
  3. 市街地周辺農地で、80%を掛ける順番を間違える 通達39は、その農地が市街地農地であるとした場合の価額の80%と定めています。先に宅地比準方式で造成費を差し引いてから、80%を乗じます。順番を入れ替えると金額が変わります。
  4. 造成費を自分で見積もった工事費で計算する 差し引く造成費は、国税局長が定め、財産評価基準書に掲載された金額です。実際の見積書の金額ではありません。平坦地と傾斜地で区分が分かれている点にもご注意ください。
  5. 生産緑地だから大きく減額されると期待する 通達40-3の控除割合は、買取りの申出ができることとなる日までの期間で決まります(10%〜35%)。そして、課税時期において買取りの申出ができる生産緑地は5%です。亡くなった方がその生産緑地の主たる従事者だった場合は、生産緑地法10条2項により買取りの申出ができる状態となり得るため、控除は5%にとどまることがあります。
  6. 市街化調整区域内の雑種地を、近隣の宅地の価額そのままで評価する 市街化調整区域は原則として建物を建てられない区域です。国税庁の質疑応答事例は、法的規制等に係るしんしゃく割合(50%・30%・0%など)を考慮する考え方を示しています。どの割合に当たるかは個別判定が原則ですので、必ず国税庁の質疑応答事例と税理士にご確認ください。
  7. 納税猶予を「とりあえず使う」つもりで選ぶ 農地等の納税猶予(租税特別措置法70条の6)は効果が大きい一方で、申告期限までの申告と担保の提供、その後の農業の継続などが求められます。途中で要件を満たさなくなると、猶予された税額と利子税を納めることになる場合があります。後継者の有無と20年、30年先の見通しまで含めて、税理士と一緒に判断してください。
ご相談事例
※以下は、実際のご相談を参考に構成した架空の事例です。特定の個人・団体とは関係ありません。

「畑が3枚あるだけなのに」――基礎控除を超えていて驚かれたNさまのご相談

Nさま(60代・男性)は、お母さまを亡くされて2か月ほど経った頃にお越しになりました。ご相談は、「母の財産は、自宅と、近所の畑が3枚だけです。預金は500万円ほど。相続税はかからないと思うのですが、念のため確認したいのです」というものでした。

私はまず、固定資産税の課税明細書を見せていただきました。畑3枚の固定資産税評価額は、合わせて200万円ほどでした。Nさまは、「これなら大丈夫でしょう」とおっしゃいます。

そこで私は、「畑の場所は、市街化区域でしょうか。調整区域でしょうか」とうかがいました。Nさまは「駅から歩いて10分ほどのところです。周りはもうほとんど家が建っています」とお答えになりました。

私は、「相続税の評価は、固定資産税の評価額とは別の物差しなのです。市街化区域の畑は『市街地農地』として、宅地であるとした場合の価額から造成費を差し引いて評価します。周りが住宅地であれば、宅地に近い金額になる可能性があります」とご説明しました。

Nさまは「宅地並み、ですか」と絶句されました。財産評価基準書の路線価を当てはめて概算すると、3枚合わせて4,000万円を超える見込みでした。ご自宅と預金を加えると、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えることが分かりました。

あわせて私は、「このうち1枚は、生産緑地の指定を受けていませんか」とうかがいました。市町村の都市計画担当課で確認していただくと、1枚が生産緑地でした。ただ、お母さまがその畑の主たる従事者でいらしたため、控除割合は大きくは見込めない見通しとなりました。私は、「この点は評価に直結しますので、税理士に主たる従事者の状況を必ずお伝えください」と申し上げました。

Nさまは、名寄帳と公図を取り寄せ、生産緑地の指定状況を市町村で確認し、農地に詳しい税理士に申告を依頼されました。納税資金は預金だけでは足りませんでしたが、市街化区域の畑1枚を売却して充てる方針で進めていらっしゃいます。申告期限の10か月前に動き出せたことが、いちばん大きかったと振り返っておられます。

― 私たちから一言 ―

「固定資産税が安い土地」は、「相続税も安い土地」ではありません

農地や雑種地のご相談をお受けしていて、いちばんお伝えしたいのは、固定資産税の評価額と相続税の評価額は、別の物差しであるということです。

市街化区域の農地は、固定資産税では宅地並み課税の調整や生産緑地の軽減で低く抑えられていることがあります。毎年の納税通知書を見ていると、「うちの畑は価値がない」と思い込んでしまうのも無理はありません。けれども、相続税は宅地に転用できる立地かどうかを見ます。周りに家が建ち並んでいる畑は、宅地に近い評価額になり得るのです。

そして、農地の難しさは「換金しにくいのに評価額が高い」という点にあります。売るには農地法の手続きが必要で、買い手を探すにも時間がかかります。評価額が高いのに現金化に時間がかかる財産は、納税資金の面でいちばん危ないのです。

もう一つ。生産緑地は「必ず大きく減額される制度」ではありません。控除割合は買取りの申出ができるまでの期間で決まり、主たる従事者が亡くなった場合には、申出ができる状態になり得ます。ご自身のご家庭でどうなるかは、誰が主たる従事者か、特定生産緑地の指定を受けているかを確認しないと分かりません。

だからこそ、お元気なうちの棚卸しをお願いしたいのです。名寄帳を取り、現況を写真に撮り、生産緑地の指定を市町村で確かめ、概算の評価額を出してみる。それだけで、備えるべき金額が見えてきます。そのうえで、納税猶予を使うのか、一部を売って納税資金にするのか、生前に整理するのか――選べる時間があるうちに、ご相談ください。

一般社団法人相続なんでも相談センター 代表理事 宮野 宏樹

この記事のまとめ

  • 相続税の土地評価は地目ごとに行い、その地目は課税時期の現況で判定します(財産評価基本通達7)。登記簿の地目ではありません。
  • 農地は純農地(通達36)・中間農地(36-2)・市街地周辺農地(36-3)・市街地農地(36-4)の4つに区分され、評価方法はそれぞれ通達37・38・39・40で定められています。
  • 純農地・中間農地は倍率方式(固定資産税評価額×倍率)です。倍率は各国税局の財産評価基準書(評価倍率表)で確認します。
  • 市街地周辺農地は、その農地が市街地農地であるとした場合の価額の80%です(通達39)。先に市街地農地としての価額を求めてから80%を乗じます。
  • 市街地農地は宅地比準方式(通達40)。(宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額 − 1平方メートル当たりの造成費)× 地積で計算します。地域によっては倍率方式による場合もあります。
  • 差し引く造成費の金額は国税局長が定め、各国税局の財産評価基準書に掲載されています。実際の工事見積額ではありません。
  • 生産緑地の評価は通達40-3です。課税時期に買取りの申出ができない場合、申出ができることとなる日までの期間に応じて10%(5年以下)から35%(25年超30年以下)を控除します。
  • 課税時期において買取りの申出をすることができる生産緑地は、控除割合が5%です。生産緑地法10条2項により、農林漁業の主たる従事者の死亡・故障の場合は30年の経過前でも申出ができるため、被相続人が主たる従事者だった場合は控除が5%にとどまり得ます。
  • 買取りの申出は、原則として生産緑地地区に関する都市計画の告示の日から30年経過後です(生産緑地法10条)。特定生産緑地の指定(同法10条の2。平成29年改正・平成30年4月1日施行)を受けると、買取りの申出ができる時期が10年繰り下げられ(同法10条の5)、要件を満たせば10条の3により10年単位で期限を延長できます。
  • 雑種地は通達82により、状況が類似する付近の土地の価額を基礎とし、位置・形状等の差を考慮して評価します(近傍地比準)。
  • 市街化調整区域内の雑種地については、国税庁が法的規制等に係るしんしゃく割合(50%・30%・0%など)を考慮する考え方を質疑応答事例で示しています。機械的な適用ではなく個別判定が原則です。
  • 評価単位は筆ごとではありません。宅地は「1画地の宅地」(通達7-2)、農地は原則として1枚を単位としつつ、市街地周辺農地・市街地農地・生産緑地は利用の単位となっている一団の農地を単位とするなど、地目ごとに定めがあります。
  • 農地を相続したときは農業委員会への届出(農地法3条の3)が必要です。期限や過料の取扱いは、最新の内容を農林水産省・市町村の農業委員会でご確認ください。
  • 農地等についての相続税の納税猶予(租税特別措置法70条の6)は効果が大きい一方、申告期限までの申告・担保の提供・農業の継続などの要件があり、要件を満たさなくなると猶予税額と利子税の納付が必要になる場合があります。
  • 最新の通達・数値は、国税庁(財産評価基本通達・質疑応答事例・財産評価基準書)、e-Gov法令検索、お住まいの市町村でご確認のうえ、評価の当てはめは必ず税理士にご相談ください。

参考文献(一次情報)

※本記事は一般的な解説を目的としたものであり、個別の事情により取り扱いが異なる場合がございます。本記事は税務上の助言を提供するものではなく、特定の評価方法・評価額が正しいことを保証するものではありません。地目の判定、評価単位の切り方、農地の4区分のいずれに当たるか、宅地であるとした場合の価額の求め方、適用すべき造成費、生産緑地の控除割合、市街化調整区域内の雑種地のしんしゃく割合、納税猶予の適用可否などは、土地の所在・現況・都市計画上の区域区分・生産緑地の指定状況・主たる従事者の状況など、個別の事実関係によって結論が変わり得る事項です。とくにしんしゃく割合の当てはめは個別判定が原則とされており、本文で示した区分をそのまま適用できるとは限りません。本文中の通達・条文の引用は、読みやすさのために要旨として示した箇所があります。正確な文言は必ず原文をご確認ください。記載した通達番号・条項・割合・年数は執筆時点で確認したものですが、通達・法令・実務の取り扱いは改正等により変更される可能性があります。本記事の内容は2026年9月時点の情報に基づいていますが、実際にご検討される際は、必ず国税庁、e-Gov法令検索、農林水産省、土地の所在する市町村などで最新の内容をご確認のうえ、相続税の評価・申告については必ず税理士に、登記については司法書士に、法的な判断については弁護士にご確認ください。本記事の情報を利用したことによる損害等について、当センターは責任を負いかねます。

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生産緑地の指定状況、納税猶予の可否、納税資金の作り方まで、ご家庭の事情にあわせて整理し、必要に応じて税理士・司法書士などの専門家におつなぎいたします。